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内分泌系は、人の体に備わった「自然治癒力」を理解する上で必須の知識となります。自然治癒力のポイントは情報伝達であり、情報伝達は「神経系」「体液系」「筋膜系」の3つのシステムで行われます。その中でも、内分泌系はとくに体液系に関係します。そして、内分泌系による情報伝達はホルモンによって行われます。

そのため、理学療法士として患者さんの自然治癒力を高める上で、内分泌系について理解しておくことは大切です。

そこで今回は、「内分泌系に関わるホルモンの作用」について解説します。

下垂体前葉ホルモンの作用

下垂体前葉は、視床下部の下部にあり、「成長ホルモン」や「プロラクチン」など、さまざまなホルモンを分泌する内分泌器官です。

以下に、下垂体前葉について解説します。

下垂体前葉の特徴

下垂体とは、視床下部の腹側で、「トルコ鞍」の中にあるものです。下垂体は、発生学的に「口窩(一次口腔)」からできた「ラトケ嚢」に由来する性腺下垂体と呼ばれるものと、「第三脳室」に由来する神経性下垂体の2つに分けられます。前者は、下垂体前葉と中葉、後者は下垂体後葉と呼ばれます。

下垂体前葉は腺細胞が集まり、その間に毛細血管が発達しています。下垂体前葉の血流は下垂体門脈系によって供給されます。流れとしては「一次毛細血管叢→門静脈→二次毛細血管叢」の順番で流れます。一次毛細血管叢は、上下垂体動脈が分岐することで形成されます。ここには、各種の視床下部ホルモンを産生・放出するニューロンの軸索があり、視床下部ホルモンはここから門脈血中に放出され、その後、前葉に達します。

下垂体前葉ホルモン

下垂体の前葉からは、主に6種類のホルモンが分泌されます。それは「成長ホルモン(GH)」「プロラクチン」「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」「副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)」「卵胞刺激ホルモン(FSH)」「黄体形成ホルモン(FH)」の6つです。このうち、FSHとLHを「性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)」といいます。

 ・成長ホルモンの作用
成長ホルモンの有名な作用は、「成長作用」です。これは「ソマトメジン」の産生を促すことで、骨の成長や骨格筋、心筋、肝臓、膵臓、腎臓などを肥大、増殖させる作用があります。

また、各種代謝にも影響し、タンパク質の合成の促進、血糖値の上昇、貯蔵脂肪の分解などの作用もあります。

 ・プロラクチンの作用
プロラクチンの主な作用は、「乳腺の発達と乳汁の産生」です。これは、エストロゲンやプロゲステロンなどさまざまなホルモンと相互作用することによって起こります。

その他にも、黄体刺激作用や生殖機能抑制作用などがあり、動物の母性行動にも影響しているとされています。

 ・甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンの作用
これらはその名の通り、甲状腺と副腎皮質を刺激し、それらの働きを高めます。そのため、代謝の亢進やコルチコイドの分泌促進に関わります。

 ・卵胞刺激ホルモン
卵胞刺激ホルモンの主な作用は、卵胞の発達を促進します。これは、卵胞刺激ホルモンによってエストロゲンの産生が促されるために起こるとされています。

 ・黄体形成ホルモンの作用
黄体形成ホルモンの主な作用は、黄体ホルモンの産生促進です。これは、黄体形成ホルモンが卵巣に作用し、アンドロゲンとエストロゲンを産生させることで起こります。この卵巣におけるエストロゲンの産生は、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの相互作用によって達成されます。

成長ホルモンに影響する因子

成長ホルモンの分泌に影響する因子として、「睡眠」「エネルギー供給に関するもの」の2つに分けることができます。

 ・睡眠
成長ホルモンは睡眠時に分泌が増大します。この反応は、とくに入眠直後の徐波睡眠に伴って起こります。

 ・エネルギー供給に関係するもの
成長ホルモンは、食後数時間後の血糖値低下に伴って分泌が増大します。また、運動、絶食、低血糖、ストレス、発熱などでも分泌が促進されます。つまり、生体のエネルギー供給が不足もしくは消費が増大するときに成長ホルモンの放出が促されるということです。

以上のように、下垂体前葉からはさまざまなホルモンが放出されます。この中でも、とくに成長ホルモンは組織修復に関わるため、自然治癒力にとって欠かせないものです。そのため、理学療法士としてはもう一歩踏み込んで、成長ホルモンの調整に関わる因子まで知っておくことが大切です。

h2>下垂体中後葉ホルモン

下垂体中後葉からは、「メラニン細胞刺激ホルモン」や「オキシトシン」「バソプレシン」などのホルモンが分泌されます。

そこで以下に、下垂体中・後葉から分泌されるホルモンについて解説します。

下垂体後葉の特徴

下垂体後葉は前葉と違い、腺細胞ではなく神経膠性細胞が集まっています。下垂体後葉ホルモンは、視床下部の視索上核と室傍核に細胞体があるニューロンで作られ、軸索を通して後葉内の毛細血管に入ります。

