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睡眠不足は、上位胸椎の弯曲運動障害を招きます。そのため、良質な睡眠をとることは大切です。そして、理学療法士としては「良質な睡眠とはどのような睡眠か」そして、「どのような状態が良質な睡眠がとれていない状態か」を知っておく必要があります。

今回は、良質な睡眠がとれていない場合に出現する症状とその理由に関して述べます。

生体リズムという考え方

かつての西洋医学は、「ホメオスタシス」を基本概念としていました。ホメオスタシスとは、時間に関係なく血圧や体温などを一定に調整する機能のことです。一方、「生体リズム」の概念では、ホルモンや血圧、体温などすべてにおいてリズムがあり、時間によって変動するとしています。

生体リズムは、基本のサーカディアンリズム(約24時間リズム)をはじめ、それより長いインフラディアンリズムや、逆に短いウルトラディアンリズムなどがあります。

成人の身体の機能の多くは、サーカディアンリズムをもっています。睡眠覚醒のリズムや各種ホルモン、自律神経系のリズムなどはその代表例です。インフラディアンリズムは、月や年単位のものです。月経周期や季節などがよく知られています。

そしてウルトラディアンリズムは、数時間や数分単位のものです。心臓の拍動や呼吸、REM睡眠とNonREM睡眠のリズムなどが有名です。ウルトラディアンリズムは、新生児や老人の身体機能によく認められます。

このように、生物にはさまざまな生体リズムがあります。

生体リズムはどのようにして獲得したのか?

生体リズムはさまざまな研究の結果から、宇宙への適応の所産として、効率よく生きていくために獲得したとされています。サーカディアンリズムは、太陽の光のリズムに適応した結果の産物です。その他のリズムも、月と地球の関係や太陽風、宇宙線との関係など、宇宙環境と関係があることが分かっています。

このように、生物の体は目に見えない宇宙からのシグナルに反応し、それに適応しているのです。

生体リズムはなぜあるのか?

生体リズムは、体内に備わっている生体時計によって刻まれます。時間医学では、生体時計であるための必要条件を3つ挙げています。

① 他から時刻情報を受け取ることなく、自動的に時刻を刻み続ける能力があること
② 環境(とりわけ、周囲の温度)に左右されることなく、リズムが安定的であること
③ 本当の時刻とずれたときに、時計の針を合わせることができること

そして、この生体時計は「種の保存」を有利にし、「個体の生存」にとって不可欠であるために存在していると考えられています。

例えば、植物や動物は生体時計を使って、開化の季節や交尾の時期を計っています。また、細胞の生命活動維持のためにはエネルギーの産生が必要です。そのエネルギーを効率的に利用するのに生体リズムが使われます。

生体リズムとホメオスタシス

ホメオスタシス機構は、人間の体にとって必要なものです。体のバランスが崩れたときに、正常範囲に戻してくれる役割があります。しかし、このバランスの修正には自律神経系が大きく関与しており、その崩れが大きいと自律神経系にかかる負担が大きくなります。

つまり、ホメオスタシス機構は必要ですが、その代償として自律神経系が乱れる可能性があるということです。

一方、生体リズムに合わせた生活を行っていると、基本的には体の機能は崩れません。そのため、このような生活を行っている場合は、ホメオスタシス機構が働く必要がない、つまり自律神経系に負担がかからないのです。

以上のことから、「自律神経系に負担をかけない生活=生体リズムに合わせた生活」ということがいえます。このようなことからも、生体リズム、すなわち時間医学について学ぶことは有意義であると考えます。

眠気には3つの原因がある

人が眠くなる原因として、主に3つ考えられます。それは、脳への刺激の減少、疲れ、生体リズムの3つです。

脳への刺激の減少

実は、脳は寝ている状態というものが基本になります。そこに常に刺激を加えることにより、脳を起こしているのです。その刺激によって、ドーパミンやノルアドレナリンといった興奮性の物質が出ます。逆に刺激が少なくなり、これらの物質が減少すると眠くなります。

