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理学療法士として働く中で、心血管(循環器)系疾患を患った患者さんを担当する機会は少なくありません。整形外科に勤めていても、心血管系疾患をもっている患者さんは多いです。

そのため、理学療法士として心血管系疾患について理解しておくことは大切です。

そこで今回は、「理学療法士に必要な心血管(循環器)系疾患の症状と特徴」について解説します。

心血管系疾患の症状と特徴

理学療法の臨床において、心臓リハに特化した病院でなくても、心疾患を既往にもつ患者さんを担当することは多いです。そして、実は整形疾患などで処方された患者さんの主訴の原因が、心血管系にあるということもあります。

心血管系の症状は全身性、外皮、中枢神経、呼吸器、泌尿生殖器、筋骨格、消化器とさまざまな部位に現れます。

全身 脱力
疲労感
体重変化
運動耐容能低下
外皮 褥瘡
体毛欠如
チアノーゼ
中枢神経 頭痛
視力障害
めまい
失神
呼吸器 努力性呼吸
泌尿生殖器 頻尿
夜間多尿
濃縮尿
尿量減少
筋骨格系 胸部、肩、頚部、顎、上腕の痛み
筋肉痛
筋疲労
筋委縮
浮腫
間欠性跛行
消化器 吐き気
嘔吐
腹水

以下に、この中でも臨床上、よく見られる症状について解説します。

胸部の痛みや不快感

胸部の症状は心臓に起因するものと起因しないものがあります。心臓に起因するものは、頚部、顎、僧帽筋上部、上背部、肩関節、上肢(特に左)に放散します。上腕痛は、尺骨神経の分布パターンにしたがって出現します。

心臓はC3-T4分節に支配されるため、この領域に関連痛が出現します。特に、横隔神経との関係で、C5-6領域に関連痛が生じやすいです。また、心臓に起因する胸部痛は、吐き気、嘔吐、発汗、疲労、蒼白、失神のような症状を伴うことが多いです。これらの症状がともなう場合は、レッドフラッグです。

心臓以外に起因する胸部痛は、多くの要因により生じます。例えば、頚部椎間板疾患、関節炎、不安、トリガーポイント、コカイン摂取などさまざまです。

スクリーニングにより、これらの鑑別が大切です。

動悸

動悸は、スポーツ心臓、カフェイン摂取、不安、運動などの比較的良性の状態でも引き起こされます。しかし、冠動脈疾患や心筋症、完全心臓ブロック、房室弁疾患、僧帽弁狭窄、大動脈瘤閉塞などの重篤な疾患でも生じる、注意が必要です。

動悸は生理的なものですが、数時間続く動悸や痛み、呼吸困難、失神、めまいを伴う動悸は医学的評価が必要です。また、甲状腺機能亢進症、カフェイン感受性亢進、薬物の副作用、コカインなどの薬物摂取によっても起こるため、問診が大切になります。

呼吸困難

呼吸困難は、心臓起因だけでなく、肺の病変、発熱、薬物、アレルギー、体力低下、肥満によっても引き起こされます。

軽度の場合は、エクササイズや労作後の過呼吸や呼吸中の不快感が出現します。重度になると発作性夜間呼吸困難や起座呼吸などが生じます。このときには、階段を一歩も昇れない、夜間に覚醒する、臥位でも呼吸困難がみられるなどの訴えがあります。

発作性夜間呼吸困難や突然生じる原因不明の呼吸困難は、うっ血性心不全にみられることが多いとされています。これは重力の影響により、肺内の体液を少なくすることができるためです。

特別な呼吸パターン(口すぼめ呼吸)や特定の体位(腕で肩甲帯をロックした前かがみ姿勢)によって軽減されるものは、心臓より肺に起因していることが多いです

心原性失神

失神やめまいは不整脈、起立性低血圧、換気不全、冠動脈疾患、椎骨動脈不全など、脳への血流不足を起こすことにより生じます。

起立性低血圧は、体位変換時や腹圧を高めるような身体的労作により起こることがあります。また、大動脈閉塞がある場合は、これらの動作によって、めまいが生じます。

不安や精神的ストレスにより引き起こされる、非心原性の症状は、過換気、ふらつき、めまい、吐き気などの前兆があり、その後、失神が生じます。このような前兆が見られない場合は、心臓弁や不整脈の徴候である可能性があります。

めまいは、頚椎、前庭器官由来でも生じるため、眼振や瞳孔の大きさの変化などの評価が必要です。

疲労

疲労には心臓起因性の疲労の他に、神経、筋、代謝、肺の病変により二次的に生じるものがあります。心臓起因性の場合、呼吸困難、胸部痛、動悸、頭痛のような随伴症状がみられます。また、βブロッカーは異常な疲労症状の原因になるので、注意が必要です。

