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人の体は、皮膚や深部組織に刺激が加わると、感覚が生じるだけでなく、多様な運動および自律神経の反応を引き起こします。その中でも、自律神経反応は、われわれ理学療法士にとっても欠かせないものであり、そのメカニズムを理解しておくことは、有意義です。

こうした自律神経反応は、「体性‐自律神経反射」と言われます。これは、反射の求心路が体性感覚神経である反射を指します。

多くの体性感覚受容器は、刺激されると、自律神経機能に影響を及ぼします。しかし、中には、どんな刺激を加えても自律神経反応を引き起こさない受容器もあります。その代表的な例が、筋紡錘の一次求心性繊維と、ゴルジ腱器官からのものです。

このように、一言で体性感覚受容器といっても、自律神経との関わりは複雑です。

そこで今回は、「体性感覚と自律神経の関係性」について解説します。

低域値体性感覚受容器

人の体性感覚受容器において、皮膚および皮下にある低域値受容器は、非侵害性の外的刺激に最も簡単に反応します。また、骨格筋と腱の低域値受容器

皮膚および皮下の低域値受容器

皮膚および皮下においては、有毛、無毛皮膚における低域値受容器の特徴は似ています。

これらは、生理学的な4つの神経終末と機械受容器のユニットがあります。それは、「マイスネル小体‐RA受容器」、「メルケル盤‐SA1受容器」、「ルフィニ小体‐SAⅡ受容器」、「パチニ小体‐PC受容器」の4つです。

これらの受容器は、持続的な凹み刺激に対する順応性と、それぞれの受容範囲を持っているという特徴があります。

すばやく順応するPCユニットは、明確や境界を伴う狭い受容範囲を持ちます。また、PCもすばやく順応しますが、受容野は散在性で、広くなっています。一方、ゆっくり順応するSAタイプは、さらにSAⅠとSAⅡの2つに分けられ、前者はRAタイプ、後者はPCタイプに似た特徴を持ちます。

また温度受容器に関しては、温受容器と冷受容器の2つに分類されます。

手の無毛部分において、温受容器は、温めるとすぐに反応し、刺激が続く限り活動します。一方、冷受容器は、刺激がない状態でも一定の放電が起こっています。そして、加温刺激が加わると、その活動が停止され、加温がなくなるまで、止まり続けます。

皮膚を冷やすと逆の反応が起こります。温受容器は活動を止め、冷受容器は反応します。

そして、これらの温度受容器は、痛みを誘発するような刺激を除くと、機械的な変形には、反応
しません。

筋と腱における低域値感覚受容器

筋と腱には、筋紡錘と腱器官という受容器があります。これらの活動は、自律神経への影響はほとんどないとされています。そのため、簡単にそれらの特徴だけ述べます。

筋紡錘と腱器官の特記すべき性質として、筋活動によって生じた細胞外液の変化は、筋紡錘に影響しないというものがあります。例えば、浸透圧やpH、内因性の炎症性メディエーターや疼痛物質の変化は、筋紡錘と腱器官にほとんど影響を与えません。

関節組織における低域値感覚受容器

関節組織においては、Ⅱ群関節求心性繊維と、Ⅲ、Ⅳ群関節求心性繊維が関係します。Ⅱ群関節求心性繊維は、静止状態では活動がなく、低い域値を持っています。そのほとんどは、穏やかな局所刺激と関節内での運動によって興奮します。

また、これらは、刺激の強さよりも、刺激のタイプを感知しています。つまり、運動方向などを受け取るものであり、いわゆる深部感覚や運動感覚に関わります。

これらは、関節包の繊維膜、関節靱帯、半月板、骨膜周囲に存在し、滑膜組織と軟骨組織にはありません。また、侵害刺激や痛みにはほとんど関係しません。

一方、Ⅲ、Ⅳ群のタイプでも静止時の活動は、全体の3割程度とされています。これらには、侵害性刺激にのみ反応するもの、どんな侵害性運動によっても反応しないものがあります。また、Ⅲ群は大半が低域値ですが、Ⅳ群は低域値と高域値タイプが同じ比率で存在しています。

