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理学療法士は、患者さんに運動を指導します。人は生きている限り、エネルギーを使い内臓や四肢の筋を動かします。運動を行うときは、特にそのエネルギーの必要性が増します。

運動を指導する立場として、このエネルギーがどのように産生されているか知っていることは必須です。

そこで今回は、人のエネルギー産生について説明します。

人体のエネルギー源

人の体のエネルギー源として知られているのは、主に「ブドウ糖」だと思います。他にも脂肪酸、アミノ酸、アルコールなどがあります。これらは、利用される優先順位があり「アルコール→ブドウ糖やグリコーゲン→脂肪酸やケトン体→アミノ酸」という順番で利用されます。

この中で、人体のエネルギーシステムを生み出しているシステムは主に二つです。
① 脂肪酸‐ケトン体システム
② ブドウ糖‐グリコーゲンシステム

この二つのうち、利用効率が良いのは①脂肪酸‐ケトン体システムです。そして、実は人体の中心的エネルギー源となっているのも、脂肪酸‐ケトン体システムです。これは、人体に蓄積されている中性脂肪とグリコーゲンの量を比較すれば明らかです。脂肪酸とケトン体は中性脂肪、ブドウ糖はグリコーゲンから作られます。

例えば、体重50kgで体脂肪率20%の人の場合、体脂肪は10kgなので9万キロカロリーあります。一方、グリコーゲンは250gなので1000キロカロリーにすぎません。もしグリコーゲンを主なエネルギー源とした場合、一日の基礎代謝量さえ賄えません。さらに、激しい運動をすると1~2時間で消費してしまいます。これでは、生きていけません。

このような理由からも、脂肪酸‐ケトン体システムが人体の中心的エネルギー源になっていることは想像できるかと思います。

血糖調整のメカニズム

血糖調整に関して、一般的に誤って広がっている知識があります。それは「脳はブドウ糖しか利用できない」ということです。

人体の中で、エネルギー源として唯一ブドウ糖しか利用できないのは赤血球のみです。血糖値を最低限維持するのは、脳のためではなく、赤血球のためです。実は、脳はケトン体をエネルギー源として利用できます。

このような事実を基に、血糖調整のメカニズムを説明します。

空腹時の血糖調整

食後4~5時間が経過し絶食状態が続くと、人体は最低限の血糖値を維持するためにブドウ糖を節約し、エネルギー源を脂肪酸やケトン体へ切り替えます。最低限の血糖値を維持するのは、上記のように赤血球のためです。

赤血球は、ミトコンドリアをもっていないためブドウ糖しかエネルギー源にできません。ミトコンドリアを持つその他の細胞は、脂肪酸、ケトン体をエネルギー源にできます。脳や網膜などの細胞はブドウ糖を優先して利用していますが、脂肪酸、ケトン体もいくらでも利用できます。

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そして空腹時、血液中にブドウ糖を供給しているのは、肝臓の糖新生です。肝臓はアミノ酸、乳酸、グリセロールを基にブドウ糖を作り出し、血糖値を維持します。

この「糖新生システム」は精密にコントロールされており、最低限の血糖値の維持はこのシステムだけで十分賄えます

食事で糖質を摂取した時の血糖調整

食事で糖質を摂取すると、糖質は腸で吸収され肝臓を通過した後、体の血液循環に入ります。肝臓ではインスリンの作用により、糖をグリコーゲンとして肝臓に蓄えます。正常な人は、肝臓に達した糖の約半分が肝臓に貯蔵され、残りの半分が血液循環に入り、血糖となります。

つまり、インスリンの作用がない場合は、糖を肝臓に取り込むことができず、摂取した糖の多くが血糖に変わってしまうのです。糖尿病の人が食後に血糖値が急激に上がる原因はここにあります。

また、グルカゴンはインスリンと対称的な働きをします。グルカゴンは、肝臓のグリコーゲンの分解を抑制し、血糖値の上昇を抑える作用があります。しかし、インスリンの分泌が少ない場合、グルカゴンの分泌は多くなり血糖値を上昇させてしまうのです。

そして、血糖となった糖は全身の筋や脂肪でエネルギーを作り出します。このとき、正常な場合はインスリンの作用により、血糖を筋や脂肪細胞にスムースに取り込むことができます。

しかし、糖尿病などによりインスリンの分泌が少ない、もしくは作用が弱くなると、筋や脂肪への糖の取り込みができなくなります。そして、結果として高血糖となります。

また通常、筋や脂肪細胞で使われなかった血糖は、インスリンの作用により脂肪組織や肝臓で中性脂肪に変えられ蓄えられます。

糖尿病の人は、このような理由で高血糖状態が続いてしまうのです。

糖質が少ない食事をとったとき

基本的に血糖値を上昇させる、唯一の栄養素は糖質です。そのため、糖質が少ない食事をとった場合はほとんど血糖値の上昇もありません。つまり、「インスリン」の分泌も必要ありません。

ちなみに、血糖値が180mg/dlを超えると、確実に血管内皮を損傷するとされており、食後2時間血糖値140mg/dl以上で損傷のリスクがある考えられます。

運動時の血糖調整

運動時、筋収縮が起こると、筋肉細胞のグルット4が細胞表面に移動します。そして、グルット4により血糖を取り込み、血糖値を下げます。このグルット4の移動は、30分の有酸素運動で生じるとされています。強度の強い運動なら運動直後に移動します

また、筋トレにより筋肉量が増えると、運動による血糖取り込みの全体量が上がります。ただし、運動による血糖降下作用は、糖尿病によりインスリンの基礎分泌がある程度以上低下している場合は、期待できません。また、BMI25以上の人もこの作用が弱いとされています

以上のように、人体はさまざまなメカニズムにより、エネルギーを産生しています。運動を指導する立場として、このような基本的な知識をもっていることは必須です。