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肝臓、胆管系疾患は、筋骨格系損傷に類似した症状を引き起こします。その症状は背部痛、肩痛、痺れなどさまざまです。これらの特徴を知っておくことは、症状の原因を鑑別する上で必須です。

肝臓、胆管疾患の症状

皮膚変化

肝臓系に関係する症状として、皮膚の変化が挙げられます。その変化は、黄疸に代表され、蒼白、オレンジ、緑色を呈します。この変化は、ビリルビンの影響によって引き起こされ、ビリルビン値が2~3mg/dlに達すると目に変化が起こり、5~6mg/dlに達すると皮膚に変化が出ます

また、ビリルビンは尿にも影響し、暗色尿や明色便(肝炎、胆嚢疾患、膵臓癌、肝細胞毒性薬物、肝硬変)がみられます。この色の変化は、ビリルビンが分泌されていないことを示唆しています。正常では、ビリルビンから変換される胆汁によって、便は褐色となります。

その他の皮膚変化として、紫斑、くも状血管腫、手掌紅斑がみられます。これらの症状ははエストロゲン値の上昇を示唆する血管症状です。これは、エストロゲンが肝臓で解毒されなかった結果生じます。

筋骨格系疼痛

肝臓、胆管系にみられる筋骨格系疼痛は、肩甲間部、右肩、右肩甲骨周囲にみられます。この肩の疼痛が、唯一の症状であることもあります

胆管系からの交感神経線維は、腹腔神経叢と内臓神経叢を介して、背側の脊椎領域で、肝臓繊維と交通します。これらの神経支配は両側性ですが、ほとんどの胆管の繊維は、右内臓神経を通って脊髄に達し、隣接する横隔神経と連絡するため、右肩の疼痛を引き起こします。

また、肝臓疾患は、異常な骨増殖を引き起こし、骨軟化症、骨粗鬆症などに関連し、骨痛、重度の変形、圧迫骨折に関与することもあります。

さらに、慢性肝疾患の非特異的合併症として、手関節および足関節の有痛性関節症がみられることもあります。

神経症状

肝機能の異常によって、血清アンモニアおよび尿素レベルが上昇し、末梢神経機能が障害されます。また、アンモニア濃度の上昇は、脳でのグルタミン酸塩濃度の低下につながり、中枢神経系の代謝、機能が障害されます。これは、脳でのアンモニア濃度が上昇することによって、アンモニアがグルタミン酸塩と反応し、グルタミンが生成されるために起こります。

つまり、肝機能が障害されると、末梢神経、中枢神経ともに影響を受けるということです。

症状としては、羽ばたき振戦、両側性の手根管・足根管症候群がその代表として挙げられます。

以下に、肝臓疾患、胆嚢疾患の症状を挙げます。

肝臓疾患 胆嚢疾患
・腹部膨満感
・食欲不振、吐き気、嘔吐
・皮膚変化
黄疸
紫斑
くも状血管腫
手掌紅斑
・暗色尿、明色便、白土色便
・腹水
・浮腫および乏尿
・右上1/4腹部痛
・右肩痛、背部痛
・神経症状
意識混濁
睡眠障害
振戦
反射亢進
羽ばたき振戦
両側性の手根管・足根管症候群
・蒼白
・女性化乳房
・右上腹部痛および心窩部痛
・横断
・発熱、悪寒
・消化不良、吐き気
・脂肪の多い食事を食べることができない
・突然の背部痛、右肩痛

以上のように、肝臓、胆嚢系の疾患は、理学療法士がよく遭遇するような筋骨格系損傷に類似した症状を引き起こします。特に、右肩痛や背部痛、手根管症候群はよく訴えられる症状です。これらの症状を、注意深く問診し、筋骨格系の問題か、全身性の問題かを鑑別することが大切です。

肝炎

肝炎は、ウイルス、化学物質、薬物反応、アルコール中毒によって引き起こされます。さらに、肝炎は他のウイルスへの感染の結果によって二次的に生じます。

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎は、A,B,C,D,E,Gのいずれかのウイルスが原因となって生じる急性炎症です。第三者に広がりやすく、回復が遅延し、社会生活に支障をきたします。多くの場合、無症候性か軽度の症状がみられるのみであり、報告されていない例が多いとされています。

肝炎は初期、黄疸期、回復期の3段階に分類されます

初期は1~3週間続き、漠然とした消化管症状と全身症状がみられます。この時期から、食べ物、アルコール、喫煙を避けるようになることが多いです。肝臓は肥大し、圧痛、間欠性のかゆみがみられるようになります。