また、GABAという抑制性の物質も関係してきます。GABAはドーパミンなどの興奮性の物質を抑制し、眠気を誘います。良質な眠りに、少量の飲酒、玄米、みそなどが良いとされるのは、これらがGABAを含むためです。

疲れ

次に、疲れが眠気を誘発することは想像つくかと思います。これには、激しい運動を行うときに分泌されるホルモンが関係します。これらのホルモンは役割を終えると、現在十数種類発見されている睡眠物質に変わります。この睡眠物質の蓄積によって眠気が生じます。

昼間に家でゴロゴロしていると、夜眠れなくなるのは、この睡眠物質があまり出ていないためです。

生体リズム

そして、最後は生体リズムによる眠気です。この眠気には自律神経系とホルモンが関与します。自律神経系は交感神経系と副交感神経系の2つに分類されます。

この2つの神経系には日内リズムがあり、朝から夕方にかけて交感神経系が強く働き、夕方から朝にかけて副交感神経系が強く働きます。このリズムによって、夕方から夜にかけて副交感神経系の働きが強くなることで眠気が生じます。

ストレスが強い時などに夜眠れないといった現象は、交感神経系が興奮しているために起こるものです。
また、メラトニンというホルモンの分泌にも日内リズムが認められます。メラトニンは眠気を誘う物質です。そして、起床後約14時間後から分泌されます。

メラトニンは光によって抑制されます。そのため、夜に明るいところで活動したり、パソコンなどの作業をしていると眠気がこないのは、メラトニンの分泌が抑制されるためです。

実は、人間の身体にはもう一つの眠気のリズムがあります。それが、午後2~4時の眠気です。

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これは、人間のルーツがアフリカにあることが関係していると考えられています。アフリカの午後2~4時は、太陽が照っており、外気温も高い状態です。人間は、この時間帯には休息しているようにリズムが刻まれたのではないかと考えられています。

以上のことから、人間は疲れや刺激の減少、メラトニンの分泌、副交感神経の活性化による夜の眠気と、生体リズムによる昼の眠気の二つ眠気が生じます。この二つの眠気は生理的なものです。しかし、この2つの生理的な眠気以外の眠気は、非生理的なもので睡眠障害や過度の疲労があることを意味します。

よって理学療法士として、上位胸椎の弯曲障害が認められた場合、まずはこの非生理的な眠気がないかを確認することが大切になります。

生体リズムと睡眠

人間には地球環境で生きていくために、体内時計が備わっています。その体内時計にそった生活を行うことは、自律神経系への負担を最小限にします。睡眠に関しても同様で、さまざまな生体リズムが関与しています。

以下に、生体リズムから考える睡眠について解説します。

サーカディアンリズム

生体リズムの中の一つにサーカディアンリズムがあります。これは約24時間周期のリズムで、人間の多くの機能に関係しています。サーカディアンリズムに沿った生活を行うことが、自律神経系への負担を減らします

体温の変化や血圧の変化などがその代表例として挙げられます。その中で睡眠に関係するものとして、自律神経系、ホルモン、体温の3つを上げたいと思います。

自律神経系は交感神経系と副交感神経系に分けられます。知っての通り、交感神経系は体を興奮させる作用があり、逆に副交感神経系はリラックスさせる効果があります。通常では、起床時から夕方にかけて交感神経系が活性化し、夕方から朝方にかけて副交感神経系が活性化します。

夜に眠くなるのは、この副交感神経系の影響も一つの要因になります。逆にいうと、ストレスや過度な運動などで交感神経系が活性化した状態では、眠れないということです。

次はホルモンに関して説明します。睡眠に関するホルモンとしてメラトニンがあります。メラトニンは眠気を誘発するホルモンで、セロトニンから作られます。そして、メラトニンは起床後14時間後から分泌され始めます。このとき、人は眠気が誘発されます。よって、起床後、約15~16時間辺りを就寝時間にすると眠りがスムーズになります。

