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理学療法の臨床において、炎症反応が起こっているとき「アイシング」を行うことが多いと思います。しかし、その反応はさまざまで、劇的に効果がある人もいれば、逆に悪化してしまう人もいます。

今回は「アイシング」に関して理論から実践までを解説します。

RICES処置

RICES処置とは「安静」「冷却」「挙上」「固定」のことを指します。この処置方法は一般化されており、適応に関しては疑わしい点はないように思えます。しかし、具体的な実践方法は確立されておらず、各々の独自の方法で行われているのが実際です。

 ・安静
外傷後の安静の重要性は、想像に難しくないと思います。痛みを我慢して運動を行うことは、炎症の沈静化を妨げ、さらに神経筋の抑制を生むことになります。しかし、過度の安静も問題になります。過度な安静は「治癒の遅延」「癒着の進行」「筋の萎縮」を招きます。適度かつ痛みのない範囲での運動が大切です。

冷却

冷却の腫脹に対する効果は、主に代謝理論で説明されます。

伝統的な理論で、血液循環理論があります。これは「組織温度の低下」「血管収縮による血管透過性の低下」により出血が少なくなり、腫脹も少なくなるという理論です。しかし現在、この理論に対しては批判的な見解が主です。それは、一般的に、血液凝固作用は5分以内に起こり、血管の損傷部は塞がれるという事実からなります。

そもそもアイシングを行うまでに、5分は経過しています。さらに実施後、深部組織まで冷え、血管収縮が起こるまで10~20分かかります。

つまり、アイシングを行う前に、体自身の反応で出血は止まっているということです。そのような理由から、腫脹に対する冷却の効果は、血液循環理論によるものではないとされています。

代謝理論は「二次的低酸素症」を防ぐことにより、腫脹を防ぐという理論です。

二次的低酸素症とは「損傷を受けた組織内の細胞で、外傷によるダメージを免れた細胞、および損傷部周囲の細胞の多くで、代謝変化が進行し、酸素が不足している状態」のことをいいます。

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冷却は、この代謝要求を低下させ、必要とする酸素量を少なくします。つまり、「細胞を一時的な冬眠状態」にし、血液循環不全がもたらす酸素欠乏の時期に、二次的低酸素症を起こさずにやり過ごすことができるということです。

二次的低酸素症を軽減させると、組織中に生じる遊離タンパク質を少なくします。よって、浮腫の主要な原因である組織の浸透圧を小さくすることができるということです。

以上のことから、冷却は腫脹の軽減、除去の効果は期待できません。「二次的低酸素症」「組織の遊離タンパクの増加」「組織浸透圧の上昇」を予防することによで、浮腫の抑制を行い、腫脹の予防には部分的に関わることができます。

一度、遊離タンパクが過剰になった場合は、間欠的な物理的圧力を加えることが効果的となります。

クライオキネティックスでは、冷却による疼痛軽減効果により、早期の自動運動が可能になります。この自動運動により、リンパドレナージュが促通され、遊離タンパクの除去に役立つという面もあります。

圧迫、挙上、固定

物理的な圧迫は、浮腫の形成も抑制します。さらに、体液の再吸収を促すため、起こってしまった腫脹の軽減にも効果を発揮します。

挙上は、毛細血管の静水圧を下げ、毛細血管の濾過率が下がることにより腫脹の発生を予防します。

固定は安静とは違います。固定の目的は、患部周囲の筋をリラックスできるように、支えを作ることです。これにより「防御性収縮→疼痛→防御性収縮」の悪循環を断ちます。

クライオキネティックス

以上のことから「ただ腫れがあるからアイシング」というのは効果がないということです。もし、冷却だけで効果を出したいのなら、二次的低酸素症が生じる前、つまり極力早くアイシングを行う必要があるということです。腫れた状態に対して、冷却刺激を加えるメリットは「疼痛を軽減させ、自動運動を促すことによるリンパドレナージュの促通」のみです。

以上のことから、もし腫脹が起こった後、アイシングを行う場合、クライオキネティックス(冷却刺激+自動運動)が必須ということになります。

ちなみに、よくいわれる「寒冷起因の血管拡張(CIVD)」はクライオキネティックスには、あまり関係ないとされています。