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身体組織の中には、損傷しても修復する細胞と、一度損傷してしまうと修復しない細胞があります。修復しない細胞の代表例として「脳」が挙げられます。その他にも、半月板や椎間板といった組織はそれに含まれます。

また、前十字靱帯(ACL)もその例の一つです。細胞が損傷し、修復するには炎症反応が必要です。そして炎症反応には血液が絶対不可欠であり、これらの組織は血液供給に乏しいため、その修復能力が低いとされています。

今回は、その中でもACLについて解説します。

ACLの血液供給

十字靱帯は関節包内に存在しますが、靱帯自体は滑液鞘に覆われているため、滑膜外として捉えられます。また、十字靱帯への血管分布は不十分ですが、靱帯を覆っている滑膜への血管が脈絡叢を形成し、分布しています。そのため、成人のACLでは骨付着部よりも滑液鞘の脈管構造により十分な血液供給を受けています。

この血液供給は膝窩動脈の靱帯枝より供給され、靱帯枝はACLの大腿骨付着部付近の顆間切痕に沿って入ります。また、十字靱帯への血管は膝蓋骨後部の脂肪層からも分岐しており、滑膜や脂肪層を除去するとACLへの血液供給は消失するとされています。

つまり、十字靱帯へは十分な血液供給があるということです。

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ACLの神経支配

ACLは脛骨神経の後関節枝、伏在神経および閉鎖神経の内側関節枝、また腓骨神経の外側関節枝より神経支配を受けています。ほとんどの神経は靱帯内の血管に沿って走行し、靱帯内に貫入しますが、靱帯束の間を走行するものもあり、固有受容器の情報を送っています。

そのため、ACL損傷者のほとんどが固有受容感覚の低下が認められ、膝関節の不安定感が起こります

また、ACL内には自由神経終末の分布は少なく、張力に反応する機械的受容器であるゴルジ器官や粗大触圧覚を司る、ルフィニ小体やパチニ小体が存在します。そのため、ACLは痛みに対する感受性が相対的に低いとされています

以上のように、ACLには十分な血液供給があるため、組織自体が修復する可能性は十分にあります。しかし、完全に断裂していたらその修復は起こりませんし、部分的につながっており修復したとしても、その強度は弱くなっています。つまり、その状態で強い負荷が加わると、次は完全断裂をしてしまう可能性が高くなるということです。

そのため、ACLを損傷した場合は、その状況に応じて手術の検討を行うことが大切です。