そして、その後1~2週間をピークとして6~8週間黄疸期が続きます。黄疸期の1~14日前に、ビリルビンが結合し、排出されるため、暗色尿や白色便がみられます。黄疸期中に炎症は沈静化し、消化管症状と肝臓肥大、圧痛の軽減が認められます。この時期は、黄疸に加えて、後頚部リンパ節と脾臓の肥大が起こります。

その後、回復期が3~4ヶ月続き、病態が改善します。この時期は、良くなるように感じはするものの、疲労しやすくなっています。

突然発症する重度の肝炎は、ときどき死に至ることがあり、特別なマネージメントが必要になります。

以下に、代表的なA型肝炎とB型肝炎の症状についてまとめます。

A型肝炎 B型肝炎
・疲労困憊
・食欲不振
・発熱
・関節痛、筋肉痛
・右上腹部痛
・白土色便、暗色尿
・黄疸
・頭痛
・咽頭炎
・味覚や臭覚の変化
・喫煙や飲酒への嫌悪
・微熱
・消化不良
・黄疸
・関節痛
・皮疹
・暗色尿
・食欲不振、吐き気
・有痛性の腹部膨満
・発熱

また、ウイルス性肝炎が解消されなかったり、原因不明の慢性活動性肝炎などによって、慢性肝炎に移行するケースもあります。6か月以上続く、肝炎を慢性肝炎として定義します。これらは、降圧剤などの薬物過敏によって二次的に生じたり、ウィルソン病、血色素症などの代謝疾患が原因で起こったりします。特に、血色素症は関節痛と関節症がみられ、RAやOAなどと混同されます。

非ウイルス性肝炎

ウイルス性以外に、アルコール、抗炎症剤、抗痙攣剤、抗生物質、癌治療を目的とした細胞毒、抗結核薬、造影剤、抗精神病薬、抗うつ剤のような特定の化学物質や薬物が原因でも肝炎を発症します。

これらの症状は、ダメージの程度と原因物質により異なります。しかし、急性ウイルス性肝炎と類似することが多いです。

以下にその症状をまとめます。

・食欲不振、吐き気、嘔吐
・疲労、倦怠感
・黄疸
・暗色尿
・粘土色便
・頭痛、めまい、嗜眠状態
・発熱、皮疹、関節痛、上腹部痛

最後に、肝炎のリスクファクターをまとめます。

・注射薬の使用
・鍼
・入れ墨
・ピアス
・手術
・1991年以前の輸血
・血液透析
・体液に接触する職種
・特定の化学物質や薬剤への接触
・同性愛者の行為
・重度のアルコール中毒
・生の貝の摂取

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以上のように、肝炎は関節痛などの筋骨格系損傷に類似した症状を引き起こします。そして、肝炎の多くは、原因がはっきりしており、問診によってその原因を特定することが大切になります。

肝硬変

肝硬変は、肝細胞の破壊と繊維帯による結合組織性の置換を特徴とする慢性肝臓疾患です。肝臓の瘢痕化が進むと、血液とリンパの流れが障害され、肝不全が生じ、症状が悪化します。原因はさまざまですが、アルコール中毒者に多い傾向にあります。

中等度のエクササイズやストレスは、肝臓の血流量の減少を招きます

そのため、肝硬変を患っている場合、運動を行う際は、自覚症状によって運動のレベルを調整する必要があります。

症状としては、早期では軽度の右腹部痛、消化不良や食欲不振などの胃腸症状、易疲労性、脱力、発熱などが挙げられます。病態が進行すると、門脈圧亢進症や腹水、食道静脈瘤のような一連の症状が出現します。

腹水は、腹腔における体液の異常な蓄積であり、門脈の逆流と蛋白不足の結果生じます。腹水は、腹部ヘルニアと腰椎の過前弯を引き起こし、鼠径部痛や腰痛を訴える人が多いです。食道静脈瘤も、門脈の逆流の結果生じます。

これらの静脈瘤は、血管壁が薄く破裂しやすいため、重篤な出血を引き起こし、致命的となります。

以下に、臨床徴候を示します。

呼吸器 ・胸郭拡張性低下
・低酸素症(呼吸困難、チアノーゼ、ばち指)
神経系 ・知力の変化、記憶障害、推理能力の低下
・易刺激性
・妄想と幻覚
・言語不明瞭
・羽ばたき振戦
・末梢神経炎
・末梢筋委縮
血液 ・凝固障害(鼻血、紫斑、歯肉出血)
内分泌 ・精巣萎縮
・生理不順
・女性化乳房
外皮 ・かゆみ、乾燥、張りの低下
・色素沈着
・くも状血管腫
・手掌紅斑
・黄疸
肝臓 ・肝腫脹
・腹水
・両下肢の浮腫
・肝性脳症(高次脳障害、協調性低下、固縮、反射亢進など)
消化器 ・食欲不振
・吐き気、嘔吐、下痢