Ⅲ、Ⅳ群タイプは、Ⅱ群と違って、炎症物質や疼痛物質によって、機械刺激に対する活性化と感作が起こります

また、炎症物質による感作は、高域値だけではなく、低域値の感作も生じます。つまり、炎症が生じると、通常では痛みを感じないような刺激でも、疼痛として感知されるということです。この感作が、最も化学的因子の要因となっているようです。

以上のように、自律神経反応と関係する低域値受容器にも、さまざまなものがあり、それぞれの特徴があります。この特性を、臨床における現象の解釈や、治療手技に活かすことで、より思考の幅が広がるはずです。

侵害受容器と自律神経

刺激によって自律神経反応を引き起こす体性感覚受容器の一つに、「侵害受容器」があります。侵害受容器とは、強い刺激が加えられたときなど、人体が危険にさらされたときに反応する受容器です。

こうした侵害受容器は、自律神経系と深く関わっています。

侵害受容器とは

侵害受容器とは、組織に損傷を加えるような機械刺激や温度刺激、化学刺激などに反応する受容器です。通常では、このように組織が危険にさらされた場合にのみ働きます。このように、侵害受容器は、体にとって無害なものと有害なものを区別できる能力があります。

また、侵害受容器の特徴として、高い刺激域値を持っています。そのため、通常の、触られた、温かいというような刺激には反応しません。

侵害受容器は、機械的侵害受容器、温度侵害受容器およびポリモーダル侵害受容器の3つに分けれらます。このように分類されていますが、それぞれ多くの要因で、その特性が変化するため、厳密に区別することは避けられています。

皮膚、皮下における侵害受容器

皮膚、皮下における侵害受容器も、主に「機械的侵害受容器」、「熱侵害受容器」、「ポリモーダル侵害受容器」、「無反応性C侵害受容器」の4つに分けられます。

 ・機械的侵害受容器
この侵害受容器の多くは、求心性Ⅲ群繊維になります。域値が高いことが特徴であり、中等度の強度、もしくは侵害性の機械刺激にだけ反応します。温度刺激や化学刺激には影響を受けません。また、その反応は、刺激の強さによって増加します

 ・熱侵害受容器
この侵害受容器は、45~48℃の範囲を域値として、熱刺激に反応します。機械的刺激に関しては、どんなに強いものでも影響を受けません。

・ポリモーダル侵害受容器
ポリモーダル受容器は、CタイプとAδタイプの2つに分類されます。

Cタイプの侵害受容器は、無髄求心性繊維(Ⅳ群もしくはC群)に伴っています。ポリモーダル受容器は、刺激性であれば、化学物質のみではなく、熱、機械的刺激でも反応するという特徴があります。刺激がない状態では、全く活動は認められません。

また、このCポリモーダル受容器のもう一つの特徴として、「疲労」が挙げられます。この受容器では、同一点に対する刺激の繰り返しによって、反応性が下がります。

一方、Aδタイプの侵害受容器は、熱機械受容ユニットとも呼ばれます。このタイプの受容器は、C対応よりずっと少ないですが、反応性はCタイプと似ています。

 ・無反応性C侵害受容器
人の皮膚には、通常では反応するような強い機械的刺激や熱刺激でも反応しないような神経があります。それは、無反応性C侵害受容器であり、カプサイシンのような物質によって興奮します。このような化学性物質によって、機械的刺激や熱刺激に対する感受性が高くなります

筋および腱における侵害受容器

筋と腱の侵害受容器は、Ⅲ群やⅣ群といった細い求心性繊維をもちます。この受容器の終末は、基本的には自由神経終末となっています。これらの終末は、基本的に血管壁や周囲の結合組織にあり、毛細血管には全く分布していません。