このように「神経分泌細胞」といって、ニューロンがホルモンを産生し、血中に放出するような形をとります。

下垂体中葉ホルモン

下垂体の中葉からは、主に「メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)」と「リポトロピン(LPH)」の2つのホルモンが分泌されます。この2つはいずれも、同じ前駆物質であるプレプロオピオメラノコルチン(POMC)から作られます。POMCとは、下垂体で合成される前駆体ペプチドのことを言います。

 ・メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)
MSHは、鳥類やほ乳類では、皮膚でのメラニン細胞の合成を促進します。また、両生類や爬虫類の皮膚においては、メラニン顆粒を拡散させることで皮膚を黒くします。

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)と似たアミノ酸配列をもっており、お互い類似した作用をもっています。一般的に、ACTHの分泌亢進時には、MSHは抑制され、ACTHが抑制されているときは、MSHは分泌が亢進するような関係性があります。

 ・リポトロピン
βとγの2種類があり、脂肪分解作用とMSH様作用などがありますが、基本的にその力は弱いです。

下垂体後葉ホルモン

下垂体の後葉からは、主に「バソプレシン(ADH)」と「オキシトシン」の2つのホルモンが分泌されます。この2つは、どちらも9個のアミノ酸からなるペプチドホルモンです。下垂体の後葉内には、この2つのホルモンを放出する神経分泌細胞の軸索があり、毛細血管壁まで伸びています。これらの細胞体が視床下部の視索上核と室傍核にあります。

 ・バソプレシン(ADH)
ADHの主な作用は抗利尿作用です。ADHは腎臓に作用し、水の透過性を高めることで水の再吸収を促します。また、細胞脈の平滑筋を収縮させ、血圧を上げる作用もあります。通常では、このような作用はありませんが、脱水時や出血時などにこの働きが行われます。

 ・オキシトシン
オキシトシンの主な作用は、授乳時の乳汁射出作用と分娩時の子宮収縮作用です。授乳時は、乳児の吸乳刺激によって反射性に乳汁の分泌が起こります。これは、乳腺の筋上皮細胞に作用し、収縮させることで生じます。この反射の中枢は、視床下部の室傍核と視索上核にあります。

また、オキシトシンは子宮平滑筋を収縮させます。これは、オキシトシンが子宮筋に直接作用するものと、子宮内膜におけるプロスタグランジンの生成を促した結果生じる、間接的なものの2つがあります。

子宮頸部や腟の拡張は、オキシトシンの分泌を引き起こす刺激になります(ファーガソン反射)。分娩時には、この「子宮頸部、腟の拡張→オキシトシン分泌→子宮収縮」という反射によって胎児が送り出されます。

以上のように、下垂体中、後葉からはさまざまなホルモンが放出されます。この中でも、とくにバソプレシンは体液の維持に関わるため、自然治癒力に関係します。全てを覚える必要はありませんが、体液維持のメカニズムについてだけでもおさえておきましょう。

甲状腺ホルモンの作用

甲状腺は多くの濾胞(ろほう)から構成されます。濾胞とは、中に分泌物が溜まっている完全に閉じた袋状の構造をしたものになります。そして、その濾胞の間に血管に富んだ濾胞間結合組織があります。

そこで以下に、甲状腺と分泌されるホルモンについて解説します。

甲状腺の構造

甲状腺は多くの濾胞(ろほう)から構成されます。濾胞とは、中に分泌物が溜まっている完全に閉じた袋状の構造をしたものになります。そして、その濾胞の間に血管に富んだ濾胞間結合組織があります。

濾胞上皮細胞で産生された甲状腺ホルモンは、濾胞内に分泌、貯蔵されます。

また濾胞の外には、単独にあるいは群をなして傍濾胞細胞が存在し、「カルシトニン」を分泌することで、カルシウム代謝の調整に関与しています

甲状腺ホルモン

甲状腺ホルモンには、大きく「チロキシン」と「トリヨードチロニン」の2つがあります。この2つは主に同じような働きをしますが、トリヨードチロニンの方が受容体との結合能力が高く、生理作用も数倍強くなります。これらの主な作用は、熱産生作用になります。

