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東洋医学の中でも、経絡は理学療法士が臨床に取り入れやすい概念です。それは経絡が可動域制限や筋と深く関係しているためです。また、経絡と可動域制限の関係性を知っていると、多くの人が苦手としている東洋医学の基礎知識を深く学ばなくても臨床に応用することができます。

そこで今回は「各関節ごとに関係する経絡」について解説します。

頚椎に関係する経絡

頚椎には、前頚部に大腸経、胃経、側頚部に三焦経、胆径、後頸部に小腸経、膀胱経が通ります。また、前頚部の中心には任脈、後頸部の中心には督脈が分布します。これらは顔面、頭部でも同様です。そのため、これらの経絡の制限は、頚椎の可動域制限となって表れます。

また、こられの経絡と関係する陰経は頚椎には直接関係していませんが、胸部に分布しているため、間接的に頚椎の動きに影響します。

頚椎の可動域制限

具体的には、頚椎を屈曲させる際は、後頸部を通る小腸経、膀胱経、督脈が伸張されるため、これらの経絡に問題があると、頚椎の屈曲動作が制限されます。また、これらの表裏経である心経、腎経にも影響が及びます。

逆に、頚椎の伸展は前頚部を通る大腸経、胃経、任脈が伸張されるので、これらの経絡に制限があると、頚椎の伸展動作は障害されます。もちろん表裏経である肺経、脾経にも影響が出ます。

そして、頚椎の側屈運動の制限には、側頚部で対側を通る三焦経、胆径、表裏関係にある心包経、肝経が影響します。

さらに回旋運動では、主に対側の肺、大腸経、そして小腸経が関係します。

例えば、回旋制限があった場合、さらに伸展と屈曲動作を加え、どちらの制限が強いかを確認します。伸展での制限が強い場合は大腸経、屈曲での制限が強い場合は小腸経に問題があることが予測されます。

以上のように、基本的には筋の短縮テストと考え方は同じです。動作時に伸展される経絡を考え、さらに複数の動作を組み合わせることで、問題のある経絡を絞り込みます。

腰椎に関係する経絡

腰椎には、陽経である膀胱経、胆径、胃経と陰経である腎経、肝経、脾経が通ります。加えて、前正中を通過する任脈、後正中を通る督脈、腰部を一周する帯脈も分布します。

臍の高さでは、前正中部から任脈、腎経、胃経、脾経、肝経の順で体幹前方の経絡が並んでいます。これらの経絡は、体幹伸展時に伸張されるため、経絡に問題が生じると体幹伸展動作が障害されます。一方、体幹の側面には胆径が位置しており、体幹の側屈運動と関係します。

また、後面には督脈、膀胱経が走行しており、この経絡に問題が生じると体幹屈曲動作が障害されます。

具体的には腎経、膀胱経、督脈が制限されると屈曲動作、脾経、胃経、任脈に問題が生じると伸展動作、肝経、胆径、帯脈に問題があると側屈と回旋動作が障害されます。体幹の運動制限は、下肢の運動を加えることでさらに問題のある経絡を絞ります。

股関節、膝関節に関係する経絡

大腿部における経絡は、前面に胃経、脾経、後面に膀胱経、腎経、外側に胆径、内側に肝経が分布しています。

そのため、股関節の屈曲と膝関節の伸展制限には腎経、膀胱経、股関節の伸展と膝関節の屈曲制限には脾経、胃経、股関節の内転には胆径、外転には肝経が影響します。

これらの経絡は、全て腰椎の動きにも関係しています。つまり、腰椎の運動制限方向と、股関節、膝関節の運動制限の方向を総合して考えることで、一番問題のある経絡の特定ができます。

例えば、体幹伸展の動きに制限があった場合、体幹伸展を制限する経絡には任脈、腎経、胃経、脾経、肝経の5つがあります。そして、これらの経絡は体幹の動きでは同じ方向の制限に関係しますが、股関節では異なります。

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腰椎伸展に股関節外転制限がある場合は、肝経に問題があり、股関節屈曲制限がある場合は腎経の制限が強いと考えることができます。

肩関節に関係する経絡

肩関節には、前腕、上腕の経絡走行の特徴がそのまま引き継がれます。前方には主に陰経が分布し、上方から肺経、心包経、心経の順に並んでいます。一方、後方には陽経である大腸経、三焦経、小腸経が上から順に通っています。

つまり、表裏経である大腸経と肺経、心経と小腸経は近接して位置し、三焦経と心包経は対立した位置関係で走行しているということです。また、肩の前方には下肢の経絡である胆径や脾経が通っているため、肩の動きには下肢の経絡も考慮しておく必要があります。

肩関節の可動域制限

具体的には、肩関節を屈曲する際には後下方を通る心経、小腸経が伸張されるため、これらの経絡に問題があると屈曲制限が生じます。屈曲時は、さらに外旋を加えることで小腸経、内旋を加えると心経の伸長が強まります。また、肘関節の屈曲を組み合わせることで、両方の経絡へのストレスを強めます

肩関節伸展時には、前上方を通る肺経、大腸経が伸張されるため、これらの経絡に制限が生じると、伸展運動が障害されます。このときは、外旋を加えると肺経、内旋を加えると大腸経がさらに伸張されます。

そして、肩関節水平内転時には外側を通る三焦経が伸張されるため、この経絡に問題があると内転制限が生じます。この際、肘を曲げるとさらに三焦経へのストレスを強めます。一方、水平外転時には内側を通る心包経が伸張されるため、心包経に制限があると水平外転制限が起こります。また、肘を曲げると心包経の伸張を強めることができます。

肘、手関節に関係する経絡

肘関節には、橈側を肺経、大腸経、尺側を心経、小腸経、中央前面を心包経、中央後面を三焦経が通ります。前後面でいうと、前面を橈側から肺経、心包経、心経の順に並び、後面を橈側から大腸経、三焦経、小腸経の順に通っています。

つまり、それぞれ表裏の関係にある経絡が前後面で対応しているということです。手関節も同様で、前面を橈側から肺経、心包経、心経、後面を橈側から大腸経、三焦経、小腸経が通ります。

以上のように、肘と手は経絡の走行が全く同じ走行になります

肘、手関節の可動域制限

具体的には、肘関節の前面を通る肺経、心包経、心経に問題が生じると、肘関節の伸展制限が生じ、後面を通る、大腸経、三焦経、小腸経の制限では、肘関節の屈曲運動が障害されます。また、前腕回内時には橈側の肺経、大腸経、回外時には尺側の小腸経や心経が伸張されるため、これらの経絡に問題があると、動きの制限が起こります。

手関節も同様で、前面を通る肺経、心包経、心経に問題があると、手関節の背屈、後面を通る、大腸経、三焦経、小腸経に制限があると、手関節の掌屈運動が障害されます。さらに、橈屈では心経、小腸経、尺屈では肺経、大腸経が伸張されます。

このように考えると、経絡の伸張テストは、神経系の伸張テストと同じように考えることができます。

例えば、大腸経に制限がある場合、肩関節は伸展・内旋、肘関節は屈曲、手関節は掌屈・尺屈の組み合わせの運動が障害されます。

そのため、神経伸張テストと同様に、肩前方の痛みが肩関節の動きではな、肘の屈曲や手関節の掌屈、尺屈などで悪化する場合、それは大腸経に問題があると考えることができます。

今回述べたように、各関節ごとに関係する経絡は決まっています。そして、経絡の走行さえ覚えておけば、理学療法士の臨床に応用することは難しくありません。ぜひ経絡の走行を学び、臨床に活用するようにしましょう。