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大腰筋は、学生のときはそこまで重要視されませんが、体によってとても重要な役割を果たします。大腰筋の「リリース」を行うだけで、腰痛はもちろんのこと膝の痛み、頚部の痛みなど多くの部位の症状を改善させることがあります。これは大腰筋の解剖学的な特徴を理解すれば説明できることです。

そこで今回は、大腰筋の解剖について解説します。

脊柱と大腰筋の関係

脊柱と大腰筋の関係は、学校レベルで習う解剖学でも理解できます。大腰筋の起始は第12胸椎、腰椎の椎体、横突起、停止は大腿骨の小転子になります。そして、教科書的には股関節の屈曲作用のイメージが強いのですが、臨床的には腰椎の前弯の保持という役割が重要になります。

つまり、大腰筋が適切に作用することにより腰椎の前弯が維持されます。腰椎の前弯があることの意味はとても大きなものです。

脊柱にはS字状の弯曲があります。この弯曲があることにより、体にかかる衝撃を吸収します。

脊柱の弯曲と「作用反作用の法則」

重力環境下ではほとんどの現象に、ニュートンの法則が適応されます。脊柱の弯曲は、その中の第二法則「作用反作用の法則」の反作用力に関係してきます。

ニュートンの第二法則より、何かしら力を発揮したとき(作用力)、その力は発揮した部位から体にかけて跳ね返ってきます(反作用力)。例えば、歩行時は足、投球動作時は指からそのときに発揮したものと同等の力が跳ね返ります。

そして、この反作用力は体のどこかで吸収される必要があります。その吸収作用を脊柱のS字弯曲が最も担っているのです。衝撃吸収能力に関しては以下の式が成り立ちます。

衝撃吸収能力=(脊柱の弯曲数)の2乗+1

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この式は、衝撃吸収能力は脊柱の弯曲数に依存することを示します。また、人間の体は自身が壊れないように、体が吸収できる力以上の力は発揮しないようにするのです。つまり、衝撃吸収能力が小さくなればなるだけ、発揮される筋力も小さくなるということです。筋力も脊柱の弯曲数に依存するのです。

このような理由からも、大腰筋により腰椎の前弯を維持することはとても重要になります。

大腰筋と血管、神経の関係

大腰筋は血管、神経とも解剖的に深い関係にあります。血管系では外腸骨動静脈が大腰筋の前方を走ります。神経系では大腰筋と腰方形筋の間を腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経、外側大腿皮神経、大腿神経が走り、陰部大腿神経が大腰筋の中を貫きます。

つまり、大腰筋に過緊張や短縮、スパズムが生じるとこれらの構造体に影響を及ぼすのです。

このように、大腰筋は下肢に関する神経、血管と深い関係にあります。大腰筋をリリースするだけで、下肢の多くの症状が改善することも説明がつきます。

大腰筋と筋膜

大腰筋は、大腰筋膜という筋膜に包まれます。大腰筋膜は上方では横隔膜につながり、横隔膜は上方で心膜につながります。そして、心膜は頚部筋膜である気管前葉につながるため、大腰筋から頚部まで筋膜でつながっていることがわかります。

また、大腰筋膜は下方では横筋筋膜につながります。横筋筋膜は腹膜、骨盤内筋膜につながり、骨盤筋膜腱弓を介し、骨盤臓側筋膜につながります。その他にも大腰筋膜は鼠径靭帯を介して大腿筋膜につながります。

このように大腰筋は、頚部筋膜、腹膜、骨盤筋膜、大腿筋膜とつながっています。つまり、大腰筋は筋膜を介して全身と繋がっているため、大腰筋の治療は頚部、内臓、骨盤、下肢のどこに影響してもおかしくないということです

以上のように大腰筋は身体にさまざまな影響を与えます。これだけでも大腰筋の重要性を感じることができたのではないでしょうか。