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人の体温は免疫に大きく関係しており、自然治癒力を発揮するためには欠かせないものです。そもそも、体温が適正範囲にないと生命の維持が難しくなります。そのため、身体に関わる理学療法士として、体温に関する知識を持っていることは必須になります。

特に、体が体温を調節するメカニズムについて理解しておくことは、理学療法士として必須です。

そこで今回は、「自然治癒力を生かすために必要な体温に関する知識」について解説します。

体温の維持と熱産生

体温調節を学ぶ上で、体温の維持とそれに必要な熱産生について理解しておくことは重要です。

体温の維持

人を含む哺乳類は、環境の温度が変化しても一定の体温を維持することができます。そのため、このような性質をもつ動物を「恒温動物」といいます。一方で魚類や両生類などは、環境温度によって体温も変化するため「変温動物」と言われます。

恒温動物は、基本的に外の環境温度よりも高い体温を維持しています。そして、外の温度が低いときは体内で熱を産生し、逆に高いときは放散することで、平衡を維持しています。

また、体温は身体の部位によって異なります。

身体の中心部である頭腔や胸腹腔は、基本的に37℃に保たれます。それに対して体表に近い部位は、環境温度によってわずかに変化します。

これは、中心部にある脳や心臓、肝臓などの臓器は代謝が活発で熱の産生が多い上に、その周囲を筋や皮膚などで覆うことで熱の放散を防いでいるため、高温を保っています。

一般的に、化学反応は10℃温度が低下すると反応速度が1/2から1/3に減少します。そのため、中心部の器官の機能が一定レベルに維持され、体温を保つことが生命にとっては必要不可欠になります。

また、体温にも生体リズムがあり、一日の中で変動します。基本的には、午前6時ごろが最も低く、午後3時ごろが最も高いとされています。

以上のことからも、体温の測定は部位と時間違いも考慮した上で行う必要があります。

熱の産生

体温は、体内で熱を産生することと、熱を放散することでその平衡を維持しています。

食べ物から得られた栄養素は、体内で代謝され、そこから産生されるエネルギーの約75パーセント以上が熱産生に関わります。そしてその反応は、さまざまなものが関与しすることで調整されています。

 ・基礎代謝
生命を維持するために最低限必要な代謝を基礎代謝といいます。これは、一日中寝ていても産生される熱量であり、肝臓、筋、脳などが大きく関与します。

 ・筋運動
骨格筋による熱産生は、安静時でも全体の約20パーセントを占めています。とくに運動の際は、全身血流の配分が筋へ集中することで熱産生は急激に上がります。また、気温の低下でも、ふるえや筋の緊張を高めることで、筋による熱産生量は増えます。

 ・甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモンである「チロキシン」と「トリヨードチロニン」は、全身の細胞の代謝を活性化します。そのため、これらのホルモンは熱産生の増大に関わります。

 ・アドレナリン、ノルアドレナリン
これらは、末梢血管を収縮させることで熱放散を防ぎます。また、アドレナリンは代謝を促進するため、熱の放散を抑制するだけでなく熱産生を高めます。

 ・褐色脂肪組織
新生児や冬眠動物などの背部には、「褐色脂肪組織」というものが存在し、この組織は熱産生組織として働きます。血管が豊富で、細胞内のミトコンドリアなども多く含まれており、非ふるえの熱産生部位の一つとされています。

体温の維持は自然治癒力に大きく関与しているため、以上のような熱を作り出す仕組みを知っておくことは大切です。

体熱の放散

体温の維持、熱の産生と同じくらいに、体熱の放散について理解しておくことも重要になります。

体熱放散の必要性

体温は上げることも重要ですが、過度な上昇は生命を脅かします。一般的には、体温が42℃を超えると生命の危険にさらされる言われています。これは、そのような高温環境下ではタンパク質の凝固が起こるためとされています。

しかし、タンパク質の変性は通常50℃以上でしか起こらないため、発熱のみでの42℃は生命の危険はないとも言われています。通常の病気では、体温が43℃以上に上昇することはありません。そこまで高熱が出る場合は、発熱以外にも高度に全身に異常が生じている可能性が高く、意識状態の悪化や生命の危険があると言えます。

そうは言っても、高熱状態が続くことが危険なことに変わりはありません。そのようなことを避けるためにも、人の体には熱放散機構が備わっており、体温を維持しています。

体熱放散機構

体熱の放散には、さまざまな組織と機能が関与します。熱の産生に関しては、部位によってその量は異なりますが、体内を循環する血液により分配されることでその温度差は減少します。

血液は体表を流れるとき、体温よりも温度が低い外気に熱を放散します。その熱放散はいずれも物理的に行われ、以下の4つの機構によって調整されます。

 ・輻射
熱が電磁波として放散することを輻射と言います。通常、常温の物体からは赤外線として熱が放射しています。この放射量は、皮膚温と周囲の物体との温度差に比例して増えます

例えば裸体と衣服を着ているときでは、衣服を着ているときの方が皮膚温と環境温度の差が小さいため、輻射による熱放射量は小さくなります。このため、後者の方が体温の維持が容易になります。

 ・伝導
物体同士が接触している場合、物体間では熱は高い方から低い方に伝えられます。この熱の移動を伝導といいます。

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伝導による熱放散は、皮膚などが空気によって触れることにより起こる「外部伝導」と、血液と組織間で行われる「内部伝導」があります。この熱の伝わりやすさは物質によって異なり、金属が冷たく感じるのは、熱が伝わりやすく放熱量が多くなるためです。