臨床において、仕事量の増加に伴う血圧、心拍数上昇がみられないことが多々あります。このような場合は、エクササイズの要求に対して、心拍出量が十分に対応していないことを示唆します。

上記のような患者さんは多く、負荷量を慎重に調整しながら、心臓の反応を引き出すような運動療法が効果的と考えています。特に、高齢者に多く、このような状態が、手足の痺れや、下肢の痛み、動き始めの痛みやふらつきなど、さまざまな症状に関係していると感じています。

咳は、肺疾患のみでなく、心臓疾患によっても生じます。肺水腫や左心室うっ血性心不全の結果生じる、僧帽弁機能異常のような左心室機能異常がみられる場合には、エクササイズ、代謝ストレス、背臥位、発作性夜間呼吸困難により悪化したときに咳が生じます。

チアノーゼ

チアノーゼは血液酸素レベルが十分でないときにみられます。チアノーゼは血液学障害や中枢神経障害にもみられますが、心臓や肺の障害とともなってみられることが多いです。

浮腫

1kg以上の体重増加を伴う浮腫や足関節、腹部、手の浮腫が数日間で徐々に悪化し、呼吸困難、疲労、めまいを伴う場合は、うっ血性心不全のレッドフラッグ症状です。

他の随伴症状として、頚静脈拡張、チアノーゼがあります。この状態において、肝臓が肥大した場合に、二次的に右上半身に持続的な鋭痛がみられる場合があります。

非心原性浮腫としては、肺高血圧、腎機能異常、肝硬変、火傷、感染、リンパ閉塞、NSAIDs、アレルギー反応によるものがあります。

また、安静にもかかわらず浮腫や他の随伴症状がみられる場合には、紹介が必要です。

間欠性跛行

間欠性跛行がみられる患者さんにおいて、下肢痛とともに圧痕浮腫が認められる場合には血管疾患をともなうことが多いです。その他にも、皮膚の変色や栄養変化を伴うことが多いので、体温、末梢脈拍、皮膚温を評価する必要があります。

冷たい皮膚は血管閉塞を示唆し、温かい、熱い皮膚は炎症や感染を示唆します。

間欠性跛行がみられる場合、安静時には皮膚が正常にみえても、運動により間欠性跛行の出現に伴って、下肢遠位の皮膚に蒼白が生じることが多いので注意が必要です。また、突然発症する虚血性の安静時痛や間欠性跛行の突然の悪化は血栓塞栓症を疑います。

心血管系疾患には、以上のような症状がよくみられます。理学療法の臨床においても、よく遭遇する症状なので、整理して頭に入れておく必要があります。

冠状動脈疾患

ほとんどの心肺系の病的状態は、閉塞・拘束、炎症、膨張・拡張の3つの過程をたどります。そして、これらの組み合わせによって、胸部や頚部、背部などの疼痛が引き起こされます。このような、筋骨格系機能異常に類似した症状が引き起こされる病変は、狭心症、心筋梗塞、心膜炎、解離性大動脈などが代表とされます。

その中でも冠状動脈疾患はよく見られる疾患です。これは心臓に酸素と栄養を運ぶ、冠状動脈が狭窄し、血流がブロックされ、心筋が虚血に陥り梗塞が生じるものです。狭心症や心筋梗塞、うっ血性心不全がその代表例です。

このメカニズムには、アテローム性動脈硬化、血栓(血餅)、スパズムが関与しています。これらは遺伝子構成に加え、栄養、活動レベル、喫煙歴などの環境因子との相互作用に紀伊します。また、アテロームの形成は食生活、スパズムはニコチンやカフェインのような化学物質、不安などの感情になどがリスク要因とされます。

冠状動脈疾患のリスク因子を以下に挙げます。

・身体活動性低下
・喫煙
・血清コレステロール値
・高血圧
・年齢、男性、家族歴、人種
・肥満
・ストレス
・性格
・末梢血管疾患
・糖尿病
・アルコール

狭心症

狭心症では、心臓痛が生じます。心臓痛のメカニズムは、心筋虚血部位における代謝産物の集積の結果とされています。これは、血管内にプラークが形成されることによって、血小板が凝集します。この血小板の凝集が、血管スパズムを引き起こし、さらに疼痛増悪物質でもあるプロスタグランジンを放出することが関係しています。

