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半月板損傷の患者さんの治療に難渋した経験はありませんでしょうか。半月板損傷は、若い人から高齢者までさまざまな年代の人に起こり、よく理学療法の処方が出される疾患です。

半月板損傷患者の治療に難渋する原因として、その症状の多様性が挙げられます。痛みはもちろんのこと、「引っ掛かり感」や「不安定感」などさまざまな症状が出現します。

そして、その多様性は半月板の解剖学や運動学の複雑さによって作り出されます。そのため、半月板の解剖学と運動学を知り、その機能を理解していることは、半月板損傷患者の治療をスムーズに進めるために必須になります。

また、多くの解剖学書や運動学書は、その内容が十分ではありません。

そこで今回は、他の解剖学書や運動学書に書かれていない、実用的な半月板の機能について解説します。

半月板のストレスに対する対応

半月板は、大部分がタイプⅠのコラーゲン線維によって構成され、環状もしくは放線状に配列しています。環状方向のコラーゲンは、主に荷重などで生じる圧迫力を吸収し、放射状方向のコラーゲンは回旋ストレスなどで生じる「せん断力」を吸収します

この2つの繊維の組み合わせによって、膝関節にかかるさまざまなストレスに対応しています。

上からの荷重力は、半月板に伝わった後、半月板前角と後角に付着する組織、半月板間靱帯、「Wrisberg」や「Hamphry」と呼ばれる半月大腿靱帯、側副靱帯を含む半月板補強物、関節包、膝窩筋などによって脛骨面に伝達されます。

半月板の機能

半月板の機能には先ほど述べたような荷重伝達機能の他に、衝撃吸収機能、関節安定機能、関節潤滑、栄養機能があります。

衝撃吸収、荷重伝達機能

先ほど述べたように、体重によって情報から加わる荷重を大腿骨から脛骨に伝達する機能があります。半月板は圧迫力を横に伸びて伸張力あるいは円周方向の張力に変換されて吸収されます。

つまり半月板の粘弾性によって、そのエネルギーが吸収されます。ちなみに、半月板切除によって衝撃吸収能力は通常の20%まで減少します。

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また、それに伴い荷重伝達機能も果たします。半月板の内外側の荷重量はほぼ同じだが、後角は前角に比べて大きな荷重が加わることになります。関節の屈曲角度によってその荷重配分は変化し、伸展位では50%、90°屈曲位では85%の荷重量が半月板を通過します。

半月板を除去した膝では、接触圧力は正常の2~3倍になります。

関節安定機能

半月板は脛骨に対する大腿骨を適切な位置に保持することに役立っています。骨形態的には不安定な脛骨大腿関節の間隙を満たすことによって、その安定性向上に寄与します。

関節潤滑、栄養機能

半月板は、関節表面を満たす滑液で摩擦係数を低下させることによって関節の潤滑に寄与します。半月板が除去されると、摩擦係数は20%上昇します。

また、荷重で圧縮されることによって滑液をめぐらせるため、関節栄養にも寄与しています。

脛骨大腿関節における潤滑機序

先ほど述べたように、半月板には関節を潤滑させる機能があります。これは機械システムと同様であり、人の関節も摩擦係数が高くなると関節運動が障害されるため、それを防ぐためにも摩擦係数を低下させるような機能が必要になります。

人の関節は2つの異なった潤滑機能を利用しますが、これは関節運動が速いか遅いかによって変わります。そしてこの機能によって、膝関節においては摩擦係数が20%低下します。

一つ目は「弾性水力学機能」であり、これは相対的に遅い関節運動で作用します。関節内の滑液が弾性水力学的潤滑機能によって、関節面間で運動が促進されるときに、面同士が接触するのを防いでくれます。

2つ目は「滲出と圧搾」であり、これは相対的に速い関節運動で作用します。関節軟骨は水分を出し入れする役割があります。関節が速く動くと、関節軟骨からは圧搾によって水分が滲出します。

滲出液は、関節の摩擦係数を減少させ、関節運動を滑らかにします

半月板には以上のような機能があります。このようなさまざまな機能を知ることによって、半月板損傷で生じる多様な症状を理解できるようになります。