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胸郭出口症候群は、胸郭の上口周囲で神経血管系を圧迫することによって生じるさまざまな症候群の総称です。その病態に応じて、頚肋症候群、前斜角筋症候群、烏口下小胸筋症候群、中斜角筋症候群、第一肋骨症候群、過外転症候群、バジェット・シュレッター症候群、肩甲帯下制症候群などがさまざまな名称があります。

このように多くの名称がありますが、基本的には胸肋椎体領域、斜角筋三角、肋鎖領域、烏口胸領域の4領域における鎖骨下動静脈と腕神経叢(特に内側神経束下幹)の圧迫による血流異常、神経絞扼障害と考えて良いと思います。

今回は、この胸郭出口症候群について必要な解剖とその特徴について解説します。

胸郭出口症候群の理解に必要な解剖的知識

いわゆる胸郭出口は、前斜角筋、中斜角筋、鎖骨、そして第一肋骨によって形成されます。C5~Th1の主要前枝は集合して腕神経叢を作ります。そして、腕神経叢は前斜角筋、中斜角筋の間を通り、鎖骨上部に達し、そこで上・中・下幹に分かれます。下幹の神経線維は鎖骨と第一肋骨の間を通った後、小胸筋下を走行し、末梢の支配組織に達します。

このような構造から上部腕神経叢は斜角筋、下部腕神経叢は肋鎖領域と小胸筋下で絞扼を起こしやすいです。

そして冒頭でも述べたように、胸郭出口は4つに分けられます。胸肋椎体領域では、パンコースト腫瘍による問題が起こりやすいです。斜角筋三角では、その狭小化によって神経血管束と周辺組織の摩擦が大きくなったり、神経組織が筋と癒着を起こしたりすることによって症状が出現します。また、肋鎖領域では斜角筋内と同様の組織と鎖骨下静脈、烏口胸領域では腕神経叢の下幹を含みます。

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これらは、「先天的な構造上の問題」、「外傷による組織変性の問題」、「姿勢の問題」の3つの原因があります。

胸郭出口症候群の臨床症状

胸郭出口症候群は腕神経叢と鎖骨下動静脈の問題によって症状が出現します。そのため、上肢の痛みや異常感覚、脱力感などの運動障害が出現します。とくに訴えが多い症状は上肢の重だるさ、違和感であり、頚椎由来の症状との鑑別が大切である。

血管系の症状が出現することは稀であり、症状が出たときには末梢の浮腫、冷感、筋痛、継続的に作業した際の筋力低下などが起こります。また、筋力低下に加えレイノー現象のような症状が出現することもあります。さらに、動脈機能不全により二次的に、指先に壊疽や皮膚の栄養障害、爪の変化などが生じることもあります。

これらの症状の大半は、保存的治療によって早期に良好な結果が期待できます。もし理学療法を行っても症状が改善しない場合は、外科的手術も検討されますが、私は手術まで至った症例は経験したことがありません。

以上のように、胸郭出口症候群は複雑な解剖をもつ胸郭出口周囲で問題が起こるため、その症状も複雑です。しかし、基本的に予後は良好であり、理学療法士として他疾患との鑑別をした後は、その回復を促せるように関わることが大切だと考えます。