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痛みには多面性があり、一感覚というだけでなく情動や認知面も関係します。つまり、痛みは脳のさまざまな部位で処理、構築されるものです。

今回は、痛みに関係する脳領域、とくに慢性疼痛患者における脳の特徴について解説します。

痛み関連領域

現在は、脳波や脳磁図のような神経伝達を「電気的シグナル」として捉えるものと、fMRIやSPECT、PETなど「局所脳血流量」で捉える方法があります。これらの発展によって、脳の機能局在が明らかになっています。

侵害刺激によって痛みが起こると、主として視床、島皮質、前帯状回、大脳皮質感覚野に活動が認められます。しかし、健常者と慢性疼痛者が疼痛を感じているときの脳内神経活動は異なります。また、深部痛と表在痛も脳内の活動部位が違うことが分かっています。

このように痛みに関連する脳領域は、「pain matrix」とよばれます。これらは、痛みに関連する複数の脳領域で、相互に関係する大脳皮質・大脳辺縁系領域のネットワークです。一次体性感覚野、二次体性感覚野、島皮質、前帯状回、前頭前野、視床などがこの領域に含まれます。

慢性疼痛患者の特徴

慢性疼痛患者において、とくに特徴的な脳領域が「前帯状回」です。

前帯状回は情動と認知に関与し、さらに痛み強度や注意にも関係しています。慢性疼痛患者は、この部位の痛みに対する感受性が増大されていることが示唆されています。

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慢性疼痛患者において、疼痛情報は視床を通過後、島皮質に伝わります。島皮質は前帯状回など大脳辺縁系と広範囲に連絡し、痛みに対する感受性を高めます。この島皮質も前帯状回と同様に、慢性疼痛に関係しています

以上の2領域は、とくに痛みの情動面に深く関わっています。また、運動野や補足運動野は注意と関係しており、逃避行動の制御に関わっているとされています。

そして、前頭前野の役割も痛みを考えるうえで外せません。前頭前野は報酬‐嫌悪回路の一部をなし、痛み刺激を興奮・抑制することで痛みの感じ方に影響を与えます。慢性疼痛患者では、前頭前野の活動性低下とともに扁桃体や島皮質の過活動が認められます。

この前頭前野の活動性低下は、痛みの評価や予測、自己評価などの認知機能障害に至り、意思決定や積極的な行動に障害をきたすことになります。

以上のように、慢性疼痛が起こっている場合、健常人と異なり情動や認知面に関する脳領域に異常が認められ、病的な痛みを形成します。

もちろん、このようなケースでも機械的刺激を除去することは必要です。しかしそれだけではなく、情動や認知面への介入も必須になります。同病院や近くにそのことを理解し、協力してくれる人がいるところは少ないのではないでしょうか。

そのため、理学療法士として、認知行動療法などを学んでおくことは大切になります。

臨床での、理学療法士のちょっとした一言が、患者さんの慢性痛を作るきっかけになる可能性があるので注意が必要です。