筋の侵害受容器は、弱い圧力や生理的な範囲の収縮や伸張などの日常的な刺激には反応しません。一方、過剰な圧迫や伸張などの侵襲的な機械刺激には容易に興奮します。

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また、機械的な刺激だけではなく、ブラジキニンやセロトニンといった内因性の疼痛物質によって即座に興奮します。これらは、血管に対して強く影響を及ぼし、神経終末よりも低い濃度で影響を与えます。

関節の侵害受容器

関節の侵害受容器は、Ⅲ群関節終末およびⅣ群関節終末と関係します。正常な関節における受容器は、とても域値が低いものから、休眠侵害受容器と呼ばれる機械的刺激を感じないもの(サイレントユニット)まであります。

また、サイレントユニットは以下の3つに分類されます。

・動作には反応しないが、受容野をもち、動脈への興奮性化学物質の投与によって反応するもの
・動作と機械刺激のいずれにも反応しないが、興奮性化学物質に典型的な反応を示すもの
・機械的刺激も化学的刺激も反応を示さないもの

これらの受容器は全て、静止時の活動は認められません。しかし、3つ全てが、炎症物質や疼痛物質によって、機械刺激に対する活性化と感作が起こります。そして、感作によって、安静時に活動したり、歩行程度の関節運動でも活発に反応したりするようになります。
 
そのため、炎症が認められる場合は、いかに適切な関節運動を誘導しても、痛みを誘発する場合があるということです。

このように、各祖組織における侵害受容器の特徴を知ることで、臨床における皮膚への刺激や関節操作に対して応用することができます。

感作について

臨床において、関節を操作したり、筋を圧迫する際、通常では痛みを起こさないような刺激で、疼痛を誘発する場合があります。このときは、「サイレントユニット」と呼ばれる、普段はほとんど活動していないような受容器に「感作」が起こっていると考えられます。

ここからは、この感作について解説します。

感作が起こる原因

感作とは、ある刺激に対して体が感じやすくなっている状態を指します。感作が組織に起こると、先ほど述べたような、わずかな刺激で疼痛を誘発するという現象が生じます。

感作は、大きく「末梢性感作」と「中枢性感作」の2つに分けることができます。

 ・末梢性感作
炎症性物質によって感作は引き起こされます。通常、侵害受容器は高い域値を持っているため、組織が障害されるような刺激にしか反応しません。そのため、何もない状態だと、ほとんどが活動していません。

しかし、組織が損傷することで、炎症が生じると、感作が起こるため、それらの受容器は域値が低下します。

これは、損傷した組織から放出される「ブラジキニン」や「セロトニン」、損傷によって合成が増える「プロスタグランジン」や「ロイコトリエン」などの炎症性物質の影響で起こります。これらの物質は、細い一次性求心性繊維の感作を引き起こします。

また、このような状態では、無刺激でも多くの侵害受容器が脱分極を起こすようになります。そのため、安静時痛を引き起こします。

さらに、多くの侵害受容ユニットには、痛みを伝える求心性の機能だけでなく、遠心性の役割もあります。そして、侵害受容器が活性化されるときに、神経ペプチドが終末から放出され、その情報が脊髄に伝わります。

これは軸索反射と呼ばれるものです。この反射によって、他の炎症性物質の放出や合成を促し、組織の炎症を長引かせます。これも末梢感作の要因の一つと考えられています。

・中枢性感作
末梢感作は、感作が生じた侵害受容器をもつ臓器からの感覚入力を増幅します。また、増大した求心性入力を受けた以降における神経の興奮性も亢進させます。

一方、中枢性感作は、末梢性感作より上位の活動によって起こります。予測される以上の求心性刺激が中枢神経系に入ることで、中枢神経の活動性が高まります。中枢性感作に関する、具体的なメカニズムははっきりわかっていません。

