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癌患者において、痛みは充実性腫瘍の60~80%の患者にみられます。理学療法士としては、よくみられる関連痛パターンを頭に入れておく必要があります。これらの関連痛以外には、神経への圧や変位、血流供給の阻害や中空器官内の遮断などが原因となります。

癌性疼痛の原因は、骨転移によるものが多いです。骨転移による疼痛は病的骨折、その結果生じる筋スパズムにより生じ、脊椎が障害された場合には神経にも影響します。もちろん、手術、放射線療法、化学療法などにより疼痛がみられることもあります。

そこで今回は、関連痛パターン、癌性疼痛、癌治療の副作用について解説します。

関連痛パターン

関連痛パターンは、そのメカニズムと刺激部位によって痛みが出現する部位が異なります。以下に、その例を挙げます。

疼痛メカニズム 刺激部位 関連痛部位
内臓性 横隔膜刺激
肛門排尿路
肩、腰椎
鼠径部および外性器
体性 C7 T1脊椎
L1.L2脊椎
股関節
咽頭
肩甲間部
仙腸関節、股関節
膝関節
一側の耳
神経因性 神経、神経叢
神経根
中枢神経系
末梢神経分布部位
相当するデルマトーム
損傷された支配領域

癌性疼痛

軽度~中等度の表在痛は、通常、高血圧、頻脈、頻呼吸など交感神経系の反応が誘発されます。重度の痛み、内臓痛では、低血圧、徐脈、吐き気、嘔吐、頻呼吸、筋力低下など副交感神経系の症状が誘発されます。

慢性の癌性疼痛には、以下の5つの生物学的メカニズムが関係しています。

骨破壊

骨転移はプロスタグランジンの放出増強を引き起こし、骨破壊と骨吸収が増加します。さらに、自由神経終末の感作により、疼痛域値の低下も認められます。運動や歩行時に鋭い持続性の疼痛が認められ、骨膜や骨内膜の伸張や圧迫が疼痛の原因となります。

内臓閉塞

腸管、胃、尿管のような中空内臓器および管は、慢性癌痛に発展する要因になります。内臓閉塞は腫瘍の成長によるものが多いです。閉塞性疼痛の特徴は、重度の疝痛性、あるいは拡散性のうんざりするような局在性に乏しい鈍痛のどちらかを引き起こします。

静脈、動脈、リンパ管の閉塞はそれぞれ、静脈の拡大、動脈の虚血、浮腫が生じます。これらの痛みは、拡散性の鈍い灼熱痛として表現されます。

胆嚢や膵臓から出る管の閉塞は、疼痛より黄疸などの症状が出現することが多いです。

神経圧迫

末梢神経への浸潤や圧迫は、慢性癌痛を引き起こす要因になります。この要因による疼痛は、一般的に神経支配領域にみられる持続性の鋭い痛みがみられます。

また、腫瘍の圧迫、浸潤による動静脈の血流遮断は、組織への酸素、栄養供給を低下させます。この痛みは、狭心症などの胸部痛と同じような痛みとして知覚されます。

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皮膚、組織の膨張

皮膚の浸潤や膨張も、慢性癌痛を引き起こす原因となります。この疼痛は腫瘍の成長による、組織の有痛性伸張による2次的なものです。基本的に、痛みの重症度は腫瘍の大きさに一致します

組織の炎症、感染、壊死

組織の炎症、感染、壊死も慢性癌痛を引き起こす原因になります。

癌治療の副作用

癌の3大療法は手術、放射線治療、化学療法の3つです。加えて、免疫療法なども行われています。従来の癌治療は、治療の目的が特定の組織を取り除いたり、破壊させることが目的です。よって、どんな治療においても健康な組織も犠牲になります。

化学療法に使われる医薬品は、細胞障害性があり、DNAとRNAの生産能力を遮断、さらに細胞膜を溶解することにより、選択的に細胞分裂にダメージを与えます。これは、がん細胞のみでなく、分裂する全ての細胞に影響を与えます。

理学療法の臨床において、問題になりやすいのは、呼吸困難、易疲労性などが挙げられます。呼吸困難は、化学療法、放射線治療の副作用による心膜線維症、心内膜炎により起こります。その他の原因として、ディコンディショニング、貧血、末梢動脈疾患、発熱や感染による酸素需要の生理的増加などがあります。

放射線治療中は、易疲労性が生じやすく、エクササイズ中は注意が必要です

骨髄抑制は、多くの化学療法物質によくみられ、かつ重篤な副作用です。Winningham Contraindications for Aerobic Exerciseに従えば、臨床検査値が以下のようなとき、化学療法患者では有酸素運動が禁忌となります。

血小板 <50000/mm3
ヘモグロビン <10g/dl
白血球数   <3000/mm3
絶対顆粒球  <2500/mm3

最後に、癌治療の副作用を以下にまとめます。

手術 外観を損なう
機能喪失
感染
痛みの増加
変形
放射線療法 放射線病
免疫抑制(血小板数の減少、白血球数の減少、感染、疲労)
繊維症
火傷
粘膜炎
下痢
浮腫
毛髪喪失
創傷治癒遅延
CNSへの影響
悪性腫瘍
化学療法 消化管への影響
食欲不振
吐き気、嘔吐
下痢
潰瘍、出血
骨髄抑制(貧血、白血球減少、血小板減少)
皮疹
ニューロパシー
毛髪喪失
不妊
静脈瘤
生物療法 発熱、悪寒
吐き気、嘔吐
食欲不振
疲労
体液うっ滞
CNSへの影響
ホルモン療法 吐き気、嘔吐
高血圧
ステロイド誘因性糖尿病
ミオパチー(ステロイド誘因性)
体重増加
精神状態の変化
体熱感
発汗
インポテンツ、性欲減退

以上のように、癌はそれ自体もさまざまな症状を引き起こしますが、その治療によっても多くの影響を受けます。理学療法士として、その理解を深めることでリスク管理を行うことが大切です。