スポンサーリンク

股関節痛は、理学療法の臨床においてよく遭遇する症状の一つです。股関節の痛みは腰痛、仙腸関節、仙骨、膝から股関節、足関節へ関連痛を起こす可能性があります。運動機能障害によるものでも「滑液包炎」「筋膜炎」「末梢神経絞扼」「上位腰椎、仙腸関節の機能障害」などさまざまな原因で股関節痛が生じます。

これらの筋骨格系の問題に隠れて存在する、全身性疾患も少なくありません。

そこで今回は、股関節痛を引き起こす全身性疾患について解説します。

股関節痛を引き起こす全身性疾患

股関節痛を引き起こす全身性疾患は「癌」「心血管系病変」「泌尿器系病変」「炎症、炎症性疾患」などが挙げられます。

大腿骨や骨盤下部への脊椎転移は股関節痛として出現します。通常、これらの骨病変において、滑膜に転移することはないので関節運動が障害されることはありません。癌の種類としては「脊椎転移」「骨腫瘍」があります。また「骨腫瘍」の中でも「類骨骨腫」「軟骨肉腫」「巨細胞種」「ユーイング肉腫」が挙げられます。

以下に特徴を示します。

類骨骨腫 ・20歳代に好発
・慢性の鈍い股関節痛、大腿部痛、膝痛
・夜間増悪
・活動、アスピリンにて軽減
・股関節運動の制限
軟骨肉腫 ・40歳以上の男性に好発
・背部、大腿部痛
・坐骨神経痛
・膀胱障害(膀胱頚部の障害)
・一側性の浮腫(腸骨静脈閉塞)
ユーイング肉腫 ・5~16歳に好発
・増悪かつ持続性の疼痛
・増悪かつ持続性の骨上の浮腫
・四肢骨が障害された場合、運動性の低下
・発熱
・疲労
・体重減少
・肺塞栓のリスク(腫瘍血管が血栓を作る傾向にある)

心臓病変

動脈不全に伴う、腰部、下肢痛と同様に、股関節痛も生じます。理学療法の臨床ではよくみられる症状で、神経因性の跛行と鑑別する必要があります。この鑑別は、血管性は「腰椎の動きの関与に関わらず、運動による下肢の酸素需要量増加」、神経因性は「腰椎の伸展ストレス」により原因部位にストレスがかかっていることを考慮して行います

具体的には「エアロバイクを行い、症状が再現されるか」を確認する。これは、腰椎の伸展ストレスを起こさず、下肢の酸素需要量だけを増やす運動となる。つまり、これで症状が再現されれば、血管性の疼痛の可能性が高いということになります。

以下に血管性跛行の特徴を示します。

スポンサーリンク

・足部脈拍の減弱、消失
・足部の色、皮膚の変化
・深部腱反射正常
・最初は腓腹部痛
・臀部、股関節、大腿、足部痛
・脊椎の運動により症状は誘発されない
・下肢の運動により症状再現
・安静にてすぐに症状軽減
・40~60歳代
・喫煙歴
・原因は末梢動脈のアテローム硬化

泌尿器病変

尿管仙痛による疼痛は、股関節痛として訴えられることがあります。腎臓、泌尿器病変との鑑別が必要です。

以下に腎臓、泌尿器病変の特徴を示します。

・45歳以上男性に好発
・排尿時の灼熱痛、排尿困難、発熱を伴う背部痛(前立腺炎)
・血尿
・全身症状(特に熱発、悪寒)
・尿量、頻度の変化
・持続性の疼痛
体位変化により疼痛の変化がない(患側への側屈、圧迫は疼痛を軽減する可能性がある)
・神経学的徴候なし
・腎臓レベルの背部痛、乳がん、子宮がんの既往歴
肋骨角の圧痛
・外傷の病歴

炎症性疾患

腹部、腹膜の炎症によっても股関節痛を引き起こす可能性があります。これは大腰筋への刺激、腰筋膿瘍による疼痛を引き起こします。また、強直性脊椎炎によっても股関節痛が出現します。

以下にそれぞれの特徴を示します。

腰筋膿瘍 ・右股関節に多い
・鼓室炎、クローン病、虫垂炎、骨盤炎症疾患
・筋スパズムによる可動域制限
・食欲低下、他の消化管症状、発熱、寝汗(全身性の原因によるものの場合)
・トリガーポイントとの区別(以下トリガーポイントの特徴)
体重負荷を伴う活動により増悪
安静による症状軽減
屈曲位での症状軽減
強直性脊椎炎 ・早期段階
間欠性の微熱
疲労、食欲不振、体重減少、貧血
頸椎の有痛性制限
仙腸関節炎
間欠性の腰痛
腰椎前弯の消失
・進行段階
持続性の腰痛
仙腸関節、脊椎の強直
頸椎の顕著な後弯
胸郭拡張低下
末梢関節炎(股関節、膝関節)

股関節痛を引き起こす、代表的な疾患の例と特徴を示しました。その他にも、大腿骨頚部骨折の発症率を上げる骨粗鬆症(閉経後の女性、妊娠中の女性)、股関節の虚血壊死を引き起こす鎌状赤血球貧血、血友病の既往には注意する必要があります。

個人的にも股関節の鑑別は難しい印象です。まずは、上記のような疾患が、股関節痛を引き起こす可能性があることを意識して臨床に臨むことが大切です。