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東洋医学では、西洋医学と異なった概念で身体を捉えています。そのため、その診察方法や治療方法も異なります。例えば、東洋医学では診察に「望・聞・問・切」という4つの方法が使われます。

これは、目で見、耳で聞き、鼻で匂いを嗅ぎ、問診をし、体に触って、総合的に身体の状態を把握するということです。基本的には西洋医学と考え方は同じですが、その中でも特殊なものもあります。

特に舌診は、西洋医学では実施しない方法です。ただ、理学療法士が舌診をできるようになると、さまざまな体の機能を予測することができるようになります。

今回は、「舌診から得られる情報」について解説します。

舌の構造

舌は横紋筋からなる器官であり、食べ物を咽頭に送り込む、味を感じるなどの役割があります。その表面は粘膜におおわれ、多くの小さい隆起があります。この隆起は茸状乳頭と糸状乳頭と呼ばれ、前者は内部の毛細血管によって舌色を作り、後者は脱落細胞や、粘液、老廃物、食べ物カス、細菌などが積み重なり舌苔を作ります。

また、舌の裏側には舌小体の両側に大きな静脈があり、この静脈を舌脈といいます。また、舌の運動は脳神経によって支配されています。

舌象

舌象とは、先ほど述べた、舌の形や色、舌苔の性質と色、舌脈、舌の運動などの総合的な組み合わせで現れている現象です。舌の形は全身の栄養状態、水分代謝などを示し、舌の色は主として血液循環を示します。

そして、舌苔の厚さは病態の軽重、色は病気の性質を表します。例えば、舌苔が黄色だと炎症や代謝亢進が疑われ、白いと逆に代謝低下が疑われます。また、舌の運動性の低下は脳神経系の障害が疑われます。さらに舌脈には循環器系の影響が現れ、特に冠動脈の状態が影響します。

また、舌のどこに異常があるかによって、どこの臓器に異常があるかの予測もつけることができます。舌尖と呼ばれる、舌の先は心肺、舌の中心である舌中には脾胃、舌中の両脇である舌辺には肝胆、舌の奥の舌根には腎大腸の状態が現れるとされています。

例えば精神的ストレスが強くかかっている場合、精神活動に関係ある心が影響を受けます。
そのため、その影響は舌尖に現れ、舌尖が赤くなったり、舌乳頭が拡張しぶつぶつができたりします。これは自律神経系を重要視する私はよく確認する所見です。

舌診というと少し難しい感じがしますが、以上の例のように簡単に使うこともできます。しかし、舌を見せることに抵抗がある患者さんもいますので注意してください。

舌の状態から判断できること

舌診を覚えると、さまざまな体の機能を予測することができるようになります。特に、自律神経と栄養状態、心機能、循環状態、病気の重症度は、理学療法士の臨床に応用しやすいものです。

自律神経の状態

交感神経が優位になっている舌には、ある特徴があります。それは、「舌先に赤い点があるかどうか?」ということのみです。舌尖部に赤い点々がある状態を「紅点舌」といいます。

紅点舌は拡大した茸状乳頭によって、特に舌尖に赤点が見られる舌のことをいいます。この状態は体に熱がこもっているときに、血管が拡張し血流が早く巡り、舌の粘膜と微小血管が充血することによって起こります。

具体的には、高血圧や精神不安、不眠症などの交感神経系が興奮している状態や夏風邪、急性伝染病、ウイルス感染症、胆のう炎などの病気でよく見られます。

私は臨床において、自律神経系を重要視していますので、この状態はよく確認します。

また、東洋医学的には「熱証」「実証」を表しています。熱証は先ほど説明したとおりですが、実証とは病邪も激しいが抵抗力も充実している状態であり、急性炎症などがその例として挙げられます。

紅点舌が認められる多くの場合は、ストレスなどで交感神経系が興奮しています。そのため、生活リズムを整え、休息と運動のバランスを適度に保つことによって、自律神経系のバランスをとるようにすることが一番の改善法になります。

