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腹部には大腰筋や内臓、腹筋群があり、腹部を治療部位として選択することが多いのではないでしょうか。しかし、意外と腹壁の層構造について適切に理解している人は少ないものです。

そこで今回は、腹壁の層構造について解説します。

皮膚、浅筋膜

一番表層には、あなたが知っての通り皮膚があります。前腹壁の正中線上の臍は、胎生期に臍帯が付着していた部位です。この臍の高さは一般的にはL4の高さにありますが、その位置は個人差に富みます。

そして、その深層には浅筋膜があり、4つの腹壁筋を覆います。この層は表層の脂肪層と繊維層に分けられ、繊維層が外腹斜筋の筋・腱膜を覆います。繊維層は下方で大腿筋膜、会陰部へと続きます。この層の栄養は、前腹壁に分布する動脈からの枝で養われ、静脈は皮静脈をなし、腋窩部あるいは鼠径部に達します。

筋層

浅筋膜の深層には左右4つの筋があります。それは外腹斜筋、内腹斜筋、腹直筋、腹横筋です。、このうち前者3つは扁平な筋で3層配列になっており、それぞれが前内側で腱膜に移行します。また、腹直筋と腹横筋の間に腹壁に分布する主要な神経・血管束が通っています

腱膜は腹直筋の周りにある腹直筋鞘を作ります。前正中線上で左右の腱膜の繊維が交差し白線を作り、再下端部の繊維は恥骨稜に付着します。外腹斜筋の腱膜は、下方で鼠径靱帯に移行します。そして、鼠径靱帯直上では前腹壁下端部にある一つのすきまとして鼠径管が作られ、精索、子宮円索が貫きます。

一方、内腹斜筋腱膜の一部は腹直筋の前、残りの繊維は腹直筋の後ろを通り、白線に達します。そして再下端部は下内側方に走行し、鼠径管の天井部となるほか、腹横筋腱膜の最下部繊維と結合腱を作り、恥骨節に付着します。

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そして、腹横筋腱膜の上方部は腹直筋の後方を通り白線に達する一方、下方部分は腹直筋の前を通り白線に至ります。

以上のようにして構成される腹直筋鞘は、前葉で腱画との結合を示しながら、腹直筋前面全体を覆います。しかし、後葉は腹直筋との強い結合を示さないばかりか、同筋の上端と下端では欠乏しています。そのため、腹直筋の上端では直接肋軟骨に付着し、下端は横筋筋膜に直接触れています。そして、腹直筋鞘は臍より少し下方でなくなり、この急に腹直筋鞘が消失する部分を弓状線といいます。

このように、それぞれの腱膜が複雑に絡みあい腹直筋鞘を構成します。

横筋筋膜と内臓のつながり

腹横筋、腹直筋の深層には横筋筋膜があります。この筋膜は横隔膜下面の筋膜や腸骨筋膜などとともに壁側腹膜の外周を覆い、一続きの筋膜シートを作ります。さらにその深層には腹膜外脂肪があり、肝円索、正中臍索と膀胱をつなぎます。また、ここは左右の臍動脈索の通路にもなります。

そして腹壁最深層を占めるのが壁側腹膜になります。前腹壁の壁側腹膜には何本かのヒダ形成がみられます。すなわち正中臍ヒダと内側臍ヒダ、肝円索です。

また、後腹壁と後腹壁筋層の間には、後腹膜器官が存在します。後腹膜器官としては上行および下行結腸、膵臓と十二指腸の大部分、腎臓、尿管、副腎、そして大動静脈が挙げられます。

前腹壁からこの壁側腹膜を開くと、大網が現れ、さらにその深層に内臓があります。

以上のように腹壁は何層にもなって構成されています。よく大腰筋の触診やリリースなどで腹壁を触ると思いますが、このような層構造を意識して触っているでしょうか。

このような層を意識して触ると、また治療効果が変わってくるのではないでしょうか。