スポンサーリンク

神経は、理学療法士が治療対象として扱う組織の一つです。しかし、神経に対して苦手意識を持っている理学療法士が多いのも事実です。これは、神経の解剖や機能の複雑さから生じているものだと思います。

そこで今回は、臨床に関係するような神経系の解剖と機能について解説します。

神経根の解剖

神経は脊髄から運動神経を出す前根と、感覚神経が入る後根があり、二つが合わさったものを神経根と呼びます。感覚神経は神経根より中枢で、椎間孔内でふくらんだ神経節になります。この後根神経節は、椎弓根の下方の椎間孔の上部1/3に位置し、その大きなサイズのために、圧迫性虚血が起こりやすい傾向にあります

このような理由から、孔の圧迫は運動神経の徴候や症状よりも感覚神経の徴候や症状を起こす可能性が高いとされます。

また、神経根部は中枢神経系と末梢神経系との境目になります。そして、神経根は髄膜で覆われていること、シュワン細胞が不足しており栄養の半分以上を脳脊髄液から受けていることから、その構造は中枢神経系に類似しています。この移行部は比較的保護されていない部位ですが、強い張力がかかっても神経根が脊髄から剥離することはほとんどありません。

これは、歯状靱帯の長さとそのコイル状の構造を広げることによって、張力の低減を図れているためだと考えられます。このような理由からも、神経根損損傷は牽引による張力より隣接構造物による圧迫で起こることが多いとされています。

さらに、神経根は歯状靱帯だけでなく、外側根靱帯という椎間孔の下位の椎弓根に付いている帯状の結合組織によっても、牽引力が軽減されています。加えて、大腰筋が上位4椎レベルの前枝と結合し、腰神経叢の形成に関わることによって動的に神経根の剥離の予防に関与しています

スポンサーリンク

神経根の血管支配

神経系は重量的には体重の約2パーセントですが、酸素消費量は全体の20パーセントを占めています。それほど神経系にとっては血液が大切で、わずかな血液量の変化でもその影響を受けます。そのため、神経系内の血管パターンは内側、外側の両方で構成されており、どちらが障害を受けても、お互いで補い合うようになっています。

主な血液供給は1本の前脊髄動脈と2本の後脊髄動脈によるものです。前脊髄動脈は脊髄の前方2/3に供給しますが、その直径が胸髄中央部で細小となるため、結果としてTh3~9は無血管性となります。さらにこの動脈は肋間動脈、腰動脈、仙骨動脈から補われることによってその供給が保たれています。

一方、後脊髄動脈は前脊髄動脈に対して脊髄の後方1/3に供給します。さらに前脊髄動脈と合流し、動脈叢を形成することによって脊髄周辺の血液供給に関与します。

そして、馬尾は遠位で根動脈からの血液供給を受け、近位では十字吻合動脈から血液供給を受けます。この移行部は馬尾が圧迫を受けやすい部位でもあり、無血管性の危険領域になります。

また、脊髄の静脈も特徴的です。その中でも椎骨静脈叢が重要で、この神経叢は椎間孔から出る神経根を伴います。それらの静脈は無弁であり、ほとんど圧力がかからないので、逆向きの流れが可能となっています。そのため、咳などで腹圧が高まるときに起こる、血液の突然の流入に順応する機構となっています。

神経根の血管は近位と遠位の根動脈によって供給されます。神経根内部での神経内吻合によって、脊椎の運動の際に椎間孔内で起こる神経根の運動にも関わらず、血液を適切に供給されます。

先程述べたように、神経組織は酸素の減少に影響されやすいです。例え、機械的な圧迫圧が5~10mmHgであっても、神経根の神経内微小循環のうっ血を起こし、それに伴う根性症状が出現する可能性があります。これほど神経は虚血に弱いということです。

以上にように、神経系は機械的刺激に弱いがゆえに、複雑な構造でその弱点を補っています。このような構造を知ると、神経系に由来した複雑な症状も少しは理解できるようになるのではないでしょうか。