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理学療法士の世界において、「原因」を治療しているのか「結果」を治療しているのかということはよく話題に上がるかと思います。東洋医学でも同様で、「原因に対する治療」と「結果に対する治療」は明確に分けられています。

東洋医学では、診断に「証」というものが使われます。これは西洋医学でいう診断名のようなものであり、証は病態を表します。そして、その証の中でも、「原因」、つまり病気の本質は本証といい、一方、「結果」として現れている症状は標証といいます。

また、東洋医学には「異病同治」や「同病異治」という治療に対する特殊な考え方があります。

東洋医学について学ぶ際には、こうした東洋医学の病気に対する考え方について理解しておくことが大切です。

今回は、「東洋医学の病気に対する考え方」ついて解説します。

本証と標証

本証は、病気の本質であり、先ほど述べたように病気の根本的原因のことを指します。つまり、本証は一つでありさまざまな症状が出現していても、その本証がもとになって出ていると考えます。本証の特徴としては、病因となるもの、根本的で古くからあるもの、病位は深く(臓腑など)にある、というものがあります。

一方、標証は本証から生まれる症状であり、その証はさまざまです。つまり、本証は一つですが、標証は1つとは限らず、複数の漂証が現れることも多いということです。標証の特徴としては、症状として現れるもの、後発的で新しく現れた病態、病位は表面(皮膚や筋肉など)にある、というものがあります。

また、複数の標証はそれらが相互に関係することによって、他の新たな標証を作り出すこともあります。

このように病気は、原因と症状の因果関係が複雑に積み重なって成り立っているものが多く、どの段階に対して治療を行うかでその効果は大きく変わります。もちろん、より本証に近いところに対して治療を行った方が効果は高いです。

これは西洋医学でも同様のことがいえます。

例えば膝痛の患者さんを例に挙げます。一つの仮説として、以下のような仮説を立てます。

「膝痛→大腿筋膜張筋のスパズム→骨盤帯による姿勢制御不良→脊柱の弯曲障害→自律神経系の機能不全→睡眠不足」

このような場合、膝痛や大腿筋膜張筋のスパズムは標証であり、睡眠不足が本証となります。つまり、根本的原因は睡眠不足であり、膝痛や大腿筋膜張筋のスパズムはその結果であるといえます。そのため、より睡眠不足に対して治療を行った方が効果は高いです。

以上のように、東洋医学でも本証と標証といったように、原因と結果を分けて考えています。

実際の治療

では、本証に対してしか治療しないのかというと、そうではありません。実際は「標本同治」といって本証と標証を同時に治療することがほとんどです。

なぜならば、本証は先ほども述べたように根本的で古くからある病態であるため、治癒に時間がかかります。つまり、本証が治癒するまで、標証である症状は出現し続けるのです。そのため、本証への治療を行いつつ、標治も治療し一時的な症状の緩和を図るような、標本同治の治療がほとんどというわけです。

これは、理学療法の現場でも同様です。明らかに睡眠不足が原因といっても、その改善には時間がかかりますし、そもそも患者さんは膝痛などの症状を改善してほしくて病院に来ているのです。

それなのに、「睡眠不足が原因だから睡眠不足を治しましょう」といわれても納得するはずがありません。そのため、一時的に膝痛の軽減も図りながら、睡眠不足の改善も行っていく方が患者さんも納得した治療が行えるのです。

以上のように、東洋医学でも西洋医学でも、原因と結果を分けて考えることは重要です。最近では、即時効果ばかりに目がいき、原因を考えることをしない理学療法士が多いように感じます。

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あなたが今行っていることは、本証に対する治療、つまり「原因に対する治療」なのか、標証に対する治療、つまり「結果である症状を緩和するために行っている治療」なのかということを考えて治療を行うことが大切です。

異病同治と同病異治について

西洋医学では、多くの場合「この鍵穴にはこの鍵」というように、一つの病気に対しての治療法が決まっています。これは、感染症などの治療で特に効果を発揮したため、西洋医学の中心となっている考え方です。一方、東洋医学は「異なる病気なのに同じ治療、同じ病気なのに違う治療を行う」ということが多々あります。

これを「異病同治」「同病異治」といい、東洋医学の一つの特徴でもあります。

以下に、東洋医学の考え方では、なぜこのようなことが起こるのかについて解説します。

異病同治

東洋医学では、表面上に現れている症状を治療するのではなく、その大元の根本的原因を治療することが重視されます。東洋医学では前者を標治、後者を本治といいます。一方、西洋医学では多くの場合、表面上に出ている症状に対して治療を行います。いってしまえば、表面上に出ている症状を押さえこんでいるということです。

実際、表面上に現れているさまざまな症状は、一見無関係に見えても、もとをたどれば一つの原因から起こっているということが多いのです。そのため、表面上は違う病気に見えても、原因は同じという場合が多いのです。

東洋医学では、この共通の原因を治療する本治が重要視されているため、表面上は異なった病気でも、同じ治療を行う異病同治ということが起こるということです。

実は、西洋医学でも同じような考え方ができます。これは、還元論的思考と全体論的思考という言葉で説明できます。

例えば、膝が痛い人がいるとします。還元論的思考では、まず膝の状態を確認し、そこからさまざまな因子を考慮し、その原因を追究し、治療を行います。

一方、全体論的思考では、「そもそも人の下肢が痛くなるのはなぜか?」ということを考えます。そして、例えば「下肢に痛みが出るのは重力に適応できていないからだ」考えると、次に「重力に適応できていない状態とはどのような状態か」を考えます。そして、「では重力に適応できる状態にすると下肢の痛みは消えるはずだ」と考えて治療します。

つまり、膝の痛みであっても、足の痛みであっても、「重力に適応できる状態を作る」という治療になるということです。

これは東洋医学でいう異病同治と同じことかと思います。

同病異治

同じように考えて、表面上に出ている症状が同じでも、根本的原因は違うということも起こります。

これも西洋医学でも同じように考えることができます。

例えば、高血圧の人がいたとします。西洋医学では、高血圧という表面上に現れた症状に対して降圧剤などの薬が処方されることが多いです。

しかし、高血圧になった原因はさまざまです。その原因は、精神的ストレスかもしれないし、食事の偏りかもしれません。同じ高血圧でも、前者ではストレスケアという治療が必要ですし、後者では食事指導という治療が必要です。

普通に病気の原因を考えていくと、このような考え方は自然にしているはずです。

西洋医学では、初めから表面に現れている症状を抑えようとするため、このような考え方に行き着きません。もちろん、西洋医学のように、取り敢えず症状を抑える必要がある場合もあります。しかし、理学療法士が対応する患者さんの多くは、その例に当たりません(スポーツ選手などで試合を直前に控えている場合などは別です)。

そのため、理学療法士がこのような東洋医学の考え方を学ぶことは十分意義があると考えます。