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ハムストリングスは、理学療法士がよく関わる筋の一つです。短縮すると前屈動作が制限され、筋力が弱くなると膝の安定性が低下します。実際、ハムストリングスは患者さんの問題の多くに関係しています。

しかし、それは一般的にいわれている筋力低下でも短縮でもないことがほとんどです。

そこで今回は、ハムストリングスの機能に関して解説します。

ハムストリングスは膝関節の回旋をコントロールしている

ハムストリングスは、膝関節の屈曲の動きを誘発します。学校で習う主な作用も、膝関節の屈曲作用です。しかし、実際は、この作用より重要な「膝関節の回旋コントロール」という役割を担っています。

関節は噛み合わせ(適合性)が悪くなると壊れます。よって、適合性の維持を最優先します。膝関節は過剰な回旋動作が加わると、適合性が悪くなります。その過剰な回旋が起こったときに、制御を行うのがハムストリングスになります。

これは、筋力が強いと良いというわけではなく、適切なときに適切なタイミングに反応することが大切です。

「筋出力の抑制」、「筋スパズム」がないことが大切

ハムストリングが適切に働くための条件とは「筋出力の抑制」、「筋スパズム」がない状態と考えています。

筋出力の抑制とは、本来「100」ある力が、何かしらの問題により「70」しか出せないような状態のことです。つまり、筋肉量はあるのに充分に力が発揮できていない状態です。

筋スパズムとは、「姿勢制御の代償」として反射性に出現している筋緊張です。これは伸張痛、圧痛があります。

この2つの症状がないことが、ハムストリングスが適切に働く条件となります。

脊柱の弯曲障害、可動性低下が筋出力抑制、筋スパズムを出現させる

筋出力低下が起こる原因として、「脊柱のS字弯曲の障害」が挙げられます。脊柱の弯曲は、体にかかる衝撃吸収機能の多くを担っています。衝撃吸収能力=(脊柱の弯曲数)の2乗+1となり、この力は脊柱の弯曲数に依存していることがわかります。

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また、人の体は、体自身が吸収できる分の力しか発揮しません。それは、それ以上の力を出してしまうと、その力を吸収できないため、体が壊れてしまう可能性が高いからです。

つまり、筋出力は脊柱のS字弯曲に依存しているということです。

例えば、胸椎がFlat化した場合。脊柱の湾曲が頚椎の前弯、腰椎の前弯の2つになるため、衝撃吸収能=(2〈頚椎、腰椎の前弯〉)の2乗+1=5となります。

正常では、弯曲数は3つあるため、その力は10となります。つまり、1つ弯曲数が減るだけで脊柱の衝撃吸収能力は半減してしまうため、これに伴い筋出力も半減します

このような原因により、ハムストリングスの筋出力低下が生じます。そのため、筋出力の抑制を改善するためには、脊柱の弯曲の正常化が必須となります。

また、脊柱は進化の過程で荷重部位になりました。それに伴い、重心も高くなったことにより、高度なバランス能力の必要性が出てきました。そのため、脊柱、胸郭、骨盤帯の姿勢制御系への関わりが強くなったのです。

そして、この姿勢制御系に問題があると、体は長い筋を過緊張させてバランスを保とうとします。つまり、脊柱、胸郭、骨盤帯に問題があると、姿勢制御の代償として、二関節筋に過緊張やスパズムが生じやすいということです。

このような原因によりハムストリングスのスパズムが生じます。

以上のことをまとめます

・ハムストリングスは膝関節の関節適合性を維持する働きがある
・ハムストリングスが適切に機能している状態とは「筋出力抑制がない」「筋スパズムがない」状態のことである
・筋出力抑制、スパズムは脊柱、胸郭、骨盤帯の問題から生じる

実際の臨床でも、ハムストリングスに問題がある多くの患者さんは、脊柱や胸郭への介入にて症状が改善することが多いです。そのため、まずはハムストリングスのストレッチや筋トレをする前に、脊柱や胸郭、骨盤帯からの影響を考えると、治療結果も変わってくるはずです。