 ・熱量産生作用
甲状腺ホルモンは、全身のエネルギー代謝を亢進させます。

骨格筋や心筋、肝臓、膵臓、腎臓、胃粘膜、表皮、唾液腺では酸素消費が増大します。一方で、脾臓や脳、精巣などでは変化がなく、下垂体前葉では逆に低下します。下垂体での低下は負のフィードバックによるものとされています。

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 ・代謝亢進作用
甲状腺ホルモンは、「酵素タンパクの合成と活性化」「グリコーゲン分解、血糖値上昇」「腸管のグルコース吸収促進」「脂肪の合成と分解(合成<分解)」の作用があります。これらも言ってしまえば熱量産生のために必要な反応であり、代謝を亢進させます。

また、このような代謝の亢進はビタミンの消費を促すため、甲状腺機能亢進症では、ビタミン欠乏が起こりやすくなります。

 ・交感神経系活性化作用
甲状腺ホルモンは、心臓などのβ受容体の数を増やすことで、カテコールアミンの感受性を亢進させます。その結果として、交感神経系が活性化されます。

 ・神経系
甲状腺ホルモンが低下すると、精神機能の低下や反射の遅延が見られます。また逆に、過剰になると落ち着きがなく興奮しやすく、反射の亢進が認められます。

 ・成長、発育作用
甲状腺ホルモンは、成長ホルモンの作用発現に必要になります。そのため、成長、発育にはこの2つが正常に調整されていることが必須になります。

以上のように、甲状腺ホルモンは代謝に大きく関係します。ホルモンの中でも、自然治癒力に大きく関係するものの一つですので、ぜひ基本的なことだけでも覚えるようにして下さい。

副腎皮質ホルモンの作用

副腎は、腎臓の上方に位置します。また、構造の違いから皮質と髄質の2つに分けられ、それぞれ異なった働きをします。この2つはともに内分泌器官ですが、発生学的に起源が違い、皮質は中胚葉性、髄質は外胚葉性になります。

そのため、副腎の皮質と髄質は機能的にも全く異なり、分泌されるホルモンも別です。そして、そのホルモンは自律神経に大きく影響するため、副腎の機能について知っておくことは大切です。

そこで以下に、副腎皮質から分泌されるホルモンについて述べます。

副腎皮質から分泌されるホルモン

副腎皮質からは、「コルチコイド」と総称されるステロイドホルモンが分泌されます。さらに、コルチコイドは、糖質コルチコイドと鉱質コルチコイドの2つに分けられます。しかし、これらは、相対的なものであり、どちらもお互いの作用を持っています。

 ・糖質コルチコイド
コルチゾールを代表とするホルモンで、肝臓での糖新生作用が強いためにこのような名前になっています。しかし、その他にも様々な働きがあり、とくに、抗炎症作用や抗アレルギー作用は、よく知られています。

具体的な働きとしては、糖新生を促すことで、グリコーゲンの合成と血中グルコースへの放出を増大します。筋などの末梢組織では、グルコースの利用を低下させ、血糖値を上昇させます。

タンパク質に関しては、糖質コルチコイドの生理的な量では、肝臓でのタンパク質の同化を促進し、過剰になると逆に異化を促します。また、脂肪分解や、腸管でのカルシウムの吸収抑制作用もあります。

他にも、先ほど述べたような抗炎症作用もあります。これには、①リン脂質からのアラキドン酸遊里の抑制による、炎症物質であるロイコトリエンの生成の減少②リソソーム膜の安定化③サイトカインなどの炎症性メディエーター産生酵素の遺伝子発現の抑制などが関与しています。

さらに、利尿作用や胃酸分泌促進作用なども知られています。

 ・鉱質コルチコイド
アルドステロンを代表とする鉱質コルチコイドは、腎臓や腸管、唾液腺、汗腺などの上皮細胞に作用し、ナトリウムイオンの再吸収を促進します。とくに腎臓での働きは細胞外液量維持と、ナトリウムイオンの保持に大きく関係します。

具体的には、遠位尿細管と集合管でのナトリウムイオンの再吸収を促すことで、水の再吸収も促進します。また、それに伴い、カリウムイオンは排泄されるため、アルドステロンの過剰は低カリウム血症と代謝性アルカローシスを引き起こします。

以上のように、副腎から分泌されるホルモンは、自然治癒力に深く関係しています。そのため、このような基本的な作用は理解しておく必要があります。

副腎髄質ホルモンの作用

副腎髄質ホルモンは、この内分泌系と自律神経の両方に深く関わるホルモンになります。そのため、副腎髄質ホルモンの知識を持っていることは、自然治癒力に関わる治療家としては必須になりま。