またメラトニンは、光刺激が入ると分泌が抑制されるため、夜に明るいところにいると眠れないということが起こります。

そして、最後に体温です。人は深部体温の低下に伴って眠気が生じます。体温のリズムは夕方に向けて上昇し、早朝に向かって下がります。この上昇から下降に変化するところで眠気が起こります。

入浴によって、一時的に体温を上げることはこの体温の変化を作りやすくします。そのため、入浴を行うことは入眠をスムーズにします。

ウルトラディアンリズム

生体リズムの中にウルトラディアンリズムがあります。これは、サーカディアンリズムと比較して短いリズムで、数時間~数秒のリズムになります。呼吸や心臓の拍動などはその例です。その中でも睡眠に関しては、REM睡眠、NonREM睡眠のサイクルが関係します。

簡単に説明すると、REM睡眠は筋を休める睡眠で、NonREM睡眠は脳を休める睡眠になります。つまり、深い眠りに入っているのがNonREM睡眠、覚醒度が高いのがREM睡眠ということです。

そして、この2つのサイクルは90分周期で起こります。人は一晩で4~5サイクルを繰り返し目覚めます。目覚めが良いのは、覚醒度が高いREM睡眠時です。NonREM睡眠時は深く眠っているため、起こされると目覚めが悪くなります。この周期を考えて、REM睡眠時に起きるように工夫すると、目覚めの良い起床になります。

以上のように、睡眠にはさまざまな生体リズムが関与します。このリズムに合った睡眠を行うことが、自律神経系への負担を少なくします。

しかし睡眠には、年齢、性別、人種などさまざまな個人差があります。そのため、あなたに合った睡眠時間や就寝、起床時間を見つけることが大切です。あなたに合った睡眠とは、一日の中で非生理的な眠気がこないような睡眠と考えています。

脊柱と生活習慣の関係

睡眠ストレス、精神性ストレスは、視床辺縁系での反応を引き起こします。その反応は、脳神経運動枝を介して、脳幹、上位頚髄支配領域の筋緊張亢進を引き起こします。それによって、上位頚椎の弯曲運動が障害されます。

また同時に、脊髄下降性交感神経性インパルスが下行し、体幹四肢の自律神経随伴症状を惹起します。このとき、唯一交感神経節を有する胸髄レベルで、胸髄支配レベルの筋緊張亢進を引き起こし、胸椎の弯曲運動が障害されます。このとき、特に呼吸筋が影響を受けるため、上位胸椎の弯曲運動の障害が強く起こります。

さらに、この上位頚椎と胸椎の弯曲運動の障害は、姿勢制御系の反応によって下位頚椎のフラット化を引き起こします。

つまり、頚椎・上位胸椎の弯曲障害は、睡眠や精神性ストレスによって引き起こされるということです

次に、消化器の機能障害は内臓体性反射を引き起こします。この反射は、その臓器の支配レベルの脊柱起立筋、皮膚などに現れ、脊柱の湾曲運動を障害します。多くの内臓は、Th6以下の神経系に支配されます。そのため、消化器の機能障害は下位胸椎の弯曲運動を障害します。

さらに、体力の低下は生体構造力学的骨性支持、筋エネルギー産生変化による交感神経機能異常を引き起こします。このことで、腰椎の弯曲運動障害が生じます。

以上のように、生活習慣は脊柱の弯曲運動と大きく関係しています。そのため、もし症状の原因が脊柱の弯曲障害にあった場合、生活習慣を整えることが一番の原因治療になります。また、あまりにも生活習慣の影響が強い人は、いくら理学療法士が治療を行ってもすぐ元に戻ります。

このような理由からも、理学療法士が生活習慣について学ぶことは必須だと考えます。