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東洋医学では、体の防衛機能である正気と体に悪影響を与える邪気のバランスが崩れることによって、病気が発症すると考えられます。

その邪気の中でも、体の外から影響するものを外邪といいます。この外邪は自然界の気候からの影響が大きく、その影響は六淫と呼ばれ6つに分類されます。

また、病気は細菌やウイルスなど、外からの影響だけでなく、体の内からの影響によっても起こります。その体の内からの影響を、内邪といいます。それは感情であったり、食事の不摂生などの生活習慣の問題などがその原因として挙げられます。

今回は、「東洋医学の病気に対する考え方:病気の原因となる外邪・内邪」について解説します。

東洋医学の病気に対する考え方

東洋医学の病気に対する考え方を学ぶ際には、「誘因と素因」「正気と邪気」の違いについて理解しておくことが大切です。

誘因と素因

西洋医学は、1つの病気に対して1つの病因があると考えて治療することがほとんどです。例えば、感染症であれば、ある細菌の侵入が原因であり、その細菌の増殖を抑制するような薬で治療をします。一方、東洋医学では、病気の原因は一つではなく、さまざまな要因が複雑に混じり合って発症すると考えます

この要因は、細菌など体の外からの影響である誘因と、ストレスなど体の内からの影響である素因の2つに分けられます。

つまり、その人が持っている体内の問題(素因)と外部環境の問題(誘因)が相互に関係することによって病気が発症すると考えます。そのため、同じ環境で同じ誘因にさらされても、素因の違いによって病気になる人とならない人がいます。

これは西洋医学でも同じです。例えば花粉症について考えるとわかりやすいです。基本的に時期になると、その時期の花粉は空気中に舞います。これはその地域に住む人みんなに同じように影響する誘因です。しかし、花粉症を発症する人もいれば、まったく影響を受けない人もいます。これが素因の違いによるものです。

このように、東洋医学ではさまざまな要因が相互に関係し病気を発症していると考えるため、その発症には個人差があるという考え方をします。そのため、病気の治療には誘因の排除も行いますが、内的要因である素因の問題を解消することが大切になります。

その素因の問題を解消する方法の一つが、生活習慣などを見直す養生法です。

正気と邪気

東洋医学では、体が備えている病気に対抗する力を正気、逆に体の生命活動を妨げる要因を邪気といいます。

正気は生命活動の基本である、気・血・津液や五臓を中心に、多くの生体機能が働くことによって強くなります。
これは「自然治癒力」と同じだと考えています。一方、邪気は、体に害を与える食べ物やウイルス、汚染物質など、生体の負担となるものを指します。これには心理的要因など、体の中で起こることも含みます。

単純にいうと、この正気と邪気のどちらが強いかで病気を発症するかどうかが決まるということです。

どんなに邪気が強くても、正気がそれ以上に強いと病気は発症しません。しかし、どんなに邪気が弱くても、正気がそれ以上に弱いと病気を発症します。

私自身の治療概念もこれと同じように、自然治癒力と、自然治癒力を阻害する因子のバランスが崩れることによって症状が出現すると考えています。このような点では、東洋医学的な考え方が入っているといえます。

以上のように、東洋学では、病気はさまざまな要因によって引き起こされると考えます。しかし、誘因である外部環境は誰にも共通しているものである場合が多いです。その中でも病気を発症しているということは、多くの病気は素因による影響が大きいと考えられます。

つまり、根本的な治療は生活習慣の見直しをはじめとした養生法にあります。これは私が中国医学を教わった先生も言われていました。

確かに経絡やつぼを刺激することによって、素因を強めることもできます。しかし、まずはその素因の原因になっている生活習慣を見直すことが、根本原因の治療につながるということです。

外邪と病気の関係性

外邪は、西洋医学でいう細菌やウイルスといった、体外から体内に侵入して病気を発症するものです。

外邪になる要因

体の生命活動を妨げる邪気には、体の外から影響するものと中から影響するものがあります。前者を外邪といい、これらは細菌やウイルスだけでなく、実は季節の変化などの自然現象も含みます。

冒頭で述べたように、この自然界の影響によるものを六淫といい「風邪、湿邪、暑邪、燥邪、寒邪、熱邪」の6つに分類されます。

通常の自然現象では、これらは外邪になりません。しかし、あまりにもこの変化が激しく、正気よりも強いような場合は外邪になってしまいます。

つまり、正気が弱い人にとっては、通常の季節変化だけでも外邪になりえるということです。

六淫と五臓の関係

これら六淫は五行学説によると、五臓と関係しています。そのため、ある外邪はある臓に影響を与えやすいという関係性があります。

風邪は五行でいうと肝と対応し、春とも関係しています。つまり、風邪は春に影響を与えやすく、その影響は肝の及びやすいということです。同様に、湿邪は五行で脾と対応し、初夏と関係しています。そのため、湿邪は初夏に影響を与えやすく、その影響は脾に及びやすいということです。

