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腰痛は多くの全身性疾患に併発します。腰痛は、多くの人が経験する症状であるため、全身性疾患に由来したものの中で最も見逃されやすいものです。

そこで今回は、腰痛を引き起こす可能性がある全身性疾患について解説します。

腰痛を引き起こす疾患はさまざま

腰痛は、癌、心臓病変、腎臓病変、消化管病変、婦人科病変によって引き起こされます。もちろん、整形外科で理学療法を処方された患者さんの多くは、運動機能障害に起因した痛みです。しかし、稀に上記のような全身性疾患に由来した腰痛の患者さんもいます。このときに、理学療法士がいかに早く気づくかが重要になります。

腰椎への転移性病変、前立腺癌、精巣癌、膵臓癌は腰痛を引き起こします。傍脊椎静脈叢を経由し、腫瘍が広がるため、脊椎の転移性病変は高頻度にみられます。腰椎へは前立腺癌からの転移が多くみられます。

以下にその特徴を示します。

前立腺癌 精巣癌 腫瘍
・尿路感染、坐骨神経痛
・転移による腰部、股関節、下肢の症状
・下血、突然の発熱、悪寒、排尿・排便障害
・50歳以上の男性
・39歳以下の男性
・無痛性のしこり、睾丸の重だるさ
・下腹部や陰嚢のうずき
・急性胃痛
・転移による胸椎、腰椎、鎖骨下、頚部、肩の痛みやしこり
・呼吸器症状、消化管症状
・進行性で夜間に強い
・活動レベルと無関係
・脊髄圧迫による脊髄症状

心臓病変

腹部大動脈瘤、細菌性心内膜炎は腰痛を引き起こします。
以下にその特徴を示します。

腹部大動脈瘤 細菌性心内膜炎
・60~70代男性
・腰椎部の深部のうんざりするような痛み
・冠動脈疾患、間欠性跛行
・腹部の拍動性の塊
・末梢脈波の減弱、消失
・関節痛、関節炎などの筋骨格系症状(最初にみられることが多い)
・高齢で心雑音、人工弁の既往
・背部痛、可動域制限、脊椎の圧痛
・ヘルニアに類似した症状(下肢の挙上、咳、くしゃみにより悪化する下肢の放散痛)
*神経学的障害はなし

腎臓病変

急性腎盂腎炎、腎周囲腫瘍、腎結石症、尿管疝痛、尿路感染は腰痛を引き起こします。腎臓および泌尿器障害では、骨盤、側腹部、腰部の痛みに加え、全身性の症状を伴うことが多いです。また、外傷の病歴や尿路感染の既往なども重要な手がかりになります。

以下にその特徴を示します。

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急性腎盂腎炎 腎結石症 尿管仙痛 尿路感染
・一側、両側の肋骨領域の疼くような痛み
・発熱、悪寒戦慄、側腹部の圧痛
・側腹部や腸骨稜に放散する背部痛
・高カルシウム血症に関連した疾患の既往
・感染、尿うっ滞、脱水、カルシウムの過剰摂取
・間欠性
・吐き気、嘔吐、発汗、頻脈
・側腹部の筋スパズム
・血尿
・頻尿、切迫尿、排尿困難、血尿などの泌尿器症状
・無症候性の症状もあり

消化管病変

急性膵炎、小腸疾患(クローン病、過敏性腸症候群、腫瘍による閉塞など)により、腰痛は引き起こされます。通常、消化管に関連する症状として、下痢、食欲不振、食後の痛み、原因不明の体重減少が見られることが多いです。

痛みは最初、筋の緊張を緩和させるような温熱刺激により軽減し、前屈位、座位、臥位で動かないでいるとさらに軽減します。このような特徴が認められる場合は、注意が必要です。

以下にその特徴を示します。

急性膵炎 小腸疾患
・中背部~L1領域へ放散する上腹部痛
・膵頭部痛は脊椎の左側、膵体部、尾部は右側の症状
・交互に生じる腹部痛と背部痛
・消化管症状

婦人科病変

婦人科病変は骨盤や腰痛、不快感を引き起こす可能性があります。腰痛を引き起こす婦人科疾患は、子宮の後傾、卵巣嚢腫、子宮筋腫、子宮内膜症、骨盤炎症疾患、膀胱瘤、直腸瘤、正常な妊娠などが挙げられます。

月経痛は直腸、下位仙椎、尾骨に関連痛を起こします。また、腫瘍、しこり、子宮内膜症は、神経叢やその枝を障害し、激しい灼熱痛を引き起こします。

慢性の婦人科疾患の既往、性的暴行、性感染症、子宮外妊娠、子宮内避妊器具の使用、排尿困難、最近の妊娠中絶の病歴は確認する必要がある。特に、骨盤痛を伴う背部痛や、月経に関連する背部痛は注意が必要です。

以下に婦人科病変の臨床徴候と症状を示します。

・無月経、月経不順、月経障害の既往
・乳房の圧痛
・吐き気、嘔吐
・慢性の下痢
・排便痛
・発熱、寝汗、悪寒
・おりものの既往
・異常な子宮出血:月経が遅れ、出血が持続、不規則、長い月経期間、月経後の出血

以上のように、腰痛はさまざまな疾患から引き起こされる可能性があります。
理学療法を処方された患者さんで、このような全身性疾患に起因する腰痛を呈する場合は少ないです。しかし、実際にこのような患者さんを担当した場合に的確に見抜けるように、鑑別診断の基本的なことは知っておく必要があります。