また、女性において、閉経後におこるエストロゲンレベルの低下は、冠状動脈のスパズムの原因となります。

狭心症は、慢性の安定した狭心症、安静時狭心症、不安定狭心症、夜間狭心症、非定型型狭心症、異型型狭心症にわけられます。

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臨床症状は、左肩から上肢の痛みや、胸部痛、背部の痛みなどの筋骨格系障害に類似した痛みから、胸やけ、消化不良などの消化管障害に類似したような症状まで出現します。痛みは軽度~中等度であることが多く、持続時間は1~3分と短いです。しかし、重い食事や強い怒りによる発作は15~20分続きます。通常、安静やニトログリセリンによって軽減します。

また、心臓と腕神経叢、三叉神経脊髄核には関連があり、尺骨神経領域、顎周囲に関連痛を引き起こします。

そして、症状の強さは、生命予後と関係せず、痛みが強くても長く生きる場合もあれば、軽い症状で突然死ぬこともあります。

以下に狭心症の臨床症状をまとめます。

・胸部痛
・頚背部、左肩、上肢への放散痛
・歯の痛み
・胸やけ
・運動耐容能低下
・吐き気、おくび

女性に特有の症状(不安定狭心症)

・動悸
・冷気
・過度の疲労、無気力、脱力
・中位胸椎痛
・右上腕二頭筋の痛み
・ニトログリセリンによって軽減しない胸部痛
・制酸薬によって軽減しない胸やけ
・夜間に生じる呼吸困難

心筋梗塞

心筋梗塞は心筋の虚血、壊死に発展します。心筋は2つの冠状動脈とその枝から血液供給を受けます。この血管に血栓、スパズム、プラークなどが生じると、梗塞が生じます。

臨床症状としては、胸部痛、両上肢に放散する痛みや消化不良感、意識障害、発汗などさまざまです。狭心症との違いは、重度の痛みが30分以上持続し、安静やニトログリセリンなどで軽減しないということです。また、この治療のため、長期的な絶対安静や無動を余儀なくされた場合、CRPSを合併することが多いとされています。

さらに両上肢を頭上に伸ばしての仕事は、心筋梗塞を発症しやすくなることがわかっています。この肢位での脱力や呼吸困難がみられる場合には、注意が必要です。

以下に、心筋梗塞の臨床症状をまとめます。

・胸部の圧迫感
・両上肢に放散する痛み
・消化不良感
・30分以上続く狭心症
・安静やニトログリセリンによって軽減しない狭心症
・体位変化によって軽減しない梗塞痛
・吐き気
・突然の意識低下、視力低下、言語障害
・蒼白
・発汗
・呼吸困難
・脱力、感覚脱出、失神感
CRPS

臨床において、冠状動脈疾患を患った人と接する機会は多いです。以上のような特徴を知ることにより、症状の鑑別、そして、運動時のリスク管理が適切に行えるようになります。

動脈(閉塞性)疾患

動脈疾患には急性と慢性の病態があります。急性は血栓や塞栓、血管外傷、閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓性血管炎やバージャー病、レイノー病によって引き起こされます。多くは50歳以上の男性にみられ、特に下肢の血管に起こりやすい傾向にあります。

リスク因子としては、糖尿病による代謝障害が一番に挙げられます。その他にも、喫煙、高血圧、高脂血症などが挙げられます。

臨床症状は、毛の欠損が初期症状として見られ、間欠性跛行と虚血性の安静時痛は重要な症状です。

閉塞される動脈の中でも、浅大動脈の閉塞はよく見られるものです。この部位の閉塞は腓腹部痛の痛みを伴い、膝窩部や大腿下部にまで放散することもあります。鼠径部での脈拍は良好ですが、膝、足部の脈拍が消失します。

しかし、安静時は明らかな足部の循環障害が見られないことが多く、そのような場合でも、実際に運動を行ってもらうと、その徴候が確認できます。その徴候は痛み、冷感、蒼白といった虚血特有の症状となります。虚血性の疼痛は安静によって直ちに消失し、さらに体肢を下垂させ、重力を利用して血流を促すことによって軽減します。

これらの症状は、一定で再現可能であり、日によって変化することはありません

その他に注意することとしては、潰瘍形成と壊疽があります。これは切断につながる可能性があるので、早期の発見と対処が大切です。

以下に動脈疾患の特徴をまとめます。

・間欠性跛行
・安静時の灼熱痛、虚血痛
・下肢挙上によって悪化する安静時痛
・色、温度、皮膚、爪床の変化
皮膚温低下
乾いた、うろこ状の光沢のある皮膚
爪、毛の発育不足
・荷重面の潰瘍形成、および壊疽の可能性
・視覚障害
・労作性疲労

レイノー現象

レイノー現象は、四肢の小動脈や毛細血管が収縮することによって、指の一時的な蒼白やチアノーゼ、皮膚温の変化を引き起こす間欠性の症状です。これらは、冬などの低い方への温度変化や不安や興奮などの情緒変化によって誘発されます。

