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内分泌系は、身体の治癒反応には欠かせないシステムです。内分泌系と神経系(+筋膜系)は、細胞間の情報伝達系として知られており、どれも生体の内部環境における恒常性の維持に役立っています。

身体にこのような情報伝達系が備わっていないと、外部環境の変化に対して生体機能を制御できません。

そこで今回は、内分泌系における情報伝達の中心を担うホルモンについて解説します。ここでは特に、ホルモンの種類と分泌調整メカニズム、HPA系に関する情報を述べます。

ホルモンとは

ホルモンとは「生体の特定の組織または内分泌器官で作られた化学物質であり、血中へ直接分泌され循環し、特定の標的器官に特異的な働きをする物質」ということができます。この特異的な働きとは、情報伝達のことを指します

このように細胞同士の情報は、神経系がシナプス間を神経伝達物質によって伝達し、内分泌系は血液を介しホルモンによって伝えます。

またアドレナリンのように、神経伝達物質とホルモンの両方の働きをもつ物質や、ニューロンとしての性質も持ちながら、ホルモンも分泌するというものもあります。つまり、両者の境界は明確ではないということです。さらに、ホルモンが分泌した細胞自体に作用したり(自己分泌)、血液を介さずに近くの細胞に働きかけたり(傍分泌)するような現象も知られています。

ホルモンと内分泌腺の種類

ホルモンは、化学構造の違いから「アミン型ホルモン」「ペプチド・蛋白ホルモン」「ステロイドホルモン」「エコサノイドホルモン」の4種類に分けられます。

 ・アミン型ホルモン
アミノ酸から作られるホルモンで、カテコールアミンや甲状腺ホルモン、ドーパミンやメラトニンが含まれます。

 ・ペプチド、蛋白ホルモン
アミノ酸3つのトリペプチドから分子量が数万の糖蛋白ホルモンまで、数多くのホルモンが含まれます。例としては、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンやバソプレシン、オキシトシンなどが挙げられます。

 ・ステロイドホルモン
ステロイド核をもち、コレステロールを原料として作られるホルモンです。副腎皮質ホルモンと性腺ホルモンがこの例であり、ビタミンDもこれに含まれます。

 ・エイコサノイド
炭素20個の不飽和脂肪酸から作られるホルモンです。プロスタグランジンやトロンボキサン、ロイコトリエンなど例として挙げられます。このホルモンは、主に局所ホルモンとして、自己分泌または傍分泌物質として働きます。

そして、このようなホルモンを分泌する内分泌腺としては、以下の組織が挙げられます。

・下垂体
・甲状腺
・上皮小体
・膵臓
・副腎
・卵巣、精巣
・松果体

さらにこれらの組織以外でも、消化管、胎盤、脳、心臓はホルモンを分泌するため、内分泌機能を担っていると言えます。

以上のように、一言にホルモンといっても、分泌される器官や構造違いから、その数は無数にあります。全てを覚えることは難しいかもしれませんが、とくにあなたに関係するホルモンだけでも書き出してみるとよいかと思います。

ホルモンの合成と分泌メカニズム

ここまで述べたように、ホルモンにはさまざまな種類があります。そして当然ながら、それぞれで合成と分泌のメカニズムは異なります。

以下に、代表的なホルモンの合成と分泌メカニズムについて記します。

カテコールアミン

カテコールアミンは、アミン型ホルモンの一種であり、必須アミノ酸の一つであるフェニルアラニンから合成されます。まず、フェニルアラニンは肝臓でチロシンへ変換され、ニューロンや副腎髄質細胞に取り込まれます。

その後、水酸化酵素などの働きによって「ドーパ→ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリン」という流れで合成されます。ニューロンではドーパミンやノルアドレナリンまでの合成で終了するものが多いですが、副腎髄質細胞ではアドレナリンまで反応が進みます

同じアミン型ホルモンである甲状腺ホルモンも、カテコールアミンと同様にチロシンを基質として作られます。

合成されたカテコールアミンは、ニューロンや副腎髄質細胞に刺激が加わることで分泌されます。その刺激は、細胞膜のカルシウムチャネルを開き、細胞外からカルシウムイオンを取り込みます。そして、カルシウムイオン濃度の増大が引き金となり、分泌顆粒の膜と細胞膜が融合、開口し細胞外に分泌されます。