そこで以下に、副腎髄質ホルモンについて解説します。

副腎髄質ホルモンとは

副腎髄質ホルモンは、「カテコールアミン」と呼ばれるホルモンのことを指します。カテコールアミンは、主に「アドレナリン」と「ノルアドレナリン」のことを言います。これらのホルモンが、交感神経系に影響することは知っての通りです。

また、副腎髄質ホルモンの機能や、調整機構を理解するには、その発生学的起源を知ることが役立ちます。

副腎髄質は、外胚葉性であり、神経冠に由来します。これは、交感神経節と同じ起源であり、内分泌腺細胞に分化したものが副腎髄質細胞で、ニューロンに分化したものが交感神経節後ニューロンということです。

そのため、副腎髄質は、交感神経と深い関係にあります。

副腎髄質ホルモンの作用

副腎髄質は、交感神経節と起源が同じであるため、その機能も類似します。そのため、副腎髄質には、以下のような特徴があります。

・副腎髄質の自律神経支配は、節前線維による直接支配である
・二重神経を受けず、交感神経単一の支配である
・交感神経支配であるにも関わらず、伝達物質がアセチルコリンである

副腎髄質からは、主にアドレナリンとノルアドレナリンの2つが分泌されます。そして、これらの受容体には「α受容体」と「β受容体」があります。アドレナリン、ノルアドレナリンはどちらの受容体にも結合しますが、その親和性に違いがあります。

ノルアドレナリンはα受容体、アドレナリンはβ受容体と結合しやすくなっています。ともに交感神経の活動と似た働きをするホルモンですが、この違いによって、それぞれの作用は異なります。

アドレナリン ノルアドレナリン
・心筋収縮力促通
・心拍数増加
・骨格筋、肝臓の血管拡張
・気管支拡張
・血糖値上昇
・脂肪分解促進
・血管平滑筋収縮

以上のように、副腎髄質ホルモンは、発生学的起源から交感神経と深く関わっています。体の痛みを始めとする病気の大半は、交感神経が関与しています。そのため、身体の専門家にとって、このような副腎髄質ホルモンの知識を有していることは必須になります。

すい臓ホルモン(インスリン・グルカゴン)の作用

膵臓から分泌される「インスリン」は、血糖値の調整に関わることで知られています。血糖値は、組織修復に大きく影響するため、それに関わるインスリンについて知っていることは大切です。また、インスリンと拮抗関係にある「グルカゴン」の役割も重要です。

そこで以下に、インスリンとグルカゴンについて解説します。

インスリンの作用

インスリンは、膵臓の「ランゲルハンス島」から分泌されるホルモンです。その役割は重要で、一般的に知られる血糖調整以外にもさまざまな作用があります。

実際、インスリンは糖代謝だけでなく、タンパク質、脂質と全ての代謝に関わります。以下に、核組織ごとでのインスリンの作用をまとめます。

筋組織 肝組織 脂肪組織
・糖、アミノ酸、カリウムイオン取り込み促進
・グリコーゲン合成促進
タンパク質合成促進、分解抑制
・グリコーゲン合成促進
・タンパク質合成促進
・脂肪酸合成促進
・j解糖系促進、糖新生系抑制
・グルコースとり込み促進
・脂肪酸合成促進

表を見てもわかるように、インスリンの作用の本質は「生体内での同化作用の促進と異化作用の抑制」です。このような特徴から、インスリン分泌の障害は、関節拘縮や筋委縮など、理学療法士が遭遇する症状を引き起こします。

グルカゴンの作用

グルカゴンもインスリンと同じ「ランゲルハンス島」から分泌されます。違いは、分泌細胞の形態学的な違いであり、全体の20~25パーセントを占める「α細胞」からはグルカゴンが、全体の70~75パーセントを占める「β細胞」からはインスリンが放出されます。

グルカゴンの作用は、インスリンと拮抗したものになります。そのため、以下のような反応が起こります。

筋組織 肝組織 脂肪組織
・グリコーゲン分解
・糖新生促進
・脂肪分解促進

グルカゴンの作用の本質は「グリコーゲンや脂肪として貯蔵されたエネルギー源の動員」といった、インスリンとは全く反対の働きをします。また、インスリンとの大きな違いとして、グルカゴンは、筋組織では、グリコーゲン分解を行わないということが挙げられます。

また、グルカゴンは、下垂体に作用し、成長ホルモンの分泌を促進します。

以上のように、膵臓から分泌されるホルモンは、糖だけでなく、全ての代謝に関わります。代謝は、自然治癒力が発揮されるための大切な要素です。そのため、インスリンとグルカゴンの作用を理解しておくことはとても重要です。