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つまり、その時期ごとに影響を与えやすい外邪、影響を受けやすい臓器があるということです。

このことは、診断要素の一つにも使えますし、治療にも使えます。例えば、春の季節に頭痛や鼻水などの症状の訴えで、患者さんが来院したとします。この場合、「春」「鼻水、頭痛」とい
うキーワードだけで、湿邪による影響が大きいということが予測されます。

このように、外邪を五行で考えることでさまざまな臨床応用ができます。

以下に、その他の外邪の五行との関係とその外邪の特徴を載せます。

外邪 季節 特徴
風邪 突然発症し、症状が急変しやすい
湿邪 梅雨~初夏 心、脾、肺、腎 重だるい、冷たい、腫脹、疲労など
暑邪 夏~秋 脾、肺、腎 顔が赤くなる、発汗など
燥邪 乾燥、無汗、空咳など
寒邪 冷え、下痢、痛みなど

以上のように、東洋医学では外部環境と五臓には関係があるとし、診断、治療に生かされます。これは私自身も実感していることであり、すぐに臨床でも使えます。

内邪と病気の関係性

内邪とは、ストレスといったように、体の中で起こって病気を発症する原因となるものです。

感情と臓器の関係

東洋医学では、感情とそれぞれの臓が対応しているとします。これも五行学説の考え方の応用です。

その感情の中でも、生体に悪影響を及ぼす感情を七情といい、七つの感情を挙げています。それは「喜」「怒」「憂」「悲」「思」「恐」「驚」の7つの感情です。これらが五行との関係で各臓に影響を与えると考えます。通常の感情では邪気になりませんが、その感情が過度であったり、長く続いた場合は邪気となりその臓に悪影響を与えます。

例えば「怒り」の感情は「肝」に影響を与えます。過度な怒りの感情が起こったとき、肝を傷つけその失調を引き起こします。肝は気・血・津液の流れをスムーズにする作用があるため、それが阻害され不眠やめまい、頭痛などが起こります。

また、臓はそれぞれ脊柱周囲にその重要なツボがあり、臓の失調が起こるとその部位の異常として現れます

肝のツボはTh9の肋椎関節周囲にあります。つまり、怒りの感情が過度になると、Th9周囲の筋の過緊張が生じる可能性があるということです。

これは、個人的な体験ですが、以前、背部のツッパリを主訴とする患者さんがいました。他のスタッフが数か月担当しましたが、症状に変化がないとのことでした。体の状態としては、右側のTh9周囲の脊柱起立筋の過緊張が認められ、伸張刺激にてその症状は再現されました。

しかし、生活状況、身体機能を考えても、その部位の筋だけに過緊張が生じる原因は思いつきませんでした。

そこで、Th9は肝臓、そして怒りに関係あるという五行学説を患者さんに説明したところ、症状発生時期と怒りの感情が強くなった時期と一致するとのことでした。

私が行ったアプローチは、その怒りの向け方を変える方法を指導したのみです。すると、次回来院時には疼痛が消失し、筋の緊張も正常化していたのです。

もしかしたら他の要因もあったかもしれませんが、私はこのような体験から、感情と身体の関係についてさらに深く考えるようになりました。

以下、七情と臓の関係を載せます。

七情 関連する臓
憂・悲
恐・驚

生活習慣の崩れが内邪となる

内邪には、飲食の問題による飲食不節、労働や身体活動の問題による労逸過度などもあります。飲食不節は、飲食物の質や摂取の過不足が健康に影響を与えるというものです。また労逸過度は、活動や労働の過剰だけでなく、逆に休息や安静の過剰も内邪になるというものです。

労逸過度に関して、目の酷使は血を消耗し、長く横になっていると気を消耗し、長く座っていると筋肉が衰え、長くたっていると骨が衰え、長く歩くと腱や靱帯などが衰えるとされています。反対に休み過ぎは気血が滞り、精神的な機能の低下や四肢の機能低下につながるとされています。

つまり、食事にしても、労働にしてもやり過ぎ、やらな過ぎは健康に良くないということです。

以上のように、東洋医学では感情などの身体内の影響も外からの影響と同じように病気を発症する原因と考えます。むしろ、個人的には、人の病気の原因は内邪の影響がほとんどではないかと考えています。

そして、理学療法士としてこのような知識を有していると、日々の評価や治療の幅が広がるはずです。

今回述べたように、東洋医学では病気の原因を外邪と内邪に分けて考えます。こうした思考は、理学療法の臨床でも応用可能です。

ぜひ以上の内容を理解して、臨床に活用するようにしましょう。