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経絡は理学療法の臨床に取り入れやすい概念です。それは、経絡が可動域制限や筋力低下と関連づけて考えやすい為でもあります。とくに経絡と可動域制限の関係を使うと、あまり知識がない状態でも問題のある経絡の判定が出来ます。

そこで今回は、経絡と可動域制限の関係ついて解説します。

伸展動作を妨げる経絡

伸展動作を妨げる経絡は、体の前面にある経絡です。

肺大腸経

体の前面には「肺大腸経」「脾胃経」「任脈」の3つがあり、身体の前面を伸ばす動作と関係します。

肺経は前胸部側面の第1肋間から始まります。その後、上肢に続き、上腕、前腕ともにその橈側を通り、手関節の橈側を経由して母指の爪の橈側に至ります。

一方、大腸経は人差し指の爪の橈側から始まり、肺経と同様に上肢の橈側を通り、肩から頚部の前面を経由し、鼻の外側に至ります。また、大腸経は肺経と異なり、手の背側を通ります。

この2つの経絡は、頚部、体幹の前面を通るため、問題が生じるとその伸展動作が障害されます。

具体的には、肺経に問題があると肩関節の挙上、伸展、水平外転、内旋、肘関節の伸展、前腕の回内、手の尺屈が制限されます。大腸経ではこれに、頚椎の伸展、対側側屈、対側回旋の制限が加わります。

いずれにしても、肺大腸は表裏関係にあるため、どちらに問題があっても上記の制限が生じる可能性があります。

脾胃経

胃経は目の下から始まります。その後、前頸部、前胸部、腹部を通り、大腿、下腿の前面に分布し、第2趾の爪の外側に至ります。目から起始することもあり、胃と目が関係することは想像できるかと思います。

一方、脾経は第1趾の爪の内側から始まります。その後、下肢に胃経の内側を通り、下腹部前面で胃経の外側に移ります。そのまま腹部、胸部の前面を経由し、側胸部に至ります。

この2つの経絡も体幹前面を通るため、問題が生じると伸展動作に障害を起こします。肺大腸経との違いは、肺大腸経は上肢の動きに関係するのに対し、脾胃経は下肢の動きに影響を与えます。

具体的には、脾経に問題があると、体幹の伸展、股関節の伸展、膝関節の屈曲、足関節の底屈が制限されます。胃経はこれに、頚椎の伸展、対側側屈の制限が加わります。

これも表裏の関係から相互に影響するため、どちらが障害されても上記の制限が生じます。

任脈

任脈は、前面を走行する肺大腸経、脾胃経を統括する中心となります。仁脈は会陰に始まり、腹部、胸部の中心を通り、口の下方に至ります。

そして、この経絡が障害されると、肺大腸経、脾胃経に関係する全ての動きに影響します。

つまり、先程述べたような肺大腸経や脾胃経の問題による可動域制限は、任脈の問題による制限である可能性があることを理解しておく必要があります。

以上のように、経絡はその走行を知り可動域の制限を確認することで、どの経絡に問題があるかを予測できます。もしかしたら、あなたが苦戦している可動域制限の原因は経絡にあるかもしれません。

屈曲動作を妨げる経絡

屈曲動作を妨げる経絡は、身体の後面に位置する経絡です。そして、身体の後面には「心小腸経」「腎膀胱経」「督脈」の3つがあります。

心小腸経

心経は腋窩から始まります。その後、上肢の尺側を通り、手掌の尺側を経由して小指の爪の橈側に至ります。

一方、小腸経は小指の爪の尺側から始まり、小腸経と同様に上肢の尺側を通り、肩の後面から頚部の側面を経由し、耳の前方に至ります。また、小腸経は心経と異なり、手の背側を通ります。

この2つの経絡は、頚部、体幹の後面を通るため、問題が生じるとその屈曲動作が障害されます。

具体的には心経に問題があると、肩関節の屈曲、外旋、肘関節の屈曲、前腕の回外、手関節の橈屈が制限されます。小腸経の障害ではこれに加えて、頚椎の前屈、対側側屈の制限が起こります。

