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上腕二頭筋は、一般の方でも聞いたことがあるほど有名な筋です。特に知られている役割としては、肘の屈曲運動です。しかし、臨床のほとんどで、上腕二頭筋は肘ではなく肩の問題に関係しています。

今回は、上腕二頭筋と肩の痛みについて解説します。

上腕二頭筋は肩関節の安定性に関係している
上腕二頭筋は、長頭と短頭の2つで構成されます。そのうち上腕二頭筋長頭腱は、関節窩の上結節から起始し、上腕骨頭の結節間溝を通り肘関節まで伸びます。つまり、肩関節を前方から覆うような走行になっています。

このような走行から、上腕二頭筋長頭腱は、骨頭が前方に脱臼するのを防いでいる一つの要素となることが予測されます。

つまり、肩関節の前方の安定性を保っている安定化機構の1つだと言えます。

臨床では骨頭は前方に変位しやすい

臨床において、上腕骨頭は前方に変位していることが多いです。

この理由としては、2つあります。1つ目は、肩峰と骨頭の解剖学的な位置関係によるものです。2つ目が、日常生活では屈筋群の使用が多くなるということです。通常の生活をしていると、屈筋である大胸筋の過緊張が生じやすく、骨頭が前方に引っ張られてしまうことが多くなります。

さらに、肩関節の後方にある小円筋、棘下筋は過緊張を生じやすく、骨頭の後方滑りが障害された結果として前方に変位しやすくなります

また、肩関節の安定性が低下した場合も、安定化機構である上腕二頭筋長頭腱を頼ろうとし、前方に変位する場合があります。イメージとしては、骨頭が前方に変位し、上腕二頭筋長頭腱に寄りかかろうとするイメージです。そのことで、上腕二頭筋長頭腱の張力が高まり、結果的に肩を安定させます。

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つまり、肩の安定化機構である回旋筋腱板筋の機能障害でも、骨頭の前方変位が生じる可能性があると言えます。

骨頭が前方に変位すると上腕二頭筋長頭腱に負担がかかる

骨頭が前方に変位すると、前方の安定化機構の一つである上腕二頭筋長頭腱に過剰な負荷がかかります。これが肩の痛みの原因になります。

つまり、「大胸筋や小円筋、棘下筋の過緊張、回旋筋腱板筋の機能障害→骨頭の前方変位→上腕二頭筋長頭腱への過負荷→肩の痛み」というプロセスで、肩関節前面の疼痛が出現します。

そのため、上腕二頭筋長頭腱による肩関節前面の痛みが予測された際は、このような障害プロセスを考える必要があります。そして、その人にとっては、何が一番の原因かを見つけることが大切です。「上腕二頭筋の痛み
→上腕二頭筋のマッサージ」と短絡的に治療することは危険です。

先ほど述べたように、上腕骨頭が変位するのには理由があります。その原因を取り除かずに、表面に表れている結果だけを解消してしまうと、再発する可能性が高いだけでなく、関節を痛めてしまうこともあります。

ちなみに、上腕二頭筋長頭腱の痛みを誘発する整形外科テストが、皆さんが良く知っている「ヤーガソンテスト」や「スピードテスト」になります。

特にヤーガソンテストは感度が高いと言われています。感度が高いものは除外診断に使えます。そのため、ヤーガソンテストで陰性の場合は、上腕二頭筋長頭腱の影響は少ないと考えてよいと言えます。