レイノー現象には、その基礎となる疾患があることが多いです。その中でも、強皮症や多発性筋炎、皮膚炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチのような結合組織やコラーゲンに病変が認められる疾患が多いです。その他にも、TOSのような閉塞性動脈疾患によっても起こります。

この現象は動脈障害ですが、閉塞性疾患ではなく、主として血管の攣縮と運動性障害によって引き起こされます。その原因は、寒冷刺激に対する感受性亢進やセロトニンの放出、先天性の要因が考えられています。

以下にその臨床症状をまとめます。

・指の蒼白
・チアノーゼ
・指の冷感、感覚脱出、痛み
・指の強い発赤

以上のように、動脈疾患には閉塞、攣縮、運動障害という病態があります。しかし、すべての病態に虚血という病態がともない、類似した症状が出現します。

静脈・リンパ系疾患

静脈、リンパ疾患は理学療法士が良く遭遇する疾患ですが、あまり重要視している人はいません。それは、これらの問題をあまりにも多くの人が抱えているため、普通のことと捉えているからです。

以下に、多くの人が抱えている静脈、リンパ系疾患の特徴について述べます。

静脈疾患

静脈疾患も動脈疾患と同様で、急性障害と慢性障害に分類できます。急性障害には血栓塞栓症が含まれ、慢性障害には、静脈瘤と慢性静脈不全が含まれます。

急性障害である血栓塞栓症は、表在および深部の静脈両方に起こります。表在性の血栓性静脈炎はしばしば医原性であり、カテーテルの刺入や静脈注射に合併します。

深部静脈血栓症はよく知られる病態で、成人の女性に好発します。手術後に多く見られ、特に下肢の手術後は、下肢静脈血栓の管理が大切になります。管理を怠ると、そこから肺塞栓などに至り、命に関わります。

慢性障害である静脈不全症は、静脈炎症後症候群ともいわれます。これは、弁の機能異常によって静脈潅流が減少することで、静脈圧が上昇します。その結果、慢性的な下肢の浮腫やうっ血性潰瘍などが起こります。この病態は、深部静脈血栓症へつながることがあるため注意が必要です。特に、既往に深部静脈血栓症がある場合は、定期的にモニターをする必要があります。

通常、血栓の形成は静脈うっ滞、凝固能亢進、静脈壁の損傷に関与します。また、静脈血のうっ滞は不動、筋ポンプ機能の低下、手術、肥満、妊娠、うっ血性心不全によって起こります。

その中でも女性で注意が必要なものが、血液凝固能亢進です。これは内臓や卵巣の悪性腫瘍でよく見られ、さらに経口避妊薬、エストロゲン補充療法などは血液凝固能を亢進させます

静脈疾患の症状は、その部位が表在性か深部性かによって異なります。

表在性の静脈疾患の場合、障害された静脈の走行に沿って、膨隆し、赤く、圧痛をともなう索状を呈します。一方、深部の静脈疾患の場合、無症候性であることが多いです。それでもよく見られる症状としては、血栓領域の痛みとその部位よりも遠位の浮腫です。

他の症状としては、下肢の発赤や熱感、静脈の拡張、悪寒や倦怠感をともなう微熱などが出現する場合もあります。

以下にその症状をまとめます。

表在性静脈血栓症 深部静脈血栓症
・皮下静脈の拡張
・触診できるひも状のもの
・熱感、発赤
・硬結
・一側性の圧痛や下肢痛
・一側性の浮腫
・熱感
・ホーマンズ徴候
・変色
・圧痛

リンパ浮腫

リンパ浮腫は組織間隙への過剰な水分の貯留によって起こります。基本的は、外傷、感染、放射線、手術によって2次的なリンパ閉塞で起こります。リンパ液は、最終的に静脈に流れます。そのため、静脈への移行部である静脈角に何らかの障害があった場合は、全身のリンパの流れが障害されます。

これが、第一肋骨がリンパの流れに影響するといわれる理由です。

以下にその症状をまとめます。

・足背や手の浮腫
・可動性低下、機能低下
・通常は一側性
・長時間の下垂による悪化

以上のような、静脈、リンパ系の障害は女性に起こりやすいです。無症候性の人が多いため、重要視されないことが多いですが、その背景には重篤な疾患が隠れている可能性もあります。理学療法士として、その鑑別を的確に行うことは、大切かつ必須の能力です。

今回述べたように、心血管系疾患には、筋骨格系機能異常に類似した症状が多く出現します。理学療法士として、こうした徴候を見逃さないようにするためにも、心血管系疾患の症状と特徴について学んでおくことが大切です。