しかし、「NMDA受容体」などの活性化や、神経ペプチドの合成と放出の増加などが関与していることが示唆されています。

このような感作は、痛みとは切っても切れない関係にあります。急性期には、末梢性感作が起こり、慢性期では、末梢性感作と中枢性感作が入り混じり、とても複雑になります。そのため、いかに急性期の対応を適切に行い、感作を持続させないかが治療のポイントになります。

皮膚の侵害受容器における感作の特徴

皮膚の侵害受容器は、軽度の火傷によって感作が起こります。感作が生じると、「一次性痛覚過敏」と呼ばれる、侵害性の機械的、もしくは温度刺激に対する、疼痛感覚が過剰の状態になります。

「異痛症」は一次性感覚過敏の1つです。異痛症は、軽くブラシでなでる程度の刺激で、疼痛や不快感を引き起こします。

また、からし油などの化学的刺激によっても、皮膚の侵害受容器は感作を起こします。

損傷部位における痛覚過敏を、一次性痛覚過敏と言うのに対し、損傷部位周囲に生じる痛覚過敏は、「二次性痛覚過敏」と呼ばれます。

二次性痛覚過敏に関しては、末梢感作よりも、中枢感作の影響が大きいとされています。

筋と腱の侵害受容器における感作の特徴

筋と腱では、「機械的刺激」、「虚血」、「炎症」、「トリガーポイント」によって感作が生じます。

 ・機械的刺激
急性の強い機械的刺激では、筋や腱の感作が起こります。これは、機械的な力による筋の侵害受容器の興奮に加えて、血管や筋線維の損傷にともなう化学物質による感作も起こります。

このような外力だけでなく、普段では経験しないような強度の運動や持続的な筋の収縮でも感作が起こります。このような刺激は、筋線維の破壊と腫脹を伴う壊死性炎症と、細胞外空間の細胞浸潤が起こります。

このような変化は、特に、持続的な遠心性収縮を伴うような運動で生じます。

筋肉痛は、通常、不慣れで強度の強い運動を行って10時間ほど経過してから起こります。この理由に関しては、さまざまな仮説が提唱されていますが、はっきりした答えは出ていません。

 ・虚血
安静時に、筋に虚血が生じても痛みは出現しません。しかし、虚血している状態で、筋を収縮させると疼痛が生じます。これは、虚血によって放出される、ブラジキニンなどの物質による影響だと考えられています。

 ・炎症
炎症による感作は、炎症性物質の影響によって生じます。炎症性感作の特徴は、不規則で間欠的な放電であり、このことが自発痛を引き起こすと考えられています。

また、圧痛の増強はⅣ群繊維に関連する受容器の感作であるとされています。一方、自発痛と異常錯感覚は、主にⅢ群繊維の影響によって起こると考えられています。

 ・トリガーポイント
トリガーポイントとは、痛みがあり緊張した筋が過敏になった状態を言います。局所の圧迫刺激によって、局所性の単収縮性反応や関連痛が引き起こされます。トリガーポイント形成のメカニズムは、明確になっていませんが、筋の損傷によって、細胞内に貯蔵されたカルシウムが放出されることで、局所的な拘縮と低酸素状態が生じると考えられています。

関節の侵害受容器における感作の特徴

関節の侵害受容器の感作は、安静時痛や、可動範囲内での疼痛誘発を引き起こします。これは、炎症による、神経の自発的な放電誘発と、サイレントユニットの活動によるものです。

サイレントユニットを含む、高域値の求心性繊維は、炎症の誘発から2~3時間で明らかな感作が生じます。そして、さらに増強して、何時間も持続します。一方、低域値ユニットのⅡ、Ⅲ群は、炎症開始後、1時間以内に活動が亢進し、炎症の後半ではほとんど感作は消失します。

今回述べたように、体性感覚と自律神経にはさまざまな関係性があります。理学療法士として、こうした体性感覚と自律神経のつながりを理解しておくことは非常に重要です。