肝性脳症

肝性脳症は、アンモニアの解毒能力の低下に起因する神経障害です。血清アンモニア濃度が上昇すると、中枢神経系、末梢神経系の両方が障害され、一連の神経症状が生じます。羽ばたき振戦と感覚脱出、異常(手根管症候群や足根管症候群に類似した症状)がみられることが多いです。

臨床症状は、血清中のアンモニアの増加によって、4段階に発展します。以下にその段階別の症状を示します。

ステージⅠ ステージⅡ ステージⅢ ステージⅣ
・わずかな性格の変化
(見当識障害、多幸、うつ、言語不明瞭)
・軽度の振戦
・筋協調性低下
・書字の障害
・羽ばたき振戦
・傾眠
・異常行動
・失行症
・失調症
・険しい表情、まばたき
・過換気
・錯乱
・暴力
・思考錯乱性言語
・羽ばたき振戦(筋固縮、バビンスキー反射、
深部腱反射亢進)
・羽ばたき振戦の消失
・バビンスキー反射
・肝臓の悪臭

肝臓癌

肝臓癌は、原発性より転移性で発生しやすく、その発生率は20倍といわれています。通常、原発性の場合は、肝硬変を伴いますが、真菌感染、ウイルス性肝炎、アナボリックステロイドの過剰使用、外傷、栄養障害、肝細胞毒への暴露などの素因と関連します。

また、化学物質との関係も指摘されており、経口避妊薬は腺腫(良性腫瘍)と関係しているといわれています。肝臓癌は、多くの場合、肝臓の80~90%が障害されるまで、機能障害は生じません。

以下に臨床症状をまとめます。

・黄疸
・進行性の健康障害
・食欲不振、体重減少
・全身の脱力
・上腹部の膨満感、痛み、不快感
・中背部の持続性の鈍痛

肝臓は沈黙の臓器といわれるように、病態が進行してはじめて明らかな症状が出現します。しかし、病態の早期にも易疲労性や食事の変化などわずかな変化は見られます。理学療法士として、このわずかな変化を見逃さないことが、患者さんの命を救うことにつながるかもしれません。

胆のう系疾患

胆嚢の問題は、肝臓の問題による症状と似ていますが、異なる症状も多くあります。

以下に、臨床でよく見られる胆石症と胆嚢炎について解説します。

胆石症

胆石は、胆汁の要素が変化することによって、胆嚢内に形成されると考えられています。その中で、色素とコレステロールの2つのタイプがあります。胆石の発生率は年齢とともに増加し、70歳以上の高齢者では40%以上に見られます。

リスク要因としては、年齢、男性、エストロゲンレベルの上昇(妊娠、経口避妊薬、閉経後治療、経産婦)、肥満、高コレステロールの食事、糖尿病、肝臓疾患などが挙げられます。

胆管のうっ帯は、胆汁の停滞、胆嚢による水分の過剰吸収、結石形成を引き起こします。そして、肝臓疾患や妊娠に起因する閉塞のような遅発性の胆嚢空洞化は、胆管うっ帯を促進します。また、胆嚢の炎症は、胆汁成分を変化させ、胆石形成に関わります。

疾患の重篤さ、感染の有無、抗生物質への反応によって異なりますが、胆石症の予後は比較的良好です。

胆嚢炎

胆嚢炎は、胆石の影響によって急性あるいは慢性に発症し、胆のうの有痛性膨張を引き起こします。

急性胆嚢炎は、胆管を閉塞する腸チフスや悪性腫瘍などでも起こります。これが慢性化すると、胆のうの委縮、繊維化、他の器官との癒着を生じます。胆嚢疾患に特有の症状として、脂肪の多い食事の後に、右1/4上腹部に起こる仙痛が挙げられます。この痛みは、必ずしも右1/4上腹部に限定されず、持続痛や仙痛でないこともあります。

また、胆嚢炎では食直後に症状(疼痛)が見られますが、胆石では食後1~3時間後に症状(痛みと吐き気)がみられます。そして、胆嚢痛は、吸気、上半身の運動、臥位で症状が悪化するという特徴もあります。

以下に胆嚢炎の臨床症状をまとめます。

・悪寒、微熱
・黄疸
・消化管症状(吐き気、食欲不振、嘔吐)
・胆嚢上の圧痛
・右1/4上腹部の激痛
・右肩および、肩甲間部への放散痛

胆嚢に関しては、肝臓と類似した症状を呈することが多いですので、肝臓と胆嚢の生理学を学び、この二つの関連性を知っておくと、より理解が深まるかと思います。

今回述べたように、肝臓・胆のう疾患では、さまざまな症状が出現します。理学療法士として、肝臓・胆のう系疾患の症状や特徴について理解しておくことは大切です。