また、脂肪組織は熱伝導が皮膚の約半分のため、皮下脂肪が多いと耐熱性が強くなります。

さらにこの熱伝導による放熱は、皮膚に接する層(限界層)が移動することで著しく増大します。そのため、同じ気温でも風があり限界層に動きが起こる場合は寒く感じ、逆に無風の場合は暖かく感じます。

 ・対流
空気は暖められると密度が減少し軽くなるので上昇し、冷やされると逆に下降します。そのため、空気は皮膚に接すると暖められ移動(上昇)し、冷たい空気と置き換えられます。このような空気の入れ替わりを対流といい、これにより熱の放散量は増大します。

対流による熱放散量は、皮膚と接する空気の温度差と対流速度に比例します。服を着ていると暖かい理由の一つは、この対流が起こらないことが挙げられます。

 ・蒸発
通常、皮膚や呼吸器などの粘膜は空気より湿度があります。そのため、ここからは常に水分の蒸発が行われています。そして蒸発の際は、水1g当たり0.585kcalの気化潜熱が身体から奪われるため、体熱の放散が起こります。

湿度が高くなると蒸し暑さを感じるのは、この蒸発による体熱の放散が抑制されるためです。

そして、水分蒸発には「不感蒸発」と「発汗」の2つがあります。不感蒸発とは、無意識化で常に行われている水分の蒸発であり、一日に皮膚表面から500~700ml、気道から150~450mlの蒸発が起こっています。

発汗

以上の4つ(蒸発に関しては不感蒸発)による体熱放散が体内の熱産生を下回った場合、体内における熱の平衡が維持できなくなります。そのときに、平衡を保つために生じるのが発汗です。

人の汗腺には、「アポクリン腺」と「エクリン腺」の2つがあります。アポクリン腺は腋窩や乳頭、肛門などに多く分布し、脂肪やコレステロール、鉄分などを多く含むものが発汗されます。

そのため、それらが皮脂と混ざり合うことによって微生物が繁殖するため、独特な臭いが生ずることが特徴です。アポクリン腺は体温調節にはほとんど関係ありません。

一方エクリン腺は、体温調整の役割を担っています。エクリン腺から出る汗は90パーセントが水分であり、その他にNaClや尿素、クレアチニン、尿酸、乳酸などが含まれています。この中でもNaClは再吸収されないため、発汗後はNaClの補給が必要です。

アポクリン腺からの発汗は、精神的刺激や痛覚刺激によって誘発され、エクリン腺からの発汗は体温の上昇によって引き起こされます。

発汗による体熱放散はその蒸発量に依存します。つまり大量の汗をかいた後、その汗が全て蒸発すると熱の放散量は著しく高くなるため、急激に体温が下がります。このような理由から、運動した後は汗をしっかり拭き取らなければなりません。

体温調節機構

生体の中心部の体温をほぼ37℃に維持するためには、熱産生と熱放散の調整が必要です。この調整は、「温度受容器」と「体温調節中枢」によって行われます。

そこで以下に、体温の調節機構について述べます。

温度受容器

温度に関する感覚神経は、皮膚の0.1~0.3㎜の深さに「冷受容体」と「温受容体」として存在しています。このうち冷受容体の方が、分泌密度が優勢になります。

また、身体内部の温度受容器は視床下部に存在し、温度の上昇によって活動する温ニューロンと、逆に温度の低下に反応する冷ニューロンがあります。温ニューロンの働きによって血管拡張や発汗などが起こり、熱放散が促され、冷ニューロンによってふるえや血管収縮によって熱放散が抑制されます。

33~35℃の範囲では、両ニューロンが活動します。

体温調節中枢

温度受容器によって得られた情報は、視床下部前部および中央核群と視索前野にある温熱中枢と視床下部後核群にある寒冷中枢に伝えられます。

この2つの中枢の相互作用によって体温は調整されます。

寒冷、温熱刺激に対する生体反応

「寒い」や「暑い」などの外部環境の変化に伴う生体反応は、ある一定温度(28~32℃)では、血管の拡張や収縮によって維持されます。

しかし、この温度より低下した場合、化学的調整によって熱産生が促されます。これには、中心部の血流量増加による大動脈弓の圧受容器への刺激、下垂体後葉からの抗利尿ホルモンの分泌抑制、心房性ナトリウム利尿ペプチドの分泌による寒冷利尿などが挙げられます。

逆に温度が上昇した場合は、発汗によって物理的に体温が調整されます。温熱環境下では、血管拡張に伴い血流が中心部から末梢部へ再分配されます。

それによって、「放射」「伝導」「対流」が促され、水分の多い汗をかきます。

また、寒冷環境下とは逆に、中心部の血流が低下し、下垂体後葉からの抗利尿ホルモンの分泌を刺激することで尿量の減少が起こります。

このような反応が起こらずに、上適応体温を超えた場合に熱射病となります。熱射病になると、体温上昇のため中枢機能に異常が生じ、意識障害が起こるだけでなく最悪の場合、死に至ります。

以上のように、身体はある範囲内であれば外部環境の変化に対応するようになっています。しかし、もし自然治癒力が低下している場合は、このような反応が鈍くなっている可能性もあります。

その結果、熱中症や低体温になりやすいという状態になります。そのようにならないためにも、自然治癒力を高めることを意識することが大切です。

今回述べたように、人間の体はさまざまなメカニズムによって体温調節が行われています。理学療法士として、以上に挙げた内容くらいは理解しておくようにしましょう。