ペプチドホルモン

ペプチドホルモンの合成は、核DNAの遺伝情報がmRNAへ転写されることから始まります。そして、mRNAが受けついだ遺伝暗号に基づき、アミノ酸を材料としてペプチドホルモンの前駆物質(プレプロホルモン)が作られます。

このプレプロホルモンは、小胞体内に入るときにプロホルモンに変わります。そして、プロホルモンはゴルジ装置に入り、顆粒膜に包まれて分泌顆粒を形成します。その後、「切断」「アセチル化」「糖鎖添加」「アミド化」などの処理を受けてペプチドになります。

分泌に関しては、カテコールアミンと同様の過程を経て行われます。

ステロイドホルモン

ステロイドホルモンは、コレステロールから炭素側鎖が切断され、さらに水素基などの化学的修飾が行われることで作られます。

立体構造上、水素基がステロイド環の上につくものをβ、下につくものをαで示します。また、分子中の炭素の数によって、「C21ステロイド」、「C19ステロイド」「C18ステロイド」の3つに分けられます。

ステロイドホルモンは、主に副腎皮質や性腺で作られます。この2つの合成経路は共通ですが、産生される種類や分泌調整機構は異なります。その理由は以下の通りです。

・ステロイド合成酵素がそれぞれの細胞内で異なる分化をしている
・受容体とステロイドの合成を調整してるホルモンが異なる

エイコサノイド

局所ホルモンとして働くエイコサノイドは、アラキドン酸やリノール酸、リノレン酸から作られます。これらの多価不飽和脂肪酸は体内で合成されないので、食べ物から摂取する必要があります。そのためこれらは「必須脂肪酸」と呼ばれます。

細胞でプロスタグランジンなどを分泌させる刺激があると、リン脂質からアラキドン酸が遊離し、これを基に一連の酵素反応が起こり、エイコサノイドが合成されます。

エイコサノイドは、炎症誘起や発熱などの作用があります。ステロイド系抗炎症薬やアスピリンなどは、上記のようなリン脂質からアラキドン酸の遊離を抑制したり、一連の酵素反応を抑えることで解熱鎮痛作用を発揮します。

以上のように、ホルモンの分泌方法はほとんど同じですが、その合成過程はそれぞれ異なります。これらの知識持っていることで、自然治癒力を促進するような食生活などを考えることができます。

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内分泌系の分泌調整メカニズム

内分泌系は、ホルモンという物質を使って体の状態を調整します。これは、自然治癒力に必須の反応であり、自然治癒力を意識する治療家にとっては絶対に知っておくべき知識です。

そして、ホルモンの調整は主にフィードバック系と神経性、日内リズムの3つによって行われます。

そこで以下に、ホルモン分泌のフィードバック系と神経性の調整機構について解説します。

フィードバック調整

ホルモンの分泌調整の基本は、「負のフィードバック」によるものです。多くの場合は、1つもしくは複数のフィードバックシステムから構成され、さらにその上位から支配を受けているような仕組みになっています。この上位からの支配には、外部環境の変化や日内リズムが含まれます。

そして、ホルモンのフィードバック系には、「単純な調整系」と「複雑な調整系」の2つがあります。

 ・単純な調整系
これは単純なシステムであり、「血液成分の濃度によって直接ホルモン分泌が調整される」というものであります。このタイプには、「パラソルモン」や「カルシトニン」などが含まれています。

例えば、パラソルモンは、骨や腎臓に作用することで血液中のカルシウム濃度を上昇させます。しかし、カルシウム濃度が高くなると、その情報が上皮小体に伝わり、パラソルモンの分泌を抑制します。

 ・複雑な調整系
この調整系は、単純な調整系に中枢神経系や下垂体前葉などの働きが加わります。このタイプには、「視床下部ホルモン」、「下垂体前葉ホルモン」「標的内分泌腺のホルモン(甲状腺ホルモン、コルチゾール、性腺ホルモン)」の3つが含まれます。

このシステムは、「血液成分の濃度により、直接ホルモンの分泌が調整されるだけでなく、そのホルモンの分泌を支配するもの(中枢神経系や下垂体)も同時に調整される」というものです。

例えば、血中のコルチゾール濃度の上昇は、下垂体前葉の働きを抑制することで副腎皮質からのコルチゾールの分泌を抑えます。それと、同時に下垂体前葉のその作用を促している視床下部にも働きかけ、下垂体前葉の刺激を弱めます。

