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肩関節は球関節であり、同じ球関節である股関節と比較すると、関節窩が浅いため、安定性に欠けます。とくに①内転・屈曲・内旋②外転・挙上③肩甲骨下方回旋位での内転のときにその適合性が低くなります。しかし、そう簡単には脱臼しないのには理由があります。

今回は、肩関節の脱臼に関して、安定性機構と脱臼時に損傷しやすい組織について解説します。

肩関節の静的安定性機構

肩関節は先ほど述べたように、関節形態的には安定性に乏しいです。しかし、正常な肩関節運動において、上腕骨頭の動きは関節窩の中心から1㎜の範囲内に抑えられています。これは、たとえ野球選手が160キロの球を投げるときにも保たれているものです。ではどのようにしてこの安定性を確保しているのでしょうか。

肩関節にかかる負担が小さなときは、関節窩と関節唇の形状や限られた関節容量、そして滑液の表面張力のような他動的なシステムによって安定性が確保されます。通常は、関節内は密封されており、その中には1ml以内の滑液があり、-4.0㎜Hgの陰圧となっています。さらに、関節容量が小さいことと、その狭いスペースをわずかな滑液で満たしていることによって安定性が保たれています。

上腕骨頭のわずかな変位、移動は反対方向に滑液が流れることで生じます。そして、この滑液の表面を収縮させること、つまり表面張力の分子間力、凝集力、癒着力が働くことによってその安定性が保たれます。

そのため、関節内に出血などによって過度な液体が貯留すると、関節容量効果と分子間力が消失し、関節の安定性が低下します。

肩関節の動的安定性機構

肩関節の動的安定性には、主に回旋筋腱板が関与します。これらの筋は関節包や靱帯に付着しているため、筋が収縮することによって関節包と靱帯の緊張を調整し、その安定性を高めます。また逆に、関節包や靱帯に伸張ストレスが加わった場合も、その刺激によって回旋筋腱板が収縮し、その安定性を確保します。

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具体的には、肩関節の外転運動が行われたとき、棘上筋と上腕二頭筋長頭腱が働くことによって上腕骨頭の上方変位が抑制されます。肩関節屈曲時は大胸筋、三角筋前部線維が骨頭を後方に押しますが、同時に肩甲下筋、棘下筋、小円筋が働くことで、その安定性を確保しています。

さらに関節窩は前外上方を向くことによって、関節の安定性に寄与しています。そのため、そのアライメントを維持する前鋸筋、僧帽筋上部繊維の正常な働きも安定性の確保に関与しています。

脱臼した場合に損傷される組織

肩関節脱臼は、その解剖学的特徴から前下方に脱臼することがほとんどです。前下方脱臼によって合併するものとして代表的なものに骨折、腱板断裂、血管損傷、神経損傷が挙げられます。

とくに。肩関節内転位で前上方への力が加わると、上腕骨頭の骨折(Hill Sachs損傷)、関節唇前方の損傷と肩峰骨折、または上方脱臼に伴う烏口突起骨折が生じる可能性があります。また、転倒などで前方脱臼をした場合は、大結節骨折を伴う場合もあります。

また脱臼に伴って、腱板断裂が生じることは想像に難しくないと思います。血管に関しては、腋窩動静脈もしくはその枝が損傷されやすく、とくに下方脱臼時に損傷しやすいです。そして神経に関しては、関節の前下内側に位置する腕神経叢や上腕骨外科頚周囲に伸びる腋窩神経が損傷されることが多いです。

以上のように、肩関節はさまざまな構造と機能によって、その安定性が保たれています。また、その構造と機能に障害が生じると、筋や神経、血管などさまざま構造体が損傷される可能性があるので注意が必要です。