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肩甲上腕関節において、挙上動作の際は、大結節が肩峰の下に入り込むことでその動きが達成されます。

大結節が肩峰下を通る軌跡には3つの経路があり、その軌跡を理解していることは、肩関節の挙上動作を改善する際には必須となります。

そこで今回は、挙上動作における大結節の軌跡について解説します。

前方路、後外側路、中間路

上腕骨頭が通る3つの経路とは、前方挙上時に通過する「前方路」、側方挙上時の「後外側路」、両者の中間である「中間路」の3つを指します。

さらにこの経路は、大結節と肩峰との位置関係で挙上角度ごとに分けられています。

挙上角度が0~80°、つまり大結節が肩峰の外にあるときを「pre-rotational glide」、80~120°で肩峰直下にある場合を「rotational glide」、120°以降で肩峰の内側にあるタイミングをpost-rotational glideといいます。

そのため大結節の位置は、最初の3つの経路と合せて計9区分に分けられます

そして、大結節が前方路を通るためには内旋が同時に起こる必要があり、後外側路を通るためには外旋が必要になります。この回旋動作が起こらないと、大結節は肩峰下を上手く通過することができません

こののことが、屈曲に内旋、外転に外旋が伴う必要がある理由になります。そのため、内旋制限は屈曲の可動域に影響し、外旋の問題は外転の可動域に関係します。

評価、治療を行う際は、このことを頭に入れておく必要があります。

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軟部組織による影響

これらの3つの経路と9区分を考えるとき、挙上80~120°の範囲で大結節は肩峰に最も近づきます。そのため、この80~120°の挙上範囲で通常以上に大結節が上方に変位してしまうと、肩峰と大結節の間にある組織が挟まれて圧迫されます。これが、いわゆる肩峰下インピンジメントになります。

肩峰下インピンジメントで影響を受ける組織としては、棘上筋腱が代表例として挙げられます。そのため、肩峰下インピンジメントが繰り返されると、棘上筋腱を断裂する可能性が高くなります。

通常では、大結節は肩峰に押し付けられることなく肩峰下の通路をスムーズに通過します。しかし、例えば挙上動作の際に、肩甲上腕関節の下方組織の伸張性が低下していたとします。

正常な運動では、上腕骨頭は挙上の時は下方に滑ります。しかし、関節包の下方組織などの伸張性が低下していると、上腕骨頭は上手く下方に滑るができないため、結果的に上方に変位することになります。

このような状態になると、肩峰下インピンジメントが起こる可能性が高くなります。

そのため、肩関節の運動を考える際は、上腕骨頭の軌跡と、関節周囲の軟部組織との関係性を考慮することが大切です。

以上のように、軟部組織の拘縮は正常な大結節の運動を障害し、肩峰下に存在する組織の炎症を引き起こします。大結節の軌跡を知ることで、患者さんとの訴えを解剖学的知識と合わせて考えることができるようになります。そのため、このような知識は、肩関節疾患を担当する理学療法士として必須になります。