このように、いくつものフィードバック系を組み合わせることで、より正確に細かい調整を行っているのです。

神経性調整

神経性調整は、先ほど述べたフィードバック調整の一部に関与しているものの他に、体外からの刺激によって反射性に調整されているもの、視床下部ホルモンなどその分泌自体が神経によって支配されているものの3つがあります。

例として、下垂体後葉のバソプレシンの調整には、自律神経系が影響しています。

バソプレシンの抗利尿作用によって調整される、血液量や血液の浸透圧は、末梢や中枢の受容器によって感知されます。その情報は、自律神経系を通して視床下部に伝えられ、フィードバック調整が行われます。

また、視床下部ホルモンは、下垂体やさらに下位の標的器官を調整しますが、同時にさらに上位からの支配も受けています。

つまり、下位の標的器官も間接的に中枢神経系の支配を受けるということです。

例えば、ストレスなどで中枢からの刺激が強まり、コルチゾールの分泌が上昇したとします。そうなると、下位のさまざまな標的器官にも作用がおよび、結果としてコルチゾールだけでなく、副腎皮質刺激ホルモン、糖質コルチコイドなどの分泌も亢進します。

以上のように、ホルモンの調整はさまざまなシステムによって調整されています。この仕組みが正常に働くことで自然治癒力は最大限に発揮されます。

視床下部‐下垂体ー副腎皮質(HPA)系

体にストレスが加わると、ホルモン反応として「視床下部‐下垂体ー副腎皮質系」が働きます。こうしたHPA系を理解しておくことは、体内におけるホルモン調整メカニズムを欠かせません。

そこで以下に、視床下部‐下垂体ー副腎皮質(HPA)系について記します。

視床下部‐下垂体‐副腎皮質(HPA)系とは

視床下部は脳底部の中央にあり、第三脳室の周りを囲むように存在します。ここには大脳辺縁系や脳幹など、脳の重要な部位とのつながりがあります。そして、視床下部の腹側で、「トルコ鞍」の中に下垂体があります。視床下部と下垂体は「下垂体茎」でつながっています。

この視床下部と下垂体のつながりは、自律神経系と深い関係にあります。精神的なストレスが加わると、前頭前野や海馬、扁桃体などの活動が影響を受けます。これらの部位は、視床下部と密に連絡しており、ストレスを受けたという情報を視床下部に伝えます。

すると視床下部は、そのストレス刺激に対応するために、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)を分泌し、下垂体に働きかけます。そしてその情報を得た下垂体は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を分泌し、副腎皮質を活性化させます。

副腎皮質は、ストレスに対応するためにグルチココルチコイドを放出し、カテコールアミンとともに血糖値や血圧を上昇します。つまり、交感神経系を活性化するということです。

またこのとき、緊急的に今の生存に必要ではない免疫や成長、生殖や、過剰な反応が有害となる炎症反応を抑制します。この視床下部から副腎皮質までのつながりを、視床下部‐下垂体前葉‐副腎皮質(HPA)系といいます。

他にもさまざまな部位が関わり、複雑な調整が行われていますが、とりあえずは上記のことを理解しておけばよいかと思います。

HPA系は生命確保に必須

このHPA系の反応は、急性のストレスに対する反応には必須です。もしこの反応がないと、もし森で熊と遭遇した場合などに、緊急に交感神経系が活性化しないため逃げることができません。つまり、生命の危機にさらされた際に必須のシステムということです。

しかし、この反応は慢性的に続くと、先ほど述べたように慢性的な交感神経系の活性状態になり、高血圧や高血糖状態を招きます。

慢性的な交感神経系の緊張は、理学療法士としては、とても重要なポイントです。交感神経の緊張は脊柱や胸郭の柔軟性の低下を引き起こすだけでなく、血流の低下などの自然治癒力の低下にもつながります。糖尿病や高血圧が既往にある人が、痛みに関しても治りにくい理由はここになります。

以上のように、内分泌系の中でもHPA系は、理学療法士にとって重要なシステムになります。基本的なことですが、しっかり押さえるようにしてください。

今回述べたように、内分泌機能に関わるホルモンには、さまざまな種類があり複雑なメカニズムで調整されています。全てを完全に把握しておく必要はありませんが、以上に挙げた概要だけでも理解しておくようにしましょう。