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免疫系疾患は関節炎など、多くの筋骨格系の問題に類似した症状を引き起こします。そのため、理学療法士はその見極めが大切であり、その知識を有していることは必須です。

今回は、免疫系疾患の特徴について解説します。

免疫系疾患で出現する症状

先ほど述べたように、免疫系疾患では多くの筋骨格系の問題に類似した症状が出現します。例えば、関節炎、浮腫、筋力低下なども引き起こします。

以下にその症状の特徴を示します。

関節痛

免疫疾患による関節痛の多くは、エピソードがあるか、他の症状を伴います。皮膚の発疹や病変が随伴する場合は、疥癬性関節炎やライム熱、リウマチ熱が考えられます。

また、術後の炎症性関節炎や皮疹、下痢、尿道炎のような症状が随伴する場合は、反応性あるいは感染性関節炎、口内炎はライター病、全身性エリテマトーデスの可能性があります。皮膚班の盛り上がりが認められるケースでは、乾癬性関節炎などが疑われます。

浮腫

とくに単関節に浮腫がみられる場合は、関節性(関節炎)、関節周囲(腱滑膜炎)、体肢全体(リンパ水腫)、他の領域にもみられるかなどを鑑別する必要があります。また、間欠性、持続性、症候性、無症候性、日内変動などの確認も必要です。

免疫系疾患では、炎症性関節炎を生じることが多く、関節性の浮腫が認められます。

筋力低下

全身性の筋力低下が認められる場合は、筋疾患がない限り、免疫系障害(特に繊維筋肉痛)の人によくみられる症状です。筋力低下は神経原性、筋原性の見極めが大切で、例外を除いては、神経原性は遠位筋、筋原性は近位筋に、優位に筋力低下が生じます。

階段を上ることが困難、低い椅子からの立ち上がりが困難などの訴えの場合は、筋疾患の可能性が高いです。

爪床の変化

爪床の変化がある場合は、とくに炎症性疾患が根底にあることが疑われます。例えば、小さな梗塞や線状出血は心内膜炎、全身性血管炎に起こります。また、指先の委縮や石灰性結節、指のチアノーゼ、皮膚の硬化などは、全身性硬化症および強皮症に認められます。

さらに、異栄養性の爪の変化は乾癬、スポンジ様の滑膜肥厚や骨の肥大性変化は、関節リウマチなどに特徴的です。

免疫系疾患のてがかり

免疫系疾患全般をみつけるきっかけになる、てがかりを以下に示します。

・関節リウマチの既往
・NSAIDsの長期服用者で、消化管症状、原因不明の背部痛、肩痛が認められる
・免疫抑制剤、コルチコステロイド服用者で、発熱などの全身症状が認められる
・脊椎関節疾患の家族歴のある40歳以下の人で、エピソードのある背部痛の潜行性の発症
・泌尿器症状、目の症状が随伴する関節痛(ライター症候群)
・皮膚症状が随伴する関節痛(乾癬性関節炎、ライム病、リウマチ熱)
・術後の関節炎(感染性関節炎)
・感染から1~3週間後の神経学的症状の出現(ギランバレー症候群)

自己免疫疾患

免疫系の障害ではさまざまな症状が出現します。理学療法士としては、免疫系疾患の中でも自己免疫疾患と関わることが多いです。自己免疫疾患は自己と他者の区別ができず、正常な自己組織に対して免疫反応を起こすことによって起こります。

原因は不明ですが、遺伝や女性ホルモン、ウイルス、環境などの要因が関係していると考えられています。また、自己免疫疾患は器官特異性と全身性に分けられます。

以下に、全身性自己免疫疾患の中でもよく見られる繊維製筋痛症候群とリウマチについて解説します。

繊維性筋痛症候群

繊維製筋痛症候群とは、全身性の筋骨格痛がみられる非炎症性の状態です。多くの特定領域の圧痛や広範囲な随伴症状を伴うことがその特徴であり、思春期前から月経後早期の女性に好発します。