いずれにしても心小腸経は表裏の関係にあるので、どちらに問題があっても上記の制限が生じる可能性があります。

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腎膀胱経

膀胱経は内眼角から始まります。その後、前額部、頭部、後頭部、背部を通り、大腿および下腿後面に分布し、第5趾の爪の外側に至ります。

一方、腎経は第5趾の下端に始まり、足底部を経由して下腿の膀胱経の内側を平行し、体幹部では腹部、前胸部を通り、鎖骨下方に至ります。膀胱経は体幹、下肢ともに後面、腎経は下肢が後面、体幹は前面を通るため、体幹の動作に与える影響が異なります。

この2つの経絡は、下半身の後面を通るため問題が生じると、下肢の伸展動作に障害が生じます。また、先程述べたように、腎経は体幹部では前面を通るため、腎経を伸展する動作は異なります。

具体的には、膀胱経に問題が生じると体幹、股関節の屈曲、足関節の背屈に制限が生じます。腎経の問題では、体幹の伸展、股関節の屈曲、足関節の背屈に制限が起こります。

いずれにしても腎膀胱経は表裏関係にあるため、どちらに問題があっても上記の制限が生じる可能性があります。

督脈

督脈は、後面を走行する心小腸経、腎膀胱経を統括する中心軸となります。督脈は尾骨に始まり、背部、頚部、頭部の中心を通り、前額、鼻の中心線を経て、口の上方に至ります。

そしてこの経絡が障害されると、心小腸経、腎膀胱経に関係する全ての動きに影響します。

つまり、先程述べたような心小腸経、腎膀胱経の問題による可動域制限は、督脈の問題による制限である可能性があることを理解しておく必要があります。

以上のように、経絡はその走行を知り可動域の制限を確認することで、どの経絡に問題があるかを予測できます。もしかしたら、あなたが苦戦している可動域制限の原因は経絡にあるかもしれません。

側屈を制限する経絡

身体の側面には「心包三焦経」「肝胆経」「帯脈」の3つがあり、側屈動作の制限と関係しています。

心包三焦経

心包経は乳頭外側から始まります。その後、上肢の中央掌側を通り、手掌の中央を経て中指の先端に至ります。一方、三焦経は薬指の尺側に始まり、上肢の中央背側を通り、肩の側面から頚部の側面を経由し、目の外側に至ります。

この2つの経路は上半身の側面を通るため、問題が生じると側屈動作が障害されます。

具体的には心包経に問題があると、肩関節の水平外転、肘関節の伸展、手関節の背屈が制限されます。対して三焦経の障害では、頚椎の対側側屈、肩関節の水平内転、肘関節屈曲、手関節の掌屈に制限が起こります。

肝胆経

肝経は目の外側から始まります。その後、耳の周辺、側頭部、側頚部、側胸部を経て、下肢外側に分布し、第4趾の爪の外側に至ります。一方、胆径は第1趾の爪の外側に始まり、下肢内側の中央部を通り、下腹部から側胸部にかけて胆径と並走し、乳頭下方に至ります。

胆径はその分布から、側頭部の頭痛に関係しています。また、肝経が通る、側胸部の痛みは肝経由来の症状を代表するものです。

この2つの経絡は主に下半身の側面を通るため、問題があると内外転動作が障害されます。

具体的には肝経に問題があると、体幹の対側回旋、側屈、股関節の外転、外旋、足関節の外返しが制限されます。一方、胆径の障害では、体幹の対側回旋、側屈、股関節の内転、外旋、足関節の内返しに制限が生じます。

帯脈

帯脈は側面を走行する経絡である心包三焦経と肝胆経を統括する中心になります。これは、季肋下から始まり、帯のように腰の周囲を一周します。そして、この経絡が障害されると、心包三焦経、肝胆経に関係する全ての動きに影響します。

つまり、先程述べたような心包三焦経や肝胆経の問題による可動域制限は、帯脈の問題による制限である可能性があることを理解しておく必要があります。

以上のように、経絡はその走行を知り可動域の制限を確認することで、どの経絡に問題があるかを予測できます。もしかしたら、あなたが苦戦している可動域制限の原因は経絡にあるかもしれません。

特に肝経は自律神経系の影響を受けやすい経絡でもあるので、注意が必要です。

今回述べたように、各動作において制限となる経絡は決まっています。こうした可動域制限と経絡の関係性を理解しておくことで、経絡の概念を臨床に応用できるようになります。