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腰椎はその骨構造上安定性が高いと考えられます。ほとんどの動作で、腰椎は動作の中心近くにあるため、高い安定性が求められます。動作時は、いくら骨構造上安定が高いといっても、その周囲の組織によってさらなる安定性が確保される必要があります。

そこで今回は、動作時の腰椎の安定性に関わる構造と機能について解説します。

靭帯による安定性

腰椎には数多くの靱帯があります。前縦靱帯、後縦靱帯、黄色靱帯、棘上靭帯、棘間靱帯はその主な靱帯になります。靱帯は損傷を受けやすく、関節周囲の細動脈網から血液供給をうけているものの、基本的には靱帯内は血管が乏しいため、損傷すると治癒しにくい組織です。

また、その生態学的特性から、ゆっくりとした負荷がかかった場合は骨付着部の剥離が、急速な負荷がかかった場合は中間部の損傷が起こりやすい傾向にあります。

椎体間関節では、前方は前縦靱帯、後方は後縦靱帯、椎間関節では黄色靱帯、棘間靱帯、棘上靭帯により、その安定性を支持されています。前縦靱帯は椎体前面の垂直分離に抵抗し、屈曲を制限します。また、椎間板の前方を補強するように作用するため、脊柱伸展時に損傷されます。

さらに、前縦靱帯は交感神経幹の灰白交通枝から神経支配を受けるため、痛みの原因となりえます

一方、後縦靱帯は脊柱管の内後側を走行し、脊柱の過度の伸展を防止しています。また、椎間板と接合しますが、椎体の背側表面には前内椎体静脈叢の一部である椎体静脈が間にあるため接合しません。さらにこの靱帯内ではサブスタンスPとエンケファリンが発見されており、痛みに対して極度に過敏なことが予測されます。

また、黄色靱帯はその名の通り弾性があり、体幹の屈曲によって軟部組織が脊柱管内に入り込むのを防いでいます。屈曲時にやや伸張されますが、とくに強い制限因子にはなりません。屈曲位では最も薄くなりますが、伸展位では短縮して厚くなり、より多くの空間を占めるようになります。そのため、椎間板が狭小化した状態ではさらにその狭小化を強め、脊柱管狭窄症の要因となります。

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筋による安定性

腰椎の筋による安定性は、主に短い筋によって確保されます。例えば多裂筋は回旋時に屈曲の動きが起こらないように作用し、純粋な軸回旋を維持するために回旋動作時に安定性を発揮しています。その他の短い筋も同様に作用し、とくに単分節筋は筋紡錘の密度が高く(他の背筋の約6倍)、固有感覚変換器として感覚性の能力が高いとされています

また、大腰筋はその走行から、腰椎の垂直方向への圧迫力も加えるため、腰椎を安定させる作用があります。その他にも腹筋群はコルセット筋として、体幹部を安定させる作用があることで有名です。

胸腰筋膜による安定性

胸腰筋膜は厚く、強靱で、脊椎の安定性に寄与しています。3層構造で垂直、斜め、垂直線維がコルセットのように体幹を包み、3層はそれぞれ大殿筋、広背筋、大殿筋と体幹外側で付着します。また、垂直線維は、腰方形筋の筋膜から移行し、腰椎横突起の前内側面に付着します。

そのような構造から、この筋膜は重い物を持ち上げる動作のときに、椎体に発生するせん断力を少なくする役割があるとされています。これは荷物を持つときに、胸腰筋膜に覆われた腹筋と背筋が収縮することによって胸腰筋膜も収縮し、その収縮が体幹の屈曲を防ぎ、腰椎のせん断力を減少させるということです。

体幹屈曲時は、初期は筋によって支持されますが、その角度が大きくなると、靭帯による支持が優位となります。この状態では筋は弛緩し、胸腰筋膜はそれ以上の屈曲に対する主たる抵抗因子となります。

以上のように、腰椎はさまざまな構造と機能によってその安定性が保たれています。これらのどれかが崩れると、その安定性は低下することになります。腰椎は構造が複雑なため、一つ一つを鑑別することは難しいかもしれませんが。

しかし、身体の専門家として、その人の問題点を「体幹の安定性低下」という安易な言葉で片付けないようにすることが大切です。