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原因はわかっておらず、神経ホルモンや自律神経系の遺伝的要素が関係している可能性が示唆されています。

この疾患の特徴は、全身性の圧痛です。局所的な筋の圧痛に限定された筋膜痛とは、このように全身性という点で区別されます。繊維性筋痛症候群は圧痛点であり、筋膜痛はトリガーポイントになります。両者ともに筋肉内に組織学的な変化がみられ、活動によって悪化するという点が類似しています。

繊維性筋痛症候群の痛みは、寒冷、ストレス、過剰な運動や不活動により悪化し、温熱刺激や安静、ストレッチなどによって軽減します

以下に臨床症状をまとめます。

・疲労(身体的、精神的)
・睡眠障害(歯ぎしり、ミオクローヌス)
・圧痛点
・筋肉痛
・胸壁痛
・滑液包炎
・レイノー現象、低体温症
・呼吸困難、めまい、失神
・頭痛(後頭部痛)
・朝のこわばり(15分以上)
・異常感覚
・坐骨神経様の放散痛をともなう腰痛
・主観的浮腫
・過敏性腸症候群
・過敏性膀胱症候群
・乾燥症候群
・うつ、不安
・認知障害
・月経前症候群

また特徴的な圧痛点が、以下の18個のうち11以上に見られることも診断基準の一つです。

頸椎下部(C5-7)
第2肋軟骨結合
大転子の後面
膝内側裂隙
後頭下筋の停止部
僧帽筋
棘上筋
外側上課
臀部

関節リウマチ

関節リウマチは、原因不明の慢性の全身性炎症性障害であり、主として滑膜関節の滑膜組織に影響します。20~30代の女性に好発しますが、経口避妊薬を服用している女性はRAになりにくいとされています。

原因ははっきりしていませんが、遺伝性の要因に感染や化学物質、薬物、食物アレルギー、喫煙、ストレスのような環境要因がトリガーになって引き起こされるのではないかとされています。

主な臨床症状は、先ほど述べたように滑膜組織の障害によって起こります。症状は数週間から数カ月かけて始まり、倦怠感や疲労感、広範囲に見られる痛みがよく見られます。その後、特定の関節の痛み、圧痛、浮腫、発赤が見られるようになります。

特徴的な症状は朝のこわばりです。通常は手、肘、肩の障害が多く、手のこわばりを訴えられることがほとんどです。また、リウマチ結節や動脈炎、ニューロパシ‐、強膜炎などの関節外症状もかなりの頻度で生じます。

以下臨床症状をまとめます。

関節内症状 関節外症状
・1関節以上の浮腫
・早朝のこわばり
・再発性の関節痛や圧痛
・関節可動域制限
・発赤、圧痛
・関節痛を伴う原因不明の体重減少、
発熱、筋力低下
・これらの症状が2週間以上続く
・皮膚(皮膚血管炎、リウマチ結節、点状出血)
・目(強膜炎、角膜潰瘍、ぶどう膜炎、網膜炎、緑内障、白内障)
・肺(胸膜炎、びまん性間質性線維症、血管炎、リウマチ結節、肺高血圧症)
・心血管系(心膜炎、心筋炎、冠状動脈疾患、弁不全、血管炎)
・神経系(多発性神経炎、感覚性ニューロパシー、頚椎不安定性)

また、診断は以下の7つのうち4つが当てはまることによって確立されます。

・朝のこわばり
・3つ以上の関節領域の関節炎
・手の関節炎
・対称性関節炎
・リウマチ結節
・血清リウマチ因子
・レントゲン学的変化

理学療法の臨床において、原因不明の関節炎、予想より長引く関節炎はよく遭遇します。これらは、根底に免疫系疾患があり、その疾患が関節炎を引き起こし、長引かせている可能性があります。

免疫系疾患によくみられる症状である関節炎は、本当によく遭遇する症状であるがゆえに、確実にその鑑別することが大切です。