重要ですがその判断方法がはっきりしない自律神経系の機能も、舌を見ることによってある程度判断することができます。しかも、紅い点があるかどうかを確認するだけという、とても簡単な方法です。

このように舌をみることは、理学療法士にとっても意味のあることです。もしあなたの担当している患者さんで、交感神経系の興奮が疑われる人がいる場合、舌を確認してみてください。その多くは舌に紅い点が認められるはずです。

栄養状態

舌から、全身の栄養状態を予測することもできます。具体的には、舌のひび割れ状態を確認することで、ある程度の栄養状態を把握することができます。

舌面に縦横の裂紋が多くあるものを裂紋舌といい、主に栄養状態の不良を表しています。舌は粘膜が薄く、表面にある乳頭が栄養不良で委縮し倒れてしまうと、裂紋の状態になります。裂紋部位は痛みや味覚に影響が出ることが多いです。また、この舌には舌質が赤い状態と薄色の状態の2つがあります。

舌質が赤いのは主に気陰両虚であり、この状態は全身の気と体液が不足した状態であり、簡単にいうと元気がなくなったうえに、熱性の病態が起こり体液も足りていない状態のことです。

一方、舌質が薄色なのは気血両虚であり、この状態は全身の気と血が足りない状態であり、簡単にいうと全身に栄養がいっていない状態です。

そして裂紋舌は、具体的には、ウイルス感染症、細菌感染症などの後期や高齢者、そして、辛いものや熱いもの、乾燥したもの、利尿剤などを飲み過ぎると起こりやすくなります。

これらは東洋医学でいう「熱証」の人に多いです。熱証とは代謝が亢進し体に熱があったり、あるいは体温上昇や炎症が起こっている状態が含まれます。これに対して、代謝が低下し、体が冷えている状態を寒証といいます。

慢性の栄養不良は、脾と胃の消化、吸収機能の問題によって起こります。裂紋舌が認められる場合は、冷たいものや辛いもの、酸味のあるものなど刺激の強いものを避け、胃にかかる負担を減らすことから始めてみてください。

心機能

心筋梗塞や高血圧など、心臓に問題をもつ患者さんは多いです。その影響は運動機能にも大きな影響を及ぼします。筋が働くにはエネルギーが必要で、そのエネルギーの産生には血液供給が必要ですし、神経系はその特徴から酸欠に敏感です。このように、心機能は体を動かすということの全ての基本になります。

理学療法士として、心機能の判断材料は、心拍数や血圧などがメインであり、細かい評価は医者や専門の理学療法士しかできません。

そこで以下に、舌を見ることによって心機能の状態を把握する方法について解説します。

・舌脈を診る
舌の裏側には、真ん中に舌小帯があり、その両脇には青紫色の舌脈があります。通常、舌小帯の片側に1本ずつあり、長さは舌小帯の根部から舌尖まで、太さは約2.5㎜以内です。

この舌脈は心機能の状態を表しており、心臓の駆出力が弱くなり、全身の血流の流れが悪い、などの状態になると、その静脈の圧力が高まり拡張します。そのため、舌脈の異常程度から心機能を予測できます。

多くの異常は、正常と比較して著名に太く、周りの微小血管も曲がり腫れ、色が黒い状態になります。

・異常の原因
このような異常は、心弁膜症や高血圧、肺原性心臓病、狭心症、心筋梗塞などの病気がある可能性を示しています。舌脈の所見と合せて、唇や爪のチアノーゼや不整脈、足の浮腫などを確認するとよりその判断の正確性が増します。

他にも胸痛、呼吸困難、発汗、嘔吐、生あくびなどの症状には注意が必要です。

またこの状態は、東洋医学では「心脈瘀血証」といいます。これは、先ほど述べたことと同じで、心臓の駆出力が弱く、血の巡りが悪くなっている状態を表しています。

このような場合、血管が硬くならないように、そして心筋の収縮力を高めるような生活習慣を心がけることが大切です。具体的には、規則正しい生活、軽い運動を心がけ、怒り、過食、喫煙、ストレスなどを避けることが大切です。

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以上のように、舌の裏側を見ることによって心機能の状態を把握することができます。舌の裏側というと少し見にくい感じがしますが、まずはあなた自身の舌脈から観察し、その状態を確認してみてください。そして、家族など身内の方の舌脈と比較し、その違いを感じてみてください。

循環状態

舌は全身の状態を表しています。そのため東洋医学の診断法の一つに舌診があり、東洋医学の概念を持っている治療家の多くは、舌診によってその人の体の状態を予測します。舌を見ることによって五臓六腑の状態やその人の体質までわかるとされています。

そこで以下に、舌体の色から得られる情報について解説します。

・舌体の色からわかること
舌体から主に読み取ることができる情報は、全身の循環状態になります。簡単にいうと、舌体の色は薄赤色が正常であり、赤い場合は熱がこもっている状態、白い場合は全身の体液の流れが悪い状態、青、紫色は血液の循環が滞っている状態を表しています。

つまり、舌体の色を見ることによって、冷えやすい体質かどうかなどがわかります。例えば、寒冷療法を行う際、アイシングによって症状が悪化する人がいます。そのような場合、事前に舌体の色を確認することによって、その患者さんにとってアイシングを行うことが良いことかどうかの判断材料になります。

また、その体質から控えた方と良いものや、積極的に摂った方がよいものなどの食生活のアドバイスにもつなげることができます。

・舌体色の異常
舌体色の以上には、いくつかのパターンがあります。そして、それぞれで予測される問題点が異なるため理解しておく必要があります。

・淡白舌
舌の色が淡白である状態を指します。これは水の巡りが悪い状態であり、余分な水分が体にたまっていることを意味します。そのため、冷え症や浮腫みやすい人などによく見られる舌象です。また、ひどい貧血や低タンパク性浮腫を伴う人もこのような舌になります。

このような状態は、東洋医学では「陽虚」といわれます。その症状は耳鳴り、腰痛、下半身の脱力感、多尿、精力減退、不妊、冷え症などが同時にみられるといわれています。つまり、加齢によって起こるような現象が起こるということであり、老人に多く見られる特徴だといえます。

・淡色舌
舌の色が薄い状態を指します。これは血液の循環が悪いことを意味します。

・紅舌
舌の色が正常より赤いくなっている状態を指します。これは体に熱が溜まっている状態であり、熱で血管が拡張し血流量、速度が増しているために、舌体が赤く腫れてしまいます。

また、病原体の侵入による免疫系や代謝の亢進によってもこのような舌になります。
つまり、このような舌が見られた場合、体のどこかで炎症が起こっている可能性があるということが予測されます。

・暗紅舌
舌の色が赤黒い状態を指します。これは、熱がこもっているだけでなく、血液の流れが滞っている状態です。血液の流れが悪いために、酸欠状態となっているか、熱によって血液の濃度が濃くなるとこのような状態になります。

また、二酸化炭素濃度や老廃物などの濃度が高くなることによっても、このような舌象になります。例えば、ウイルス感染症や腸チフス、流行性出血熱などでよく見られる舌象です。

・紫斑舌
舌の色がやや淡く、青と紫が混じった色であり、暗い紫斑が見える状態を指します。これは血液の流れが悪くなっている状態です。血液の流れが遅くなる、粘度が濃くなる、末梢血管抵抗が高くなるなどの状態で微小循環が悪くなり、栄養障害と代謝障害が起こるため、このような状態になります。

肝硬変や腫瘍、癌、外傷または生理痛、慢性痛などでよく見られる舌象です。

以上のように、舌体の色を見ることによって、主に全身の循環状態を予測することができます。全身の循環状態を把握することによって、例えば、局所の炎症が見られる場合でも、寒冷療法を行ってよいかという判断材料の一つになります。

ただ舌の色を見るだけであり、明日からでも使える技術だと思います。冷え症や寒冷療法に抵抗を示す患者さんを担当している人は、是非舌の色を確認してみてください。

病気の重症度

その人の病状が重いか軽いかを判断するのは、簡単ではないと思います。例えば、レントゲン上で関節の変形が進行していることや、MRI上でヘルニアが神経根をどれくらい圧迫しているかなどは判断つきます。

しかし、体全体としてその人の病状がどれくらい重症なのかを判断するのは難しいです。確かに、見た目の雰囲気などで何となく予測がつくことはあります。

そこで以下に、舌をみることによってその人の体全体の病状の重さを判断する方法を解説します。

・舌苔
舌体の表面は粘膜に覆われており、数多くの小さな舌乳頭という隆起があります。この隆起は茸状乳頭と糸状乳頭に分けられ、茸状乳頭は毛細血管の状態を表します。その一方、糸状乳頭は、そこに脱落細胞や、粘液、老廃物、食べ物カス、細菌などが積み重なり、舌苔を作ります。

そしてこの舌苔の厚さは病状の軽重を表し、その色は病気の性質を表します。熱性病(炎症や代謝亢進など)のときには黄色く、寒性病(代謝低下)のときには白くなります。

これは、明日からでもすぐに使え、自覚のない冷え症などを探し出すのに役立ちます。

舌苔の異常
舌苔の状態を確認することで、病気の重症度を予測することができます。そして、舌苔の異常にはいくつかのパターンがあるのです。

・薄白苔
苔から舌質がはっきり見えることを、苔が薄いといいます。そして、白苔が寒性の病邪を示します。また、この白苔が厚くなるほど、寒邪は重いとされます。また、苔が薄いのは浅い病位と軽い病状を示します。東洋医学において、顔面や四肢などを「表」とし、体幹、とくに内臓を「裏」とします。そして、病気は表から起こり裏に入ります。

つまり、病位が表のみの場合はまだ病態は軽く、裏にまで影響している場合は病態は重いと判断されます。

・白膩苔
舌苔が白く粘つきがあり、舌尖から舌根に向かってどんどん厚くなっている状態を指します。これは消化不良と体内の水分代謝障害が行っていることを示します。

・白膩中剝苔
これは白膩苔と同じ状態で、さらに舌中から舌尖にかけて苔が剝がれている状態を指します。この状態は長期の服薬や栄養障害で起こり、肺と胃の機能がとても低下している状態です。

・薄黄苔
舌苔が薄く黄色い状態を指します。黄色は熱性病、薄い苔は病気が表層にあることを示します。そのため、熱性病の初期にこのような舌になります。例えば、ウイルス感染症、扁桃腺炎、蓄膿症などがその例です。

・黄燥苔
舌苔が黄色く、舌根にいくほど厚く乾燥している状態を指します。苔が乾燥しているのは、体に熱が溜まっていることを示しています。そのため、熱が高い、口が渇く、口臭が強い、便秘、腹痛、膨満感などの症状がある人が多いです。さらに、体内の水分量が少なくなるとと状態は悪化します。

・灰苔
その名の通り、舌苔が灰色をしている状態を指します。東洋医学では、病状の発展に伴い白苔→黄苔→黒苔になるとしています。そのため、その中間である灰苔は、今後病状が発展したり長くなる場合にあらわれます。そのため、この段階で治療をすることが大切です。

・黒燥苔
舌苔が黒く、乾燥している状態を指します。先ほど述べたように、この状態は病態が重度、もしくは難病であることを示しています。

以上のように、舌を見ることによって、今の病態やその病気の性質を予測することができます。見るものも、苔の色やその厚さだけなのでそこまで難しくありません。ぜひ一度確認してみてください。

今回述べたように、東洋医学の診断方法の中でも、舌診は多くの情報が得られる方法です。さらに、理学療法士の臨床にも応用できるため、ぜひ身に着けておくべき知識・技術だといえます。