スポンサーリンク

理学療法の臨床において、肩関節を訴える患者さんは多いです。多くは「肩関節周囲炎」として理学療法が処方されます。そして、ほとんどの患者さんは、疼痛と可動域制限の訴えがあり、筋骨格系の機能障害に由来した症状です。

しかし、稀に筋骨格系の機能障害の疼痛パターンと合わない、肩関節痛を訴える患者さんもいます。今回は、全身性疾患により引き起こされる肩関節痛について解説します。

肩関節痛を引き起こす全身性疾患

乳房、胸部や腹部臓器に影響を与える全身性疾患は、肩の痛みを引き起こす可能性があります。頚椎、腋窩、胸郭などにおける多くの筋骨格系病変も、肩関節に関連痛を引き起こします。そのため、筋骨格病変の鑑別だけでも、障害関節の上下で関連痛をもたらす構造と医学的疾患に対して評価しなければなりません。

右肩

右肩痛を引き起こす全身性疾患として、消化性潰瘍、心筋虚血、肝臓・胆嚢疾患、呼吸器疾患、腎臓疾患が挙げられます。消化性潰瘍、心筋虚血、呼吸器疾患、腎臓疾患は、横隔膜を刺激し、その神経支配より同側の肩痛として感じられます。

肝臓・胆嚢疾患は、胆管系の交感神経線維が、同レベルの脊髄に入ります。これにより、肩甲骨間、肋間に痛みが広がります。また、横隔膜と関連して、右横隔神経を刺激するため、右肩に痛みを感じます。

左肩

左肩痛を引き起こす全身性疾患として、脾臓破裂、心筋虚血、膵臓疾患、子宮外妊娠、呼吸器疾患、腎臓疾患、腹腔鏡手術後が挙げられます。

以下に、肩関節痛を引き起こす全身性疾患の特徴を示します。

心疾患 ・心臓性、横隔膜性の疼痛・細菌性心内膜炎
近位関節の関節痛
複数の関節痛(1つか2つ)
突然の発症
熱感、圧痛、発赤
朝のこわばりが強くない

・心膜炎
咳により悪化
前屈姿勢、直立座位で軽減
呼吸、嚥下、おくびにより悪化
*心筋梗塞の痛みは姿勢、呼吸、運動により変化しない

スポンサーリンク

・大動脈瘤
突然の裂けるような胸部痛から広がる
関節、上肢に痛みが広がることは稀
肩単独の痛みはない

呼吸器疾患 壁側胸膜、横隔膜性の疼痛
自己スプリング(患側側臥位)にて軽減
呼吸運動により悪化
呼吸器症状が随伴
肝臓・胆管疾患 交感神経線維と横隔膜性の疼痛
中背部、肩甲骨、右肩に限定
単独(右肩痛が唯一の症状)で起こることもある
筋組織の拘縮など生体力学的変化を引き起こす
肩関節の著しい運動制限
重度の筋力低下および抵抗運動時の痛み・原発性腫瘍
若者に好発
原因不明の肩の運動制限

・呼吸器腫瘍
90°以上の挙上負荷
横隔膜に由来した痛み
呼吸運動により悪化
大胸筋のスパズム
肩甲骨、肩関節の他動運動の制限なし
・パンコースト腫瘍
胸壁、腋窩に浸潤すると症状を引き起こす
腕神経叢の障害
腋窩、肩、鎖骨下部の鋭い神経炎痛
上肢筋の委縮
夜間痛
情緒不安、運動により悪化

リウマチ ・リウマチ性多発性筋炎、多発性筋炎
全身性倦怠感、易疲労性
両側性の症状が多い

凍結肩を引き起こす全身性疾患

凍結肩は、糖尿病、甲状腺機能亢進症、虚血性心疾患、呼吸器疾患(結核、気腫、慢性気管支炎)にともなう可能性があります。また、冠状動脈バイパス術後6~9ヶ月に起こることもあります。

以上のように肩関節は、まず「どちらの肩が痛みがあるのか」により、関係する疾患が変わります。また、肩の動きに伴う症状の変化の確認と、随伴する症状の問診を行い、鑑別してしなければなりません。注意しないといけないことは、実際に肩関節の動きに制限がある場合でも、糖尿病や甲状腺機能亢進症など、全身性疾患が原